旬のお魚かわら版
No.64 タケノコメバル
2023.05.2旬のお魚かわら版 No.64(2023年4月28日)
今回は季節の香り漂う「タケノコメバル」です。
メバル類は全国的には「春告魚」として良く知られています。メバル類はこの瓦版で初めて取りあげることになりますが、巷には新タケノコがかなりのスペースを取っていて「旬」を演出しています。そのことに因んだというわけではありませんが、今回は「タケノコメバル」です。
タケノコメバルは、カサゴ目メバル科メバル属の魚類ですが、メバル属には30以上の種類があります。特に「○○メバル」「○○メヌケ」「○○ソイ」といったように頭に形容詞がついた名称が多く、店頭でよく見かける種類では、ウスメバル、アラスカメヌケ(いわゆる「赤魚」の一つ)、クロソイなどがあります。
上の写真では少し分かりづらいかもしれませんが、タケノコメバルは体表の色合いやまだら模様が、おにぎりなどを包むときによく使われる竹の皮に似ています。またタケノコが出回る時期に旬を迎えることが、その名の由来となったようです。
メバル類は総じて浅海の岩礁域に生息しているものが多く、何よりもつり人からは非常に人気のある魚類です。つり人から人気があるということは、やはり200m以深にはあまり生息しておらず 、それより浅い海に生息しているので人気があるのだと思います。
それと、漁獲データが極めて少ないためその希少性に価値がある=人気がある、のだと思います。タケノコメバルは北海道から長崎県にかけての日本海から東シナ海・瀬戸内海、太平洋側では北海道日高、青森県から三重県沿岸、土佐湾まで。また朝鮮半島南岸・東岸にも生息しているそうです。メバルの仲間は卵胎生(卵を体内で孵化させて子供を産むこと)が多いのですが、タケノコメバルもご多分に漏れず卵胎生という繁殖方法で子を産みます。
漁獲データが少ないのですが、上のグラフはタケノコメバルの過去5年の全国水揚げデータです。
月別水揚量の最大が0.2tで、水揚げの無い月もあり、とても少量であることが分かります。また集計が公表されている漁港(産地市場)も僅かで、大半は宮城県の石巻と女川のデータです。しかも各種のメバルをメバル類としてまとめて集計している県もあるため、タケノコメバルに限らず、種別に「○○メバル」としてその水揚げ実態を把握するのはなかなか困難です。
ともあれ、このグラフからは、各年上半期の1~5月頃に水揚げが多いことが分かります。水揚量が公表されているエゾメバル、キツネメバル、ウスメバルは、タケノコメバルよりは水揚量が多いことから判断すると、タケノコメバルは希少性のあるメバルといっても良いのでしょう。
下のグラフは東京都中央卸売市場における2022年のメバルの入荷量と卸売価格の月別推移です。
このデータは特定のメバルではなく、入荷したすべてのメバルのものです。このグラフでも入荷のピークは産地の水揚げピークを反映し3~6月にあるのが分かります。夏以降は入荷が減少し、価格も上昇に転じています。
いずれにしてもメバル類として数量的には少なく、ましてタケノコメバルとなると 更に少なく稀に入荷があるといった方が正確かも知れません。
メバルは一体どこの県から多く集まってくるのでしょう? 2022年の東京都中央卸売市場に入荷したメバルは年間412トンでした。そのうちの約半分の211トンが青森県からとなっています。次に多いのが北海道です。また日本海の各県からも比較的多く入荷しており、概ね北海道、青森県、日本海の3地区に集約されます。
さてこのタケノコメバル、どのようにして食するのが美味しいのでしょうか? 食べたことがないので何とも言えませんが、肝が美味しいので肝醤油で刺身を食べるのが絶品、とあります。一般的には煮つけや焼き物となるのでしょうが、あらから良い出汁が出るので鍋物や汁物にしても美味とあります。メバルは時期的にみるとまだまだ入荷は続くでしょう! 専門店でもスーパーでも手に入りやすくなるので、いつもの日常から離れてメバルにチャレンジしてみてください!!
旬のお魚かわら版
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