旬のお魚かわら版

No.61 クロガシラガレイ

2023.04.20

旬のお魚かわら版 No.61(2023年3月15日)


 今回は豊洲市場ではこれから入荷の最盛期を迎える「クロガシラガレイ」です。クロガシラガレイはカレイ目カレイ科マガレイ属の魚で、クロガレイ、 マガレイ、マコガレイが近縁種になります。
 主に北海道沿岸の100m以浅の比較的浅い砂泥底に分布しています。もちろんその他の海域にも分布していて、朝鮮半島東岸北部から沿海州をへて サハリン南部、千島列島などです。寿命は14年程度といわれており、成熟年齢はオスが2年、雌が3年程度です。

クロガシラガレイ

 上の写真はクロガシラガレイですが、体色や形状がとてもよく似ている近縁種にクロガレイがあります。

 一見すると両者はほとんど見分けがつかないのですが、側線の形状(曲がり具合)や尾びれの縁の色などで区別できるそうです。 しかしながら、後述のとおり、流通過程において両者は区別されることなく出荷、販売、消費されている可能性がとても高いです。

カレイ漁獲量
資料:農水省「漁業・養殖業生産統計年報」

 上のグラフは昭和31(1956)年以降のカレイ類の漁業生産量の推移です。1960年代前半は北洋漁業や沖合底引き網漁業が全盛の時で過去突出した漁獲量でした。その後減少傾向を辿り一時1970年代にやや盛り返したときもありましたが、その後は一貫して漁獲は減少しています。平成年代に入っても漁獲が回復せず、多い時で8万トン台で10万トンに達することなく、今に至り低位横ばい傾向が続いています。

 2021年のカレイ類の全国生産量は35,507トンですが、その57%(20,247トン)は北海道の漁獲ですから北海道は日本一のカレイ生産地と言えます。北海道庁では「北海道水産現勢」という統計を公表しており、カレイ類も主要な種別に8つの項目に分けて統計データ(生産高)を出しています。

 その2021年データでは「くろがしらがれい」は3,831トンで、カレイ類では2番目に多い生産量です。ちなみに1番多いカレイ類は「そうはち」(宗八かれい)でした。
「北海道水産現勢」では「くろがれい」の項目はありませんが、最大の消費地卸売市場である 東京都中央卸売市場(豊洲市場等)の市場統計では「くろかれい」の項目はありますが「くろがしらかれい」はありません。 通常、産地から消費地市場へ送る際は、クロガシラガレイとクロガレイを分けずに出荷するといわれます。 ですので、上記の東京都中央卸売市場での「くろかれい」の入荷量は、クロガシラカレイと クロガレイが一緒になったデータであり、その多くがクロガシラガレイと見られます。

 なお、今回クロガシラガレイを取りあげたのは、2月に福島県いわき市(久之浜)に足を運んだ時に関係者から、最近マガレイやマコガレイが少なくなった、というような話を聞き、豊洲市場の入荷量のデータを調べたら、直近5年のカレイ類の入荷量は「くろかれい」が最も多かったからです。 しかもこれから数か月が入荷の最盛期を迎えるということもあり、取りあげました。

カレイ煮付

 カレイ類は種類が多く、それぞれ季節・地域によって旬が違いますので、周年日本中のどこかの地域で旬のカレイを味わうことができると言えます。クロガシラガレイは、ババガレイ(ナメタガレイ)等とは違って高級感はなくとも安くて味は良く、大衆的なカレイです。 上の写真のように煮て良し、また、焼いて良し、蒸して良し、揚げて良し、くせ無しで皆さんも既に切り身などで 無意識に購入して食べているかも、です。

 たまたま日曜日(3月12日)に魚屋さんで魚をみていたら、丁度クロガレイ(多分クロガシラガレイ)の切り身 (子持ち)があったので、早速購入、大好きな、大好きな煮つけにしました。 全ての食品が高騰している中、カレイ類の中では比較的安価でこれから出回りも多くなります。 是非この春はクロガシラガレイ(またはクロガレイ)で食卓を飾ってください。

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