旬のお魚かわら版
No.40 サワラ
2022.05.20旬のお魚かわら版 No.40(2022年4月28日)
今回は魚偏に春と書かれ季節感漂う「サワラ」を取りあげました。サワラはスズキ目サバ科の魚でサバの仲間です。英名ではSpanish mackerel と綴り、mackerelはサバですから、何となくお互い近い仲間のように感じます。
かつて、サワラは瀬戸内海が主漁場となっていた時期がありました。その頃サワラは「春が旬」といわれていましたが、昭和から平成・令和と時代を経て、今や日本海や太平洋北部などでも沢山漁獲されるようになったことから、場所により漁獲時期や旬が変わってきます。また、それらの変化・多様化を反映し、地域によって「桜サワラ」「寒サワラ」などの呼び名も生まれています。呼び名と言えば、サワラは出世魚の1つで、サイズの小さい方からサゴシ、ヤナギ、サワラと変わります。
形態的特徴は、頭が小さく背側に黒い斑点が並んでいるので丸のままではすぐに分かります。サワラは前述のとおり漢字で鰆と書きますが、古くは狭腹とも書き、上図のイメージからも何となく分かります。細い魚体にスリムなお腹!普段は大半が切り身で販売されているので見分けにくいと思いますが、皮目をみると判別できます。
寿命は6-8歳とされており、2歳になると大半は成熟し産卵に加わります。下図は、東シナ海グループと瀬戸内海グループの分布域と産卵場ですが、今は東シナ海グループが津軽海峡を渡って本州を包むように太平洋沿岸まで分布域を広げています。東シナ海グループは日本海では主に定置網で、東シナ海ではまき網やひき縄で、瀬戸内海では主に流し網で漁獲されています。
上図はサワラ類の年間漁獲量の推移ですが、1960年代から70年代にかけて2万トン前後(1977年の4万トンは除く)がピークと言われていますので、近年はかなりそれに近い水準まで資源が復活していることになります。
漁獲が増加し、水揚範囲が拡がったことにより、今サワラは関西以西の魚から徐々に関東地方でも定番となり消費も定着しつつあります。ですから、かつて関東ではサワラは西京漬けなどはあったものの、切り身などは小売店ではあまり見かけませんでした。
上の2つの円グラフは、左が令和年代、右がほぼ40年前の昭和年代の、それぞれの県別漁獲量トップ10を表しています。1980年のデータでは瀬戸内海に面した県が5県、それに九州が4県ありましたが、直近の2020年では北陸や山陰などの日本海に面した県が7県と大きく変化しているのが分かります。このようにこの半世紀足らずのうちにサワラの生息範囲や旬も水揚港も大きな変化があったことになります。
さて、岡山では刺身といえばサワラ!と言われるほど県民に親しまれている魚です。30年位前になりますが、岡山市中央卸売市場を訪ねたことがあります。セリ場がほぼサワラ一色に並べられた風景は、なるほど岡山=サワラに納得がいったものです。事実、全国の中央卸売市場のサワラ(サワラ、サゴシ)の取扱量は、平成26年度では築地市場の2,005トンを上回る2,077トンを岡山市場が取扱い、それ以前は更に差が大きかったのです。現在は豊洲市場が岡山市場を上回り、その差は年々拡がりつつあります。やはり漁場が日本海や東北にも拡がったため大消費地の豊洲市場に送られることが多くなったためでしょう。
最初にサワラの刺身を食したのは大阪の居酒屋でした。それまで西京漬けを食べとたことはあったのですが、さすがに関西では刺身なんだ、とへんに納得した気分でした。
豪快に食べたといえば、九州のまき網の基地の魚市場の食堂で、何故か船頭さんと一緒になったことがあり、水揚されたばかり(?)のサワラ1匹を刺身とタタキにし大皿に盛り付け、それを摘みに東シナ海の海についての船頭さんのお話を聞いたことも忘れ難いサワラの思い出です。まだ店頭に並べられることもあるでしょうから、色々な食べ方にチャレンジしてみてください。
旬のお魚かわら版
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