お正月は何といってもめでたい「鯛」

お正月はもとより、結婚式、お食い初めなど、おめでたい席に欠かせないのがマダイです。脂肪が少なく、クセのない上品な味とほどよい歯ごたえという美味しさに加え、体色も鮮やかなルビー色に輝いていて、実に縁起物にふさわしい魚です。


味も見栄えもよいマダイは古くから朝廷や幕府への貢ぎ物として扱われてきました。鮮度落ちも比較的遅い魚なので、使い勝手がよかったというのもひとつのポイントでしょう。


大相撲でも優勝力士が大きなマダイを持ち上げ、記念撮影をするのが恒例です。あのタイは相撲協会から提供されるものではなく、優勝の可能性がある力士の所属する部屋が、それぞれ全国の後援者に声をかけて、立派なタイを調達しているのだとか。


優勝争いがもつれると、日の目を見ないタイもいますが、いずれにせよ、みなさんで美味しくいただくそうです。


ご存じのように日本の西と東では、食文化は大きく違います。タイは西日本、とくに瀬戸内、四国・九州で重宝される傾向にあります。では、タイを最も多く食べているのは何県民でしょう?


2019年の総務省「家計調査」によると、県民1人当たりの消費量がもっとも多いのはダントツで佐賀県でした。遡って調べても、少なくとも2013年から連続、しかも2位をダブルスコア以上引き離すほどの消費量。佐賀県民はタイが大好きなのであります。


そういえば、佐賀を代表する祭り「唐津くんち」の曳山(ひきやま=山車のこと)のひとつはタイがモチーフでしたね。


日本でタイはブリに次いで多く養殖されており、天然の漁獲量の2倍以上の量が養殖生産されているのです。


「天然のほうが養殖ものよりも美味しくて安全」とよく耳にしますが、そもそも「天然」「養殖」と一括りにしてしまうのは乱暴な話で、「天然もの」といっても、産卵前の旬の時期と産卵直後の痩せたものではまるで味は違います。


昔は確かに、養殖魚は「脂っこすぎる」「病気予防のためにクスリ漬け」……と言われていましたが、技術は進歩し、品質も格段に向上しました。


そして、同じ「養殖もの」でもエサの工夫をし、生簀に入れる匹数を減らし、水深の深いところで、ストレスを与えないように育てたタイと、そうでないものとには、味に差があって当然です。


あるタイの養殖業者さんは、毎朝の餌やりの時間に「おはよう、元気か〜。愛しているよ〜♥」と大きな声をかけていました。タイの養殖期間は2〜3年。ブリの1年半、ヒラメの1年に比べると、はるかに長いので、自然と愛情も湧くのでしょう。


機会があれば、養殖タイの食べ比べ=愛情の深さの差を感じてみるのも面白いかもしれませんよ。

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解説ノート

旬の魚や、ミュージアムのそばにある東京湾とその周辺地域などをテーマにとりあげ、わかりやすく紹介する特別展示を行っています。展示内容をより深く理解していただくための解説ノートから抜粋したダイジェストを毎月紹介していきます。

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