旬のお魚かわら版

No.68 ヤマトカマス

2023.06.30

旬のお魚かわら版 No.68(2023年6月30日)


 今回は「ヤマトカマス」です。スズキ目サバ亜目カマス科カマス属の魚で、カマス属には色々な〇〇カマスがいますが、食用として一般的なものはヤマトカマスとアカカマスです。

 ただ普通魚屋さんで購入するときには十把一絡げで「カマス」で売られていることが多いと思います。姿格好は下の写真のとおりですが、街では丸の姿で販売しているのでみたことがある人が多いのでは。

ヤマトカマス
ヤマトカマス:生鮮の素+さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)
アカカマス
アカカマス:生鮮の素+さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 写真のとおり、ヤマトカマスとアカカマスは形の上ではあまり見わけがつきませんが、よく見ると第1背鰭(前方の背鰭)と腹鰭の位置に少し違いがあります。ヤマトカマスはほぼ同じ位置ですが、アカカマスは腹鰭が少し前方に位置しています。また色どりもヤマトカマスが黒っぽいのに比べ、アカカマスは少し黄色ぽくみえます。

 カマスには鰓(えら)の中に鰓耙(さいは)と呼ばれる棘があります。ヤマトカマスには1本、アカカマスには2本あります。どのような役割を持っているのでしょうね?そうです。海水と一緒に口に入ったプランクトンを濾し取るためにあります。

 もしカマスを買う機会があったら鰓を広げて観察してみてください。カマス類は比較的岸寄りの沿岸域に生息しており沖合には余り分布していません。ですので、やはり定置網などで漁獲されることが多いのです。カマスの漁獲量ですが国から公表されているデータがありません。

 唯一閲覧できる(一社)漁業情報サービスセンター「おさかな広場」の近年のデータをみると、下の表のとおり全国の年間水揚量が1000トンから2000トン台の中に納まっています。産地も関東周辺と九州周辺に偏っていますが、各地とも年によって水揚げ変動が大きいのが特徴。しかし、直近だけをみると変動幅は大きいものの減少傾向はみられません。表からはみられませんが、2022年は千葉県の銚子港での水揚げが群を抜いて多いのが特徴です。

カマス水揚げ
出典:JAFIC「おさかな広場」より
入荷
出典:東京都中央卸売市場・市場統計情報(年報)

 上図は東京都中央卸売市場におけるカマス類の2022年の都道府県別入荷割合です。2022年には年間496トンの入荷がありました。最も多かったのは千葉県で約2割、続いて静岡、熊本、大分、長崎など、中部地方以西の県が多いです。産地のデータにもあるようにトップの千葉県は銚子港が控えていることもあり、順当なところ、静岡県も定置網の盛んなところでもあり大都市部に送っている様子が伺えます。

 カマスは「足がはやい」とよく言われますが、千葉、静岡の上位は地理的に当然としても 遠隔地の九州地区の各県も上位を占めており、流通網の発達と同時に産地での鮮度保持対策が 徹底しているからに他ならないのです。

 調理的には鮮度が良ければ刺身(産地で食すのが無難)でもとありますが、やはり一般的には焼いたり、フライや天ぷらが多いと思います。また、干物(開き干し)も人気があります。

 過去最もカマスを美味しいと感じたことは、東京海洋大学近くの海鮮居酒屋「AT」で食べた 塩焼きでした。「ふん、カマスの塩焼きか?」と思って出されたカマス、今まで食べてきた カマスは一体何だったのでしょうか! しかしよく考えてみると、その居酒屋で提供される魚は基本的に自社で営んでいる定置網で漁獲した魚を店で提供していたのです。「美味しいのには訳がある」!!!

カマスイラスト
イラスト:N.HIKARI
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