旬のお魚かわら版

No.44  タコ

2022.10.18

旬のお魚かわら版 No.44(2022年6月30日)


 今回は初めての登場「タコ」を取りあげました。「タコ類」は「イカ類」や「貝類」と並んで軟体動物の代表的なものです。代表的なタコは「マダコ」で、その仲間には「ミズダコ」「ヤナギダコ」「イイダコ」や、韓国料理でよく食べられる「テナガダコ」などがあります。国内で通常、食用とされるのは上記の5種類程度になります。

タコ
画像:生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 上図はマダコの画像ですが、ご存じの通り軟体動物だけあって、図鑑やネット上ではいろいろな形をしたタコがあり、8本の腕が微妙な位置取りをしながら動き回る姿を想像するだけでも楽しいものがあります。小さい頃、遊びに行った漁村で獲ってきたタコが飛び出してきて地べたを這っていたのを恐るおそる触った記憶があります。

タコ類の年別生産量の推移
資料:農水省 漁業・養殖業生産統計年報

 上のグラフは平成年代以降のタコ類の生産量の推移です。この10年位は、4万トンに達することなく3.5万トン前後の生産量となっています。ピーク時の昭和43(1968)年の102,718トンに比べると現在は1/3程度まで落ちていることになります。
 国内生産を補っているのが輸入のタコ類で、昭和50年代以降は6万トンを超えるタコ類が輸入されていました。皆さんもご存知のように、スーパーに行くと、モロッコやモーリタニア産(西アフリカ沖、サハラ沖)表示のタコを見かけたことがあるはずです。


 50年位前に日本人が現地でタコ壺漁を教えて現地生産が増え、その多くが日本に輸出されていました。最も多かった平成5年には13万トン超の輸入数量を記録したこともあります。しかしその後は、諸外国での消費・需要も多くなったことや為替相場(円安)、現地漁獲規制による価格の高騰等もあり、現在は年間2-3万トン(2021年は26411トン、内モーリタニア7596トン、モロッコ5854トン)程度とかなり少なくなってきています。そうしたこともあって、現在では国内と輸入物の価格差も縮まり、国産回帰もみられるようになっています。

 この時期になるとスーパーの店頭にはタコが並びます。7月2日が半夏生(はんげしょう)に当たり、この時期にタコを食べるというよりも今ではスーパーの販促計画にも組み込まれ、結果として全国的に需要も安定して定着した、ということでしょう。

 ただ関西地方では、以前からこの時期にタコを食べる地域があったようです。何故この半夏生の時期にタコなのでしょうか?8本もあるタコの吸盤のように、「植えられた苗がしっかりと根付くように」と願いを込められて食べられていた!らしい。また、タコは栄養豊富な食材で疲労回復などの効果もあるので、田植えの疲れをいやす時期なので、その頃に食べる、との話も。半夏生は土用と同じように雑節の一つで夏至から数えて11日目をいい、今年の半夏生は7月2日となっています。

家庭内におけるタコ類の消費動向
資料:総務省統計局 家計調査月報

上図は、過去5年間の家庭内で消費されたタコの購入数量と購入金額(二人以上の世帯)の推移です。その年によって量的な差はありますが、どの年も7月と12月の年2回ピークがあります。7月は半夏生、12月はお節料理、関東では酢だこの需要が最も多い月に当たります。消費需要がピークを迎えるのも故なしとはしないのです。

 ところで、タコは茹でると真っ赤になります。生きているタコは赤い色をしていません。何故でしょうか?その答えは色素。タコの体の表面には、紫黒色・赤褐色・黄色の3つの色素(オモクローム)が入っている「色素胞」があり、茹でると赤色の色素が遊離して、皮のタンパク質と結びつくためです。(海と魚がもっと好きになるウェブマガジン umito.)より

 兵庫県明石市に「魚の棚(うおんたな)商店街」という400年の歴史がある商店街があります。その中にはタコ専門店があり、所狭しとタコが並べられていました。中には外にはみ出している生きたタコもあり、交通整理も大変だろうとみていました。しかし、さすがに「明石のタコ」といえばトップブランドを標榜しており、東京の小売店にはみられない壮観さでした。明後日は半夏生、是非タコの美味しさを味わっては!

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