旬のお魚かわら版

No.63 サクラエビ

2023.04.21

旬のお魚かわら版 No.63(2023年4月21日)


 今回は前回の「桜鯛」つながりで「サクラエビ」です。サクラエビは十脚目サクラエビ科に属している甲殻類です。お好み焼きや時には焼きそば、かき揚げ等にも使ったりするのでみたことがあると思います。

 ただ、大半は乾したサクラエビで、生のサクラエビをみたことのある人は少ないと思います。

 水揚げされたばかりのサクラエビは、下の画像のように半透明で赤い斑紋があちこちに散りばめられています。

サクラエビ
生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 サイズはメスの方が少し大きく37~45ミリ、オスが35~45ミリで、寿命は15~18ヶ月といわれています。

 駿河湾が何といっても有名ですが、相模湾や東京湾の他、長崎県五島列島沖にも生息しています。また、台湾でも同種のサクラエビが生息しています。国内においては何といってもサクラエビ=駿河湾=静岡県として名を馳せています。漁獲統計でみても、静岡県での漁獲が全国の100%を占めているので 他県でのまとまった漁獲はないといっても良いでしょう。

 ただ、お隣の相模湾でも定置網に入網しているという情報もあります。サクラエビ専用の網ではない定置網なのでやはり選別等の手間暇がかかることで直ぐに商業ベースに乗せるには課題があるようです。

船曳網
出典:農水省HP「漁業イラスト集」より

 サクラエビは日中は200m前後の深海に住んでおり、夜間表層に浮かんできたところを上のイラストのような2層引きの船曳網で漁獲します。

「駿河湾の赤いルビー」などとも呼ばれているサクラエビですが、皆さんも 水揚げされたサクラエビを干している写真をみたことがあると思います。あたり一面が美しい赤ピンク色に覆われ、時には富士山をバックにインスタ映えのする写真の完成です。

天日干し
天日干し風景

  サクラエビの操業に当たっては、天候が大きく左右します。というのは、サクラエビを天日で乾燥する工程が必要になるため、出漁前の出漁対策委員で資源保護、価格調整を念頭に出漁時間、操業時間、目標漁獲量、操業方式などを決め、天候の良い連続した数日を選定しなければならず、他の漁業とは条件が違うのです。サクラエビ漁は1977年から総プール制に移行・実施してから今日までほぼ50年を経過しています。

 上述のように厳格な資源管理を実施してプール制の成功事例として以前から取りあげられています。(プール制とは、静岡県の許可を受けている全船60カ統、120隻で水揚げ金額を均等に配分する制度)

サクラエビ漁獲量
出典:静岡県水産・海洋技術研究所調べより作図

 ところがそのサクラエビが突然の不振に陥ったのです。

 上のグラフは静岡県におけるサクラエビの漁獲量の推移です。平成30(2018)年に前年の4/1の漁獲にとどまり、その後もやや回復基調にありますが、平成29(2017)年に比べると1/3程度で歴史的な不漁が続いていて、平成30年からは漁業者が自主的に操業規制を行っています。

 この不漁の原因については、黒潮の大蛇行、駿河湾へ流入する富士川の水質汚染による環境変化、漁獲圧力による資源そのものの減少、などが言われていますが決定的な特定要因は分かっていません

 そもそもサクラエビ漁は、春、秋と2回の漁期がありますが、上述のような状況下で今年の春漁が始まりました。水揚げ初日の4月5日に40トン(前年0.9トン)と約40倍の多さで関係者の顔も今後の漁への期待で綻んだといいます。これから春漁は6月9日まで行われます。新物のサクラエビが待ち遠しいですね。

 サクラエビの水揚は、静岡県の由比(ゆい)漁港と大井川漁港で行われます。両港とも港のそばに漁協直営の直売所や食堂があります。食べて美味しく、買ってお土産にも良し、です。

 4月8日に行われた子ども食育セミナーの副菜メニュー「春キャベツのノリ和え」にもピンクのサクラエビがキャベツの緑、ノリの黒に混じり存在感を示していました。ただ、今まで大不漁が続いていたせいか、近所のスーパーSで販売されている干しサクラエビは残念ながら全て台湾産のサクラエビでした。

 現地での春漁はまだ続きます。由比漁港周辺では、漁協直営の食堂の他に周辺にもサクラエビを提供している食堂もあるので、これから迎えるGWには是非フルコースでサクラエビを堪能するのも良いかも。

かき揚げ
サクラエビのかき揚げ
旬のお魚かわら版

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