旬のお魚かわら版

No.52 マカジキ

2022.11.4

旬のお魚かわら版 No.52(2022年10月31日)


 今回は、これから本番を迎える「マカジキ」です。この瓦版では以前に「メカジキ」を取りあげましたが、それに続いてカジキ類は2回目の登場です。産地を除けば切り身以外ではあまり見る機会がありませんが、カジキ類の特徴をみてみましょう。

マカジキ
マカジキ 出典:国立研究開発法人 水産研究・教育機構 国際漁業資源の現況より
メカジキ
メカジキ 出典:国立研究開発法人 水産研究・教育機構 国際漁業資源の現況より

 カジキ類と言えば何といっても口の先に吻(顎)と呼ばれる剣のようなものを持っているので、誰が見ても分かる最大の特徴です。吻の長さで見ると上図のマカジキより、メカジキの方が長いのが特徴。この吻も槍のように見えますが、武器としてみると突くというよりも振り回して相手をなぎ倒すように使うようです(実際には見たことはありませんが)。目は画像にもあるようにメカジキ(女梶木、目梶木)は大きくマカジキ(真梶木)はそれに比べ小さいのが分かります。
 マカジキは日本列島周辺の沖合を含む南北太平洋、インド洋に生息しているのですが、これもマグロ類同様に地球上の広い暖かい海で暮らしているということになります。「カジキマグロ」と呼ばれることもよくありますが、カジキはマグロ類ではありません。


 カジキ類にはマカジキ科とメカジキ科に分かれていて、メカジキ科はメカジキ1種のみですが、マカジキの仲間(マカジキ科)には、他にクロカジキ、シロカジキ、バショウカジキ、フウライカジキがいます。また、マカジキには体の側面に縞(しま)があり、英語ではStriped Marlinと呼ばれています。
 そもそもカジキを主対象に狙う国内の漁業は突きん棒など、ごく一部しかなく、カジキ類の多くは、マグロ延縄(はえなわ)漁業の副産物として漁獲されます。ですから、特に国産で生鮮のカジキ類は元々非常に少なく、マカジキは特に少ないです。マカジキの漁獲量は宮崎、高知、宮城、千葉、長崎あたりが例年ベスト5を争っています。

生鮮マカジキ・メカジキの月別入荷量と価格の推移
資料::東京都中央卸売市場「市場統計情報(年報)」

 上図は昨年の豊洲市場のマカジキとメカジキの月別入荷量と価格の推移です。 入荷量では圧倒的にメカジキが多くマカジキを凌駕しています。
 このグラフで比較すると高級とされているマカジキがメカジキを価格で上回っているのは 12月のみで、消費=入荷が極端に少ないのと、年末期以外はマグロの赤身にそのポジションを 奪われているのが影響しているのかも知れません。いずれにしろ、小売の段階では生鮮のマカジキをみる機会は東京では少ないと思います。
 以前より石川県がマカジキを多く消費する地域として有名ですが、近年では千葉県の 勝浦が冬場のマカジキをブランド魚としてアピールしています。 他のカジキ類の主要消費地としては、メカジキはやはり宮城県(気仙沼など)、クロカジキは熊本や沖縄県、 鹿児島県では秋口のバショウカジキを「秋太郎」と呼び、好んで消費しています。

豊洲市場に入荷したマカジキ
豊洲市場に入荷したマカジキ 出典:(一社)豊洲市場協会 ザ・豊洲市場(食材NEWS)
メカジキの切り身
メカジキの切り身

 上の図はマカジキの断面図とメカジキの切り身画像です。一目瞭然、メカジキはかなり白っぽく、一方マカジキはやや赤みっぽくマグロの赤身に似ています。
 いずれにしてもマカ、メカとも上の入荷量のグラフにもある通り、これから年明けにかけて入荷が多くなります。もし何かの機会にマカジキを発見したら、是非刺身で食してください。きっと満足のいく味を堪能できると思います。

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