旬のお魚かわら版
No.39 クロマグロ
2022.05.20旬のお魚かわら版 No.39(2022年4月15日)
今回は魚の王様と呼ばれている「クロマグロ」を取りあげました。
何で今頃?と思われる方も多いとは思いますが、冬場の象徴「大間のクロマグロ」だけでなく、春は主に近海延縄(はえなわ)船で漁獲されるクロマグロの時期でもあります。
冬場のクロマグロは、もちろん津軽海峡であれ、太平洋であれ、日本の沿岸や近海で獲れるものは身質も良く年末年始の最需要期と相まって非常に人気があるとともに世間的にも注目されるのです。
しかし、3-4月頃に日本の近海延縄漁船が漁獲するクロマグロも上々の身質で、食べごろといえます。日本近海のクロマグロの産卵期は夏場が最盛期だとされていますので、春先などは産卵にそなえてエサを多く食べ、脂が乗ってくるのだと思います。一方、産卵の直前や直後の時期は脂が抜け、やせた身になりがちです。
上の図は、一般的なマグロ延縄漁業の仕掛けを示したものです。多数の釣り糸(枝縄)を提げるロープ(幹縄(みきなわ))は長いものだと200㎞ほどにもなり、その長さは想像しがたく、大型の延縄漁船はそれだけ広い海で操業していることになります。
延縄漁業の操業は、大型船であれ小型船であれ一度縄を投げ入れ、一定の時間が来ると縄をあげます。幹縄は機械を使って巻きあげますが、幹縄に結びつけられた何千本もの枝縄の方は、一本一本、漁船員が手作業で巻きあげます。そのため、巻きあげが完了するまで長時間の船上作業が続き、大変過酷な仕事です。ですから、私たちが食べている延縄ものの天然マグロはそうした貴重な労働の結晶といって良いかもしれません。
今クロマグロは国際的な資源管理の対象になっています。国際漁業資源には、マグロ類の他にカツオ類、サケ・マス類、カジキ、サメ類などがあり、広く世界の海を回遊する魚や、公海上でも漁獲する魚など国際的な資源管理を必要とする魚種となります。因みにサンマも対象になっているんですよ!
それでは、クロマグロは日本で一体どれ位漁獲されているのでしょうか。上のグラフによりますと、近年のクロマグロの漁獲量は少しづつ増えていて1万トン前後ですが、1980年前半までは4-7万トン程度あったわけですから随分と減ったことになります。こんなこともあってクロマグロは国際的な資源管理の対象になったのです。
現在は1万トンほどの漁獲ですが、その他に養殖クロマグロが1万トン超の収獲があります。ですから合計すると日本のクロマグロは年間2万トン超で1980年代後半ぐらいの水準になります。資源管理の結果もあって、上のグラフのように徐々にですがクロマグロの漁獲は少しづつ増えています。一時はクロマグロはスーパーには並ぶことがなかったのですが、輸入物も含めて養殖物も多くなり、スーパーでも普通に売り場に並ぶようになりました。
さて豊洲市場でも連日国内産を中心に100本前後のクロマグロが入荷しています。この時期のクロマグロは、延縄漁や定置網漁で漁獲されたものと、養殖物も少しあります。14日には95本の入荷でそのうち天然物は88本、養殖物は7本でした。この日の最高値段は和歌山県の那智勝浦(勝浦漁港)水揚げの近海延縄ものでキロ当たり9,000円でした。続いて石垣島物と銚子物で7,000円で何れも近海延縄船が漁獲したものでした。3本とも100kgを超える大型で、まだ脂の乗りも良く単価も良かったということでしょう。
まだまだ良質のクロマグロも多く、「築地魚河岸」に行けばまだ販売していると思います。機会があったら、産地市場や豊洲市場でも2階からマグロのセリ場が見学できます。
随分前になりますが、境港でまき網クロマグロのセリを見学したことがあります。数百本以上のクロマグロがセリ場に所狭しと並んでいる姿は青魚に比べると魚体が大きい上にセリ人と買人による丁々発止の臨場感あふれるセリのシーンは大いに感動しました。
旬のお魚かわら版
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