旬のお魚かわら版

No.42 カツオ

2022.10.18

旬のお魚かわら版 No.42(2022年5月31日)


 今回は初夏のさわやかな季節にはもってこいの「カツオ」を取りあげました。既にカツオを食べた方も多いと思いますが、GW明けになると消費地では入荷も増加し、価格も安くなる傾向があります。ですから、走りの季節にこだわらなければ上半期では今が食べ頃といっても良いでしょう。さてそのカツオですが、スズキ目サバ科に属している魚です。

カツオ
カツオ
出典:水産庁、国立研究開発法人 水産研究・教育機構「国際漁業資源の現況」

 上の写真は両方ともカツオなのですが、縞模様が違っていますね?一般的にイメージされるカツオは左側ですよね。では右の写真は?
 実は、漁獲直後などカツオが興奮状態にあるときに右の写真のような縞模様が一瞬現れるそうです。筆者はまだその場面をみたことがないので、1回はみてみたいものです。しかし、その場面は多分、船上以外では見ることはかなわないかも知れませんね。

 さて、主なカツオの漁法を大別すると、釣り(竿釣りと引き縄)とまき網の2つになります。釣り漁法のうち竿釣りはいわゆる「一本釣り」として多くの方々がご存じだと思います。

 一方、引き縄はなじみの無い方が多いのではないでしょうか?引き縄は小型漁船で行われる沿岸漁業で、通常漁師一人で複数の竿を同時に操るトローリング漁法です。一人で1匹ずつ釣り上げるので大量漁獲はできず、魚群を取り囲んで漁獲するまき網と比べると、漁獲量ではとてもかないません。しかし、1匹ずつ丁寧に釣り上げ、船上でただちに鮮度保持処理ができるというメリットがあるので、引き縄のカツオは鮮度の良い刺身用カツオとして人気があります。とくに引き縄漁が盛んな和歌山県には、「すさみケンケン鰹」(すさみ町)と「しょらさん鰹」(串本町)という、引き縄漁獲のブランドカツオが2つもあります。

 また、カツオのまき網漁にも2つのタイプがあります。1つは日本近海で漁獲し生で水揚げするタイプで主な水揚げ地は宮城県の気仙沼です。もう1つは大型遠洋漁船により主に太平洋熱帯域で漁獲するタイプで「海外まき網」と呼ばれるものです。「海外まき網」のカツオは漁獲後に船内で急速冷凍され、主に鰹節や缶詰の原料となります。そのため主要水揚げ地も、鰹節など水産加工業が盛んな枕崎や焼津となります。竿釣りは江戸時代からあったとされますが、現代は上記のまき網漁が盛んとなりましたため下のグラフのとおり、漁法別の漁獲量では、まき網が約8割を占めています。

カツオの漁法別漁獲量
資料:農水省 漁業・養殖業生産統計年報
カツオの年間漁獲量の推移
資料:農水省 漁業・養殖業生産統計年報

 上図は昭和55(1980)年以降のカツオの年間漁獲量の推移ですが、1980年代にピークがあり、一時横ばい傾向で推移しましたが、近年は右肩下がりで漸減傾向が続いています。昨年(2021年)は久しぶりに近海での漁が好調で水揚げを伸ばしました。ただ今年は、鹿児島近海での漁は極めて好調なのですが、小笠原周辺から伊豆諸島沖合での漁が低調で初漁期から初夏にかけて水揚げの中心になる房州勝浦での水揚げが激減しています。
 下のグラフは東京都中央卸売市場(豊洲市場が大半を占める)でのカツオの月別取扱量と平均価格の推移です。上述のように2021年は、過去3年に比べ入荷が多いのが分かりますね!

市場別(6年分)/消費地情報
資料:(一社)漁業情報サービスセンター「おさかな広場」より

今年は今のところ2021年よりは入荷が少ないものの2020年よりは多く、良くもなく悪くもなくといったところ。消費地市場での入荷は5-7月が最も多くなる時期に当たり、価格的にも最も値ごろ感がある時期といっても良いと思います。
 また、産地でも6月に入るとカツオも黒潮前線を越えて常磐・東北の海にやってきます。これからが大獲りも期待でき、漁本番を迎えます。筆者は、今季2回目のカツオタタキに挑戦。今回はバーナーを使用し焼き目を付け、色々な薬味(大葉、茗荷、生姜、大蒜、新玉、小葱等)を入れて頂きました。
 以前に豊海おさかなミュージアが実施したカツオ藁焼き体験イベントが懐かしい!!!

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