旬のお魚かわら版

No.67 アユ

2023.06.19

旬のお魚かわら版 No.67(2023年6月15日)


 今回は旬を迎え続々解禁の知らせが届いている「アユ」です。6月1日は「鮎の日」として全国鮎養殖漁業組合連合会が2014年に制定・定着し、今では、この時期を迎えるとメディアでも取りあげられます。「清流の女王」などとも呼ばれており、一般的に淡水魚に分類されますが 後述のとおり、一時期を沿岸の浅い海で暮らします。また、湖で一生を過ごす琵琶湖のアユ(コアユ)や、奄美大島に生息するリュウキュウアユ、中国からベトナムにかけて生息するアユなど、アユには多くの亜種があります。

アユ

 アユは食用でも人気のある魚ですので、養殖も盛んに行われています。東京でもシーズンになるとスーパー等でアユが店頭に並ぶようになりますが、そのほとんどは養殖物です。天然物と養殖物の違いをみると、天然物はスリム、養殖物はやや肥満型で口も天然物のほうが大きく養殖物はやや小さいのが特徴です。

 口(顎)の発達は餌をとる行動の違いによりその度合いが変化します。天然の場合は、石や岩に付着している藻類を引きはがして食べるため顎が発達しますが、養殖の場合は人工のエサ(配合飼料)を苦労なしで取れるため余り顎も発達しなかったのでしょう。

 また、天然物は胸元やヒレなどに黄色の斑紋があり、養殖物と区別できます。概ね夏から秋にかけて川で産卵し、孵化する秋に海に下り春になると川に上ってきます。寿命は1年で産卵後死んでしまいますが、中には生き残るものもいるそうです。そうして生き残り年を越したアユを「とまりあゆ(止鮎)」とも言うそうです。

 川→海→川と生活域を変えるアユは食べる餌にも違いがあります。海では肉食性で動物性プランクトンや小エビなどを主に食べますが、川では石や岩に付着している藻類を食べています。そのため、アユの独特の匂いは食べている藻類(※通称「コケ」とも呼ばれる、珪藻やらん藻などの微小な植物)に由来するものだとも言われています(海から上る稚魚は既に果実を思わせる香りを放っているという説も)。一般に養殖魚の場合は与えている餌料によって、その匂いが大きく左右されるので生産者は改良を重ねながら品質アップを目指しています。養殖ブリの餌に柑橘類を入れたりするのは、消臭効果を求めての側面もあるのです。

アユ生産量
資料:農水省「漁業・養殖業生産統計年報」

 上のグラフは1956~2022年までのアユの年別生産量の推移です。 1990年代初頭(バブル最盛期)をピークに天然・養殖とも生産量は右肩下がりです。2006年を境に天然物と養殖物の生産量は逆転し、その傾向は現在まで続いています。

 天然物の生産量減少は、ダム等の建設、コンクリート護岸、生活・工場排水などで川を巡る 環境が一変しアユの生態に変化を与えた結果とみられています。養殖の歴史は古く、明治42(1909)年に琵琶湖のコアユに餌を与えて大きく育てたことが発祥とされています。その後は1960年代に高度経済成長の波にのり、天然物と 並行して生産を伸ばしているのはグラフの通りです。ただ天然物・養殖物ともバブル崩壊とともに生産量自体は減少傾向が続いていましたが 養殖物はこの2年は増産に転じています。

 養殖物は、生産者などの努力で美味しい河川の水や深い地点から井戸水を引いており、魚も脂がのっており、栄養価も高く普段に餌の改良等もあり品質の向上は目覚ましいのです。

 さてこの6月は釣り人にとっては待ちに待ったアユの解禁時期でもあります。矢口高雄作「釣りキチ三平」にもしばしば登場するアユですが、「アユに始まり、アユに終わる の実践版ともいえるものです。 また友釣りもアユの習性(縄張りを守る)を利用した漁法で、おとりのアユを付けて 引っ掛けて釣る方法です。

 食べる方ですが、何といっても機会が多いのは「塩焼き」と思いますが 生食、焼く、煮る、揚げる等海産魚と同じく調理の幅も広いのです。 忘れてならないのは、日本三大珍味には入っていませんがアユと言えば「うるか」でしょう。 アユの塩辛のことですが、内臓だけで作る「苦うるか」、内臓にほぐした身を混ぜる「身うるか」 卵巣のみでつくる「子うるか」、精巣(白子)で作る「白うるか」などがあります。街の小売店でも6から7月にかけては最も扱いが多い時期です。1年に1回食べるのなら今です!!!

アユイラスト
イラスト:N.HIKARI
旬のお魚かわら版

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