旬のお魚かわら版

No.54 マガレイ

2022.12.9

旬のお魚かわら版 No.54(2022年11月30日)


 今回は、カレイ類(カレイ目カレイ科の魚)の中で最もポピュラーな「マガレイ」にしました。以前瓦版8号で冬場が旬のババガレイ(ナメタガレイ)について書いて以来の、久しぶりのカレイ類です。

 カレイ類は何しろ種類が多く、世界で100種類くらい、日本周辺でも40種類程度がいるといわれています。 東京都中央卸売市場(豊洲市場など)の統計で扱われているカレイ類は11品目もありますが、 中でもマガレイは、クロガレイ、ババガレイ、アカガレイなどとともに常に市場取扱高トップ5に入る 身近な魚です。

出典:画像:生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)
出典:画像:生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

  上の図はマガレイの画像ですが、 姿格好は、カレイの一番標準的な形をしているともいえます。とはいえ、 カレイ類の多くは形状や色が似ているので、ぱっと見では正確な種名を判別することが難しい魚でもあります。 特にマガレイとマコガレイは非常に似ていて一目で判別ができる人はその道のプロともいえます。 一般に言われているのは、マガレイは目と目の間に鱗がなく、マコガレイにはあります。 一目でわかりやすいのは体の裏側(白い部分)の尾びれに近い部分にマガレイは黄色の帯がありますが、 マコガレイにはなく真っ白になっています。
 何れのカレイも100mより浅い海に棲んでいて、何れも地方によっては、「クチボソ」とも呼ばれています。 また、やはり地方によってはマガレイを「マコガレイ」と、逆にマコガレイを「マガレイ」と 呼んでいます。

 マガレイは北海道の全域、日本海・東シナ海沿岸、福島県以北の太平洋沿岸、朝鮮半島の沿岸 渤海から東シナ海北部、サハリンの沿岸から千島列島沿岸等にも広く分布しており、 マコガレイに比べより広い海域に生息しています。 そのことから食卓に上がる機会も多くほぼ1年中出回りがあります。

資料:東京都中央卸売市場年報
資料:東京都中央卸売市場年報

上の2枚の図は東京都中央卸売市場での2021年と2012年のカレイ類4品目の入荷量割合です。


 2021年はクロガレイがトップで4分の1を占め、マガレイは3番目ですが、2012年はマガレイがトップでした。 他の年も含め、マガレイは常に2番手、3番手の地位を占めていて安定した入荷があることが分かります。 因みに震災前はアカガレイの入荷が常にトップを占めることが多く、マガレイが それに続いていました。過去の入荷量の傾向をみてもマガレイがトップを占めたこともあり、 カレイ類の中では最も知られている存在かも知れません。

マガレイは煮てよし、焼いてよし、揚げてよしで、大きくて鮮度の良いものは刺身でも美味しいそうです。 また、カレイ類は白身魚で、低脂肪・高たんぱくの上、タウリン、コラーゲンたっぷり、ビタミン各種が 豊富とあって、健康な生活を営もうとする人にとっては最高の食材でもあります。
 個人的には煮魚が好物ということもあり、カレイの煮つけはその最たるものの一つです。


 小さい時から育った田舎ではハタハタの季節が終わり、いささかハタハタに食傷気味になった頃に魚屋さんで買った カレイ(多分マガレイ)の煮つけで育ったので、今も好きなのかもしれません。 残った煮汁をそばつゆの替わりに冷や麦を食べるのは今でも至福の時間。 皿は残った骨にだけになり、後片付けも簡単、達成感で満ち溢れます。
 1年程前に読んだ岩波書店発行の「戦士の食卓」(落合博満著)で著者の子供時分の食事の話があり、 当時は焼魚より煮魚が多かったということを述べています。 恐らく昭和30年代前半の話と思われるが、著者によれば当時は皆が貧しく、煮魚は煮汁がおかず替わりになるため 焼魚ではなく煮魚を親が作ったのでは、と著しています。


 (一社)大日本水産会による2019年度水産物消費嗜好動向調査によると 近年の魚料理(寿司・刺身、焼魚、煮魚等12料理を対象)の摂食機会の増減で、 煮魚は揚げ物に次いで減少率が高く、増加率と減少率との差分でみても揚げ物に次いで減少率が上回っています。 一方、寿司・刺身や缶詰利用の摂食機会は大きく増加しているので調理の簡便化志向が顕著で、調理に手間のかかる 煮魚が敬遠されつつあることが伺えます。
 少し残念な結果ではありますが、カレイ類は総じて煮魚に非常に合う、冬にぴったりな魚ではないでしょうか!

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「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!