旬のお魚かわら版

No.27 秋サケ

2022.02.16

旬のお魚かわら版 No.27(2021年10月15日)


 今回は、北海道の赤潮発生で話題になっている「秋サケ」についてです。
 秋サケ漁が始まる前から不漁予想が出ていましたが、北海道では案の上昨年をやや上回る程度で不漁の域を脱してはいません。サケは、赤身の魚のように思われがちですが実は白身の魚になります。

秋サケ
出典:全国漁業協同組合連合会「プライドフィッシュ」HP

 獲れたての時には赤身ですが、餌を食べなくなると身は徐々に白身に変わります。赤身にみえるのは、エサとして大量に食べるアミ類(小型の甲殻類)に含まれるアスタキサンチンという色素が身に定着するからです。
 アスタキサンチンとい問う言葉は聞いたことのある人が多いのではないでしょうか?エビやカニなど甲殻類の殻に多く含まれているのです。秋サケ漁は孵化放流事業により成り立っていますが、回帰率が多い時には4%以上あったものが直近の5年は2%以下にまで落ちています。
 回帰率が落ちているということは、漁獲が落ちることに直結しているので、環境や生物学的要因も含め早急に原因を究明する必要があります。さて、秋サケといえばより価値が高いのが卵(イクラ)です。1匹当たり3000粒前後がメスのお腹に入っています。魚体の大きい方が卵の数も多いのが一般的です。

近年の秋サケ漁獲量の推移(北海道、本州)
出典:国立研究開発法人 水産研究・教育機構

 上図は平成12年以降の秋サケの年別生産量の推移です。
北海道では5年前に10万トンを割ってから漁獲がさらに急減するようになってきました。本州(三陸中心)もまだ盛漁期ではありませんが、特にこの2年間の漁獲の落ち込みはひどく1万トンを割っています。しかも、北海道では連日報道されているように9月の後半頃から十勝地方や釧路地方など太平洋岸の広域にわたって赤潮が発生し、それが原因となって秋サケやウニなどが各地で大量死したと見られています。

 赤潮は特定の種類の植物プランクトンが異常増殖することにより発生しますが、従来は瀬戸内海や東京湾など比較的高水温の海域でよく起こる現象でした。しかし、北海道で赤潮をもたらした植物プランクトンを調べた結果、低水温の海域でも繁殖する「カレニア・セリフォルミス」という種類が最も多いことが判明したそうです。しかも、「カレニア・セリフォルミス」による赤潮は国内初だそうですので、秋サケ漁をはじめ、北海道の水産業界は全く未知の自然現象に直面していると言えます。早期の原因究明と被害対策が求められるところです。

 こうした被害が出る中、北海道全体の秋サケ漁は、過去4年よりは若干良いという程度で推移しています。上図の北海道の漁獲量でも過去4年といえば今までで最低のレベルですからそれを上回るといっても数量的には僅かです。産地価格も漁当初から高値推移でしたが、現在でも高値は各地で続いています。


 因みに9月12日の大津(筆者が最初に赤潮被害の報道を眼にした、十勝地方の主要水揚げ地)での産地価格は、メスで1090円(前年986円)、オスで346~345円(前年336~335円)でした。魚の価格は、魚卵の価値が非常に高いとメスが高くなりますが、一般的(身を食べる場合)には、卵に栄養を取られて身がやせてしまうメスよりも、オスの方が価値が高いといわれます。特に秋サケの場合は身より卵の方が価値があるということが価格にも明瞭に出ていますね!
色々述べましたが、サケあるいはイクラをこれから食べるときは思い出しながら夫々の味を楽しんでください!

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