旬のお魚かわら版
No.43 トビウオ
2022.10.18旬のお魚かわら版 No.43(2022年6月15日)
今回は初夏にはとびっきりピッタリの「トビウオ」を取りあげました。
トビウオはダツ目、トビウオ科、ハマトビウオ属に分類されます。日本近海ではトビウオの仲間は20数種類あるといわれていますが、夫々の地域で種類は違います。代表的な食用種は「トビウオ」「ホソトビウオ(丸トビ)」「ツクシトビウオ(角トビ、角アゴ)」「ハマトビウオ」の4種です。その他にも未成魚のトビウオ類は種類を問わず、特に南の地方では様々に利用されています。ちなみに、日本海や九州での呼び名の「あご」が、トビウオの学名 Cypselurus agoo の由来といわれています。
姿格好は、トビウオ=japanese flyingfish というだけあって胸鰭(むなびれ)に大きな特徴があり、広げると飛行機の翼のようになります。トビウオは胸鰭が目立ちますが、腹鰭もこのサイズの魚類としては広げるとかなり大きいのです。こうして、外敵に襲われたりしたときに翼全開で海面を全速力で飛んで逃げるのでしょうね。
トビウオ類は、北海道から九州の沿岸まで広く分布していて、主に刺し網、まき網、定置網、浮き敷網等で漁獲されています。下のグラフはトビウオ類の漁獲量の推移ですが、2007年より全国の漁獲データが公表されなくなったため近年の漁獲状況が把握しにくくなっています。
過去の生産量をみると1960年代から70年代の前半に1万トン以上の比較的安定した漁獲でしたがその後1万トンを下回るようになりました。1984~1987年にかけて、山陰や長崎、鹿児島県での漁獲が急増し、1万トンを再度超えるようになりました。
しかしその後は1万トンを超える年はなく総じて低調に推移しています。データが公表されていないので確証はありませんが、「トビウオ大漁」の話も聞きませんから恐らく現在も8000トン前後の漁獲量で推移しているものとみられます。
トビウオは総じて南の魚と言われていますが、近年は東北の定置網などにも入網がみられ北の地方で水揚げされることも珍しくなくなっています。また、漁獲が多いのは山陰や長崎・鹿児島が多いのは前述のとおりですが、80年代の前半は東京都での漁獲が鹿児島県などに続いて全国で2番目に多かったこともあります。
トビウオは、豊洲市場では1日2トン程度の入荷があります。ですから、スーパーでは運が良ければ丸のままのものを発見できると思います。また、お店によってはお造りで販売していることもありますので、機会があったら是非。
普通に食べるのであれば刺身や塩焼きが一番。最初に食べたのは学生時代に三浦半島の民宿で食べた刺身、脂はのっていないが淡白ながらも夏を味わえる感覚を憶えています。
トビウオは鮮魚で目に触れる機会がこの時期は多いと思いますが、何といっても加工品の原料としても多く利用されています。大型サイズは、開き干し、そして伊豆諸島の名産「くさや」に、小型のものは煮干しを始め、今や日常的になった「あごだし」や山陰地方ではソウルフード「あごちくわ」「あご野焼」に変身して愛されています。
「くさや」も最初食べたのは伊豆の新島。50年以上前になりますが、東海汽船の帰りの船便は新聞紙に包まれた「くさや」が雅な香りで一杯になっていました。当時は真空パックなどは無かったのでしょう。もちろん瓶詰などもなかったように記憶しています。その後「臭いのしないくさやの開発」などもメディアに取り上げられましたがどうなったのでしょう?果たして臭いのないくさやを「くさや」と呼んでよいのやら!
旬のお魚かわら版
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