旬のお魚かわら版

No.56 ブリ

2023.01.17

旬のお魚かわら版 No.56(2022年12月27日)


 今回は、この時期メディアの話題をさらい正月も近いと実感させられる「ブリ」です。ただ話題といっても大方はブランドで有名な「ひみ寒ぶり」についてが多いと思います。
 その「ひみ寒ぶり」ですが、今年は11月26日に宣言が出されスタートしました。去年に比べると1か月以上早いスタートなりました。昨シーズンはスタートが年が明けた1月6日で、年をまたいでの宣言は、ひみ寒ぶり宣言の制度ができて初めてだったそうです。終了日が1月22日で一か月足らずの漁期でシーズン11,013本の水揚でした。今年は12月26日現在で15,000本を超え既に昨年をかなり上回っています。


 ところで、宣言はどのようにして出されるのでしょうか?それは、判定委員会(氷見魚ブランド対策協議会が組織する生産者・氷見漁協・仲買人の代表で構成)が富山湾の定置網で漁獲され、氷見漁協(魚市場)で競られるブリの型・大きさ・数量等を総合的に判断したうえで行われるそうです。今シーズンは6kg以上を「ひみ寒ぶり」とすることに決定したようです。ブランド価値を損なわないように慎重に決定しているのだと思います。

ブリ
出典:画像:生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)
ブリ類(天然・養殖)の年別漁獲量の推移
資料:農水省「漁業・養殖業生産統計年報」

 上のグラフは1956年以降のブリ類(天然・養殖)の生産量の推移です。統計上、「ブリ類」にはブリの仲間であるヒラマサやカンパチも含まれるのですが、それらの生産量は少なく、ほとんどをブリが占めます。
 グラフでも分かるように天然ブリは2010年頃から年間10万トン台の漁獲がみられるようになり 現在まで安定した漁獲を示しています。
 養殖ブリは1970年代後半に15万トンを突破してから年間15万トン前後の安定した 生産が続いていましたが、近年は14万トン以下の生産でやや減少傾向が続いています。

 ところで、ブリは養殖産地が九州や四国と西に偏っていることや消費傾向も北陸以西が多いという傾向もあり 「西の魚」のイメージが強くありますが、今や天然ブリは2020年から北海道が漁獲量ではトップに躍りでました。

天然ブリ類の県別漁獲量割合(2021年)
資料:農水省「漁業・養殖業生産統計年報

 上の図でも分かるように北海道を始め日本海側の県や、関東以北の県が上位を占めています。
 北海道のブリは環境にも恵まれているせいか、品質も良く秋口でもかなり脂が乗っています。 ただ北海道では元々ブリを食べる文化がなかったので、漁獲が増えても余り消費にはつながっていないの が残念ですが!

 さてブリは日本近海から沖合に分布していて、大西洋やインド洋にはみられない魚種です。 ですから、サンマの不漁が続いている現在、多獲性魚類の中でブリは貴重な自給率100%の魚種とも言えます。

 今年も残り僅かとなり、まもなくお正月を迎えます。 お正月といえば雑煮、日本全国にご当地雑煮ともいうべき郷土色豊かな雑煮があります。 その中で、ブリを使った雑煮も長野県、福岡県など各地にあります。
 長野県では、かつて富山県で獲れた寒ブリの塩漬けが飛騨地方を経由する山越えの道(ブリ街道)を通って、松本などに運ばれたことから、現代でも中信や南信地方ではハレの日(お正月)にブリ雑煮を食べるのが 伝統となっているそうです。

 また福岡県でも出世魚のブリは、嫁ブリとしてこの博多地区では嫁の里帰りにブリを持たせる習慣があり、雑煮にも使われているのだそうです。 お正月は、出汁(鰹節など)も含めてお魚を使った全国のお雑煮について調べて、できれば作って食べてみるのも如何でしょうか!

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