旬のお魚かわら版

No.57 マダラ

2023.01.17

旬のお魚かわら版 No.57(2023年1月16日)


 

明けましておめでとうございます。
 昨年は世界もこの業界も暗い話題が多かったのですが、今年こそはそれを払拭して 明るい1年だったと1年後に語れるよう祈っています。
 今回は未だ寒さが続く中、需要も旺盛とみられる「マダラ」です。

マダラ
画像:生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

  産地以外ではこのように丸々太った姿をみる機会が少ない(産地以外では切り身での提供が多い) のですが、よく見ると下顎にはひげもあり、なかなかユーモラスな顔なのです。
 しかし、この顔で餌を食べるときには豹変し、「鱈腹食べる」とあるように、どう猛な食欲の魔 と化し、大きな口でいろいろな生き物を食べ、自分の胃袋を満たしています。 マダラの寿命は6歳以上とされていますが、北(高緯度)のマダラの方が長いとされています。
  背から腹にかけては褐色の不規則な紋様、いわゆる斑(まだら)模様があり、それが魚名の語源だという説もあります。 この紋様は皮つきの切り身でも観察できるので、機会があったら是非目を凝らしてみてください。

マダラの全国生産量の推移
資料:農水省「漁業・養殖業生産統計年報」

 図は平成元年以降のマダラの生産量の推移です。平成年代に入ってからは、前半の4年に7万トン台の漁獲があったほかは、平成14年まで右肩下がりの漁獲が続いていました。一時は3万トン割れの漁獲もみられましたが、それをボトムにそれ以降は図でもみられるように徐々に上向き傾向が続いています。今年もまだ最終結果は出ていませんが、ほぼ昨年並みの漁獲量に達しているものとみられます。

 ところで昨年の11月頃から生鮮の「マダラ」がやけにスーパーマーケットや専門店の売り場を占有していたと感じていた方も多いと思います。実はその頃から道東沖ではマダラの好漁がほぼ2か月程続いた結果です。

鱈のじゃっぱ汁
「青森県「鱈のじゃっぱ汁」(うちの郷土料理)」出典:農林水産省Webサイト
鱈のじゃっぱ汁 青森県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp)

 上の写真はタラを使った青森県の冬の郷土料理「じゃっぱ汁」です。
 一見、普通の味噌汁のようにも見えますが、具材たっぷりで、一汁にもなるし一菜にもなるという優れものです。きっと土井善晴氏であれば推奨ものの一品かもしれません。写真を見ただけで身体が温まりそうで、如何にも寒い北国にはピッタリの料理でもあります。
 なお、じゃっぱとは魚の内臓やあらのことを言いますが、似たような汁で秋田県では「ざっぱ汁」、山形県では「どんがら汁」などもあります。ざっぱ、どんがら何れも魚のあらや内臓を指しています。何れも郷土料理でもあり、元々漁師料理でもあったともいわれています。


 現在ではマダラ1匹を買ってそれを調理するすることは、産地以外ではなかなかお目にかかれませんが、かつて北国では普通に目にした風景で、マダラは残すところがない歩留まりの非常に高い魚でした。じゃっぱ汁に使われるアラや内臓の他に、メスのマダラ子やオスの白子はそれぞれ独立した食材として昔から利用されてもきました。「もったいない」精神は、昔から産地では実践されていたんですね。
 また、写真のじゃっぱ汁はみそ味ですが、地域・地方によってはしお味があったりもします。こうした地方色豊かな料理は、もちろん郷土食としてその土地に根差した一般的な料理なのですが、更に遡ってみれば、みそ、しお、しょうゆ等の味付けも夫々の家庭の味というものがあるように感じます。
 好みや工夫といっても良いのですが、チャンスがあったら夫々のじゃっぱ汁に挑戦してみてください!

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