旬のお魚かわら版

No.45 ウナギ

2022.10.18

旬のお魚かわら版 No.45(2022年7月15日)


 今回は恐らくこれからスーパーの売り場を席巻する「ウナギ」を取りあげました。
 今年の土用の丑は、「7月23日」と「8月4日」です。この号が出る頃にはウナギ商戦が加熱し多くのデパートやスーパー等の小売店でウナギ商品を目にすることでしょう。
 一年を通して土用の丑の日は複数回ありますが、一般的には、夏の土用にある丑の日を「土用の丑の日」と呼んでいます。また、上記のとおり、年によって夏の土用の丑の日は2回あります。最初の土用の丑の日を「一の丑」、2回目の土用の丑の日を「二の丑」と呼ぶこともあります。
「土用」とは、季節の変わり目を表す言葉で、立夏・立秋・立冬・立春の直前の約18日間の期間を示し、夏、秋、冬、春と季節が巡るごとにあることになります。「丑の日」ですが、十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)の「丑」からきており、例えば立秋の日付によって夏の「土用の丑の日」が決まってくるというわけです。

ウナギ
画像:生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 上図はニホンウナギですが、学術的分類ではウナギ目、ウナギ科、ウナギ属ニホンウナギになります。ウナギ属の仲間には、ヨーロッパウナギ(学名:アンギラ アンギラ)、ビカーラウナギ(学名:アンギラ ビカーラ)アメリカウナギ(学名:アンギラ ロストラータ)などがあります。ちなみに、ニホンウナギの学名はアンギラ ジャポニカです。
 ニホンウナギ以外では従来、中国を経由してヨーロッパウナギがかなりの量で入っていましたが、平成19(2007)年にワシントン条約の付属書に掲載され、平成21(2009)年から国際取引規制の対象になってからは、ほとんど国内入荷はないと思います。ビカーラウナギも一時はスーパーでも売られていましたが、最近は少なくなってきていて、今はアメリカウナギの輸入が増加しています。

国内シラスウナギ採捕量の推移
資料:2002年までは漁業・養殖業生産統計年報による
   2003年からは水産庁調べ(池入れ数量-輸入量)

 さて、孵化したばかりウナギはレプトケファルスと呼ばれ、透明で葉状の体をしていますが、やがて細長い棒状のシラスウナギとなります。上のグラフはシラスウナギの国内での捕獲状況です。この図でも分かるように、国内のシラスウナギは1960年代のピーク時に比べると減少しており近年では20トンにも満たない年が続き、毎年続いています。捕獲されたシラスウナギが養殖場で餌を食べながら成鰻として大きくなり、問屋や加工業者(かば焼き加工)等に流通します。

 シラスウナギは冬場に養殖池に入れられるので、この頃になると「今年のウナギの状況は?」としてメディアを賑わせ、「価格の高騰」「今年は少し下げか?」等と予想=情報が皆に届きます。実際のウナギの供給は上図の国内採捕のシラスウナギを養殖池で大きくしたウナギ以外にも輸入物(中国・台湾からの輸入が主体で、活魚のウナギと加工品(蒲焼きなど))があります。それを表したのが下の図になります。

ウナギの供給量の推移
資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」及び財務省「貿易統計」

 この図でも分かるように昭和60年位から輸入量が急増し、平成19年位まで続きます。その後は前述のとおりウナギの取引規制が実施されたこともあり、輸入量が急減しているのが分かりますね!取引規制が始まるまでは、二ホンウナギとヨーロッパウナギが多かったのですが、その後は前述のとおり従来は取り扱われていなかった種類のウナギも輸入されるようになり、国際色豊かになりました。また平成10年代は輸入ウナギの余りの多さに価格は暴落し、一時政府によるセーフガードも話題になりました。その頃は輸入ウナギがスーパーで3尾入り長焼き1000円など、今から考えると想像できない安さでした。最近は供給量が5-6万トンと低位で、末端の販売価格も高値に定着しているのはご存知の通り。しかも今年は燃油や餌料等の価格が高騰しており、養殖業者、加工業者も生産コストは確実に上昇しています。ですので、価格的には大きな期待はできないと思います。都内のスーパーでの小売価格は、7月10日長焼きで国産1780円(昨年同期1980円)、中国産1380円(同980円)で、特に中国産の価格上昇が目立っています。それは中国国内でのウナギ需要の高まり(新しいウナギ料理のメニュー開発など)が大きいといわれています。

 あと1週間ほどで本番です。恐らくもう少し本番に向けて価格上昇が考えられます。年に1回位は暑さを忘れてウナギを!


 さて世の中には前述したウナギ類以外にも、「ウナギ」と名のつく「ウナギ目」以外の魚類がいます。その代表として、ヤツメウナギ、ヌタウナギ、デンキウナギなどがあります。中でもヤツメウナギ、ヌタウナギは円口(えんこう)類に分類され、魚類の中でも原始的で特殊なグループであり、円口類という名前のとおり、あごが無く円形の口を持つという特徴があります。水族館などで観る機会があったら観察してみてください!

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「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!