旬のお魚かわら版
No.41 マアジ
2022.05.20旬のお魚かわら版 No.41(2022年5月16日)
今回は今盛漁期を迎えている「マアジ」を取りあげました。
桜の北上前線も北海道釧路地方まで達した、と気象庁が発表しました。この号がお手元に届く頃には桜もほぼ咲き終わり、散り終わるころかもしれません。また沖縄では既に梅雨入りと南北に長い日本列島の特徴をよく表していますね。
季節は初夏、そして今「豊海おさかなミュージアム」では特別展示「ときめきの鯖、きらめきの鰺」を開催しています(5月31日まで)。その関連もあり、今回「マアジ」になりました。
マアジの特徴は何といっても、頭の付け根の部分から尾鰭にかけて「ぜんご」(または「ぜいご」)と呼ばれる堅い鱗があることです。どんなアジ料理の時でも必ずこの鱗は取らなければならないのですが、この鱗が堅く尖っているので手に傷を負った経験をした人もいると思います。
マアジに外見が非常に良く似ているムロアジ属の魚にマルアジ(青アジ)があります。マルアジの「ぜんご」は頭から尾びれにかけて緩やかにカーブして並んでいますが、マアジは上の写真のように「ぜんご」の列が胸びれの後方あたりで大きく曲がっています。また、マルアジには尾びれの付け根にとても小さなひれ(小離鰭(しょうりき))が上下にありますが、マアジにはそれらがありません。
マアジは今は季節は違いますが、日本の沿岸域の東北や北海道でも漁獲されるようになってきています。そしてその主要漁法は、上のグラフ(2020年:全国漁獲量98,077トン)にあるように圧倒的にまき網漁法によるものです。ただまき網の81%には及びませんが、定置網によるものも15%を占めているのでマアジはごく沿岸域でも多く生息しており漁獲の対象になっていることが分かりますね。
上のグラフは平成元(1989)年以降のマアジの年間漁獲量の推移ですが、平成年代以降では1990年代にピークがあり、それ以降は減少傾向にあります。因みに過去最高は昭和35(1960)年の551,603トンです。現在10万トン前後の年が3年続いており、昭和50年代の初め頃10万トン以下の漁獲が5年連続で続いたことがあるのですが、それに匹敵する低水準と言えます。
漁獲量の推移だけをみれば非常に心配になりますが、一方消費地市場では、マアジの人気は高く令和3年の東京都中央卸売市場(豊洲市場が大半を占める)でのマアジの入荷量は12,259トンで鮮魚では最も入荷が多かったのです。
上のグラフでも分かるように5月前後が最も入荷が多い時期に当たり、冬場が入荷が少なくなります。
ですが、他の大衆魚と呼ばれる青魚(イワシ、サンマ等)が漁獲量の増減により入荷が左右されがちであるのに比べると、量も含めて最も安定した入荷を誇っているのがマアジであるともいえるのです。実際マアジの東京都中央卸売市場での年間入荷量は、直近の過去5年をみても1.1~1.3万トンと増減幅が少ないのが特徴。
ただ、マアジが他の青魚に比べて入荷が安定し、またサバやイワシに比べて食用に向けられる割合が高いといっても、産地での漁獲がこれ以上減少が続くと、マアジと言えども今後の供給が心配になります。今年は今のところ昨年より水揚げは10%程度上回っているので、まだ潤沢な出回りが期待されます。
GWに築地場外の「築地魚河岸」にあり、いつも食育セミナーに協力いただいている仲卸さんの店でマアジやカツオ、塩イクラ等何点か仕入れ、他にも本マグロやマダイを買い込み寿司パーティーを行いました。当然すべてを食べきれず、残った材料は、翌日大分の郷土料理「りゅうきゅう」にして完食しました。マアジはご飯のおかずにも酒のあてにもぴったりです。
旬のお魚かわら版
「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!