日本人が8割を食べている「マグロの王様」

師走になるとテレビを賑わすのがマグロ漁のドキュメンタリー番組。寒風吹き荒れる北の漁場で一攫千金を狙う海の男たちのドラマは、つい見入ってしまいます。


そして、お正月明けのニュースの定番が、東京中央卸売市場で開催される「マグロの初競り」。来年は一体いくらで競り落とされるのでしょうか。


毎年、年末年始に注目の集まるマグロですが、これはマグロのなかでも「王様」と呼ばれるクロマグロで、ほとんどが刺身や寿司に用いられる高級品です。


日本ではクロマグロ(本マグロ)、ミナミマグロ(印度マグロ)、メバチ、キハダ、ビンナガの5種類のマグロが流通していますが、世界で漁獲されるマグロ類のなかでクロマグロの占める割合は約1%にすぎません。そして、その8割を日本人が消費しているといわれています。


その貴重なクロマグロの最高級品といえば「大間のマグロ」。下北半島の大間がここまで知られるようになったのは、マグロ漁師の娘を主人公にしたNHKの連続テレビ小説「私の青空」(脚本:内館牧子、主演:田畑智子)の舞台になったことがきっかけです。


津軽海峡では例年8月ごろからクロマグロ漁が始まり、秋から冬に最盛期を迎え、この時期には100kgを超える大型のものが多くなります。


大間のマグロが超高値になったことで、津軽海峡を挟んで大間の対岸にある北海道・戸井のマグロの人気も上昇しました。戸井と大間は20kmほどしか離れていません。同じ海域で獲れるのですからマグロに変わりはないのですが、大間はほとんどが「手釣り漁」であるのに対し、戸井は「はえ縄漁」という漁法の違いがあります。


戸井のマグロの評価が高まったのは、水揚げ後の処理技術の高さからです。「戸井活〆鮪」のステッカーは高品質の証。同じく北海道の松前もはえ縄漁で、こちらの船上活き〆処理も高い評価を得ています。


魚は扱い方で味や見た目に大きく影響しますから、各港は独自に扱い方の厳しいルールを定め、ブランディング構築に細心の注意を払っています。


これら国産天然クロマグロの高級ブランドは、残念ながら、おいそれと口にできるものではありません。そもそも私たちの食卓にのぼるマグロはメバチ、キハダ、ビンナガがほとんどですし、マグロ類の半分は輸入ものです。


クロマグロはどこから輸入されているか、ご存じでしょうか? 正解はトップがメキシコ、そしてマルタ、スペイン、トルコ、クロアチア、モロッコなど地中海沿岸の国々が続きます。


クロマグロというと冬の海のイメージが強いせいでしょうか、温暖そうな国から送られてきているのが、やや意外かもしれません。


クロマグロは資源・保護管理のため、正規許可船リストに登録されている漁船、ならびに正規リストに登録されている養殖場から出荷されたものでなければ、輸入は認められません。


お店などでよく見かける「国産本鮪」というコピー。なんとなく“日本で漁獲された天然のクロマグロ”と勘違いしがちですが、国内の漁獲量と養殖生産量、つまり天然と養殖の割合はというと、4:6。国産クロマグロの約6割は養殖ものなのです。


かつては高嶺の花だったトロが、比較的手が届くようになったのには、養殖技術の発達があります。


日本は日本近海がクロマグロの主要な産卵地域ということもあり、ひき縄漁などで捕獲した100〜500gの幼魚を生簀で2〜3年飼育して、30〜50kgサイズになったところで出荷する「長期養殖」がメインです。たっぷりエサをあたえるので生簀のマグロは天然の2〜3倍のスピードで成長します。


一方、海外では20〜60kgのクロマグロをまき網で捕獲し、6〜7ヶ月生簀で飼育し、太らせてから出荷する「短期養殖」が盛んです。十分にエサをあたえると脂ののったトロの部分が多くなり、商品価値がぐんとアップするのです。


長期養殖が主流の日本でも、京都府の伊根、島根県の隠岐などでは短期養殖をしていて、近年、このクロマグロが市場で高く評価されています。機会があれば、是非、この「伊根マグロ」「隠岐マグロ」も味わってみてください。

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解説ノート

旬の魚や、ミュージアムのそばにある東京湾とその周辺地域などをテーマにとりあげ、わかりやすく紹介する特別展示を行っています。展示内容をより深く理解していただくための解説ノートから抜粋したダイジェストを毎月紹介していきます。

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杉浦千里