サケ・サンマに代わる秋の味覚か?

天然ブリは全国各地域で漁獲されますが、地域によって漁法が異なります。


東シナ海や日本海の山陰沿岸域では巻き網が中心ですが、北陸以北は定置網が中心です。一方、太平洋側では東北の三陸沿岸は定置網、常磐から房総では巻き網で漁獲しています。


漁獲量が多いのは長崎、島根、千葉、北海道、鳥取の順です。


ブリは基本的に南方系の魚で、主な産卵場は東シナ海。春に生まれた稚魚は流れ藻の周辺に暮らしながら、海流とともに北上します。


その年の冬には40cmほどの大きさになると、2歳くらいまでは沿岸域を回遊し、3歳を過ぎると南下して生まれ故郷の東シナ海に戻り産卵。その後、再び北上します。寿命は約7年といわれています。


近年、注目を集めているのが北海道のブリです。


というのも北海道のブリ水揚げ量の変化を10年ごとに見てみると、1969年が217トン、79年297トン、89年114トンでしたが、99年に1005トン、2009年1169トンと増加すると、2011年以降は7000トン~1万2000トン*も獲れる一大産地に激変したのです。


ただ、大漁を喜んでばかりもいられません。


北海道では秋にサケの定置網漁が始まりますが、近年は本来獲れるべきサケが獲れずに、今まで獲れなかったブリが大量に網に入ってしまうのです。


しかも、北海道民にとって南方系の魚であるブリは馴染みが薄く、伝統的な食習慣もないので、せっかく獲れてもいい値がつきません。


大消費地の首都圏に送っても、北海道産ブリのイメージがないので売りにくい。ブリは元来、九州北部・中国・北陸地方でよく食べられている魚ですが、西日本でもブリは豊富に獲れます。


そこで、なんとか道内の需要を拡大しようと、函館では「ブリフェス」を開催。新たな「ご当地グルメ」の開発に取り組んでいます。


でも、ですよ。


今から約5500年前を思い出してください。三内丸山遺跡(青森県青森市)から発掘された魚介類の骨で、一番多く見つかるのはブリの骨です。みんな忘れてしまっていますが、大昔は北でも食べていたのです。


現在、三内丸山遺跡は海岸線から5kmほど内陸に位置し、それほど海に近いわけではありません。しかし、縄文時代は今よりも2〜3℃気温が高く、氷河期にできた北半球の巨大な氷床が融けだして海面が上昇していたため、三内丸山遺跡のすぐ近くまで海が入り込んでいたのです。


ここ10年の北海道でのブリの大漁は、地球温暖化にともなう海水温の上昇と関係があるとみられています。このまま温暖化が進むと、不漁が続くサケ・サンマの代わりにブリが北海道の秋の味覚の代表になるかもしれません。


今夜あたり、ブリをおかずに、縄文時代に想いを馳せ、地球温暖化問題を考えてみてはいかがでしょう。


*漁獲データは「北海道水産現勢」より

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