旬のお魚かわら版
No.70 マアナゴ
2023.08.1旬のお魚かわら版 No.70(2023年7月31日)
今回はウナギ目アナゴ科に属している「マアナゴ」です。
前号に続いてウナギ目の魚類になりましたが、これがまた 「旬」が夏ときています。姿・格好が似ている上に旬までも同じということになりますね。マアナゴは北海道から九州南岸までのほぼ全域及び朝鮮半島沿岸、渤海、黄海、東シナ海に広く分布しています。
主な分布域は沿岸浅海域ですが、沖合底引き網等でも漁獲され、最も深い所では水深830mという記録もあり、幅広い水深帯に分布するとされています。寿命は必ずしもはっきりしていませんが7歳以上とみられています。成長もメスの方がオスよりも少し早いとされ、4歳時でメス57cm、オス52cmです。
見た目が良く似ているのでアナゴはよくウナギと比較されます。しかし、はっきりとした違いももちろんあります。1つは口の形で、マアナゴは上あごが出ていますが、ウナギは下あごが出ています。一番わかりやすいのは、体の表面にマアナゴは頭と体側に白い点が並んでいますがウナギにはありません。(HIKARIさんのイラストに描かれています)
国内でも有力な漁場を形成している伊勢・三河湾の資源水準・動向をみても 現在の水準は低位とされていて、その動向は減少傾向にあるとされています。上のグラフはアナゴ類の年別生産量(1995-2022年)の推移です。農水省の「漁業・養殖業生産統計年報」によれば、調査対象になったのが1995年で、それ以前のデータがないのではっきりとはしませんが、少なくとも統計が公表されて以降、アナゴの生産量は基本的に右肩下がりで、今なおその傾向は収まっていません。
つまり、この間13,000トンから2,200トンまで落ち込んできていることになります。統計がまだ30年足らずですが、統計を取り始めた年がピークでその後総じて減少傾向を辿っている魚類は非常に稀です。お隣の韓国でもアナゴは漁獲されていますが、漁獲量は日本の2~3倍と言われており、ピーク時は30,000トンを記録したそうです。その後1998~2001年に一時8,000トン前後まで大きく減少しましたが、再度上向き19,000トンにまで回復し、近年は12,000トン前後の漁獲のようです。何れにしろ日韓ともに漁獲量はやや減少気味ということになります。
上のグラフは消費地(東京都)でのマアナゴの入荷状況です。産地でみたように、消費地でもこのグラフを見る限り2015~2017年の3年間のみ若干入荷が増加 しているのを除くと基本的に減少傾向がみられます。特にこの3年間は入荷の減少が際立っており、したがって、卸売価格も急上昇しています。確かに去年の下半期は「築地魚河岸」にあるアナゴ専門業者等でも非常に扱いが少なくなり、価格も高騰していたように記憶しています。なお2022年の出荷元の上位3県は大阪、東京、茨城となっていますが、内湾や沿岸域を主な住処にしていることの反映でしょう。
アナゴは回転寿司を始めお寿司屋さん、天ぷら屋さんでは人気の一品です。ウナギ目の中でホラアナゴ科に属しているものにイラコアナゴがあります。宮城県の仙台湾では時期によって沢山漁獲され、アナゴの「代用」として回転寿司やスーパーの 「アナゴのかば焼き」として良く利用されています。
また、2月に島根県の大田市で開催された将棋の王将戦で、藤井聡太王将が昼食に食べた「大あなご重」も話題になりました。島根県ではアナゴの生産量が国内でもトップクラスで、中でも大田市では50cmを超える大きなアナゴが沢山獲れます。江戸前のアナゴは30cm程度の比較的小さいアナゴが珍重されますが、当地では大きいアナゴが大きなセールスポイントになっています。地域が変われば、その価値も変わることがある代表例ではないでしょうか!
さて昨年の話になりますが、中央区月島にFスーパーがあります。Fスーパーは丸の魚や余りみかけない魚を販売していることでも知られているスーパーでもあります。偶々そのスーパーに入った家族から電話で、アナゴが売っているので買うかどうかの連絡があり 即買うことにしました。ところがそのアナゴは丸のままのアナゴ(大アナゴ)2匹で、普段アナゴを購入したときは不必要な解体作業が必要です。悪戦苦闘の末捌きましたが、中骨に特徴があり苦労しました。煮込んでアナゴ丼にして鱈腹食べたのですが、次は天ぷらに挑戦しようと思った次第。普段は捌かれてあるのを買うのですが、それだと調理だけで簡単ですので、この夏はアナゴに挑戦で酷暑を乗り切りましょう!
旬のお魚かわら版
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