旬のお魚かわら版

No.26 スルメイカ

2022.02.16

旬のお魚かわら版 No.26(2021年9月30日)


 今回は、不漁が続いている「スルメイカ」についてです。
 今年もサンマ、秋サケ、スルメイカが揃って不振で、不漁御三家と呼んでも良いような状態が続いています。特にスルメイカは夏を過ぎこれから肉厚スルメイカが登場し最もおいしい季節となるのですが、不漁が続くのは残念です。

スルメイカ
出典:石川県漁協Facebook

 イカ類(スルメイカ、ヤリイカ、ケンサキイカ、コウイカ等)は多くが1年の寿命ですが、時々ニュースで取り挙げられるあのダイオウイカでさえ、2、3~5年位だろうといわれています。総じてイカ類は短命といってよいでしょう。
 今でこそ柔らかそうな体つきをしていますが、スルメイカの体内には軟甲(なんこう)と呼ばれる薄くて透明な板状の組織があります。スルメイカを買って捌くときに時に必ず取って捨ててしまいますが。イカ類の祖先は、アンモナイトに代表されるように大きな貝殻を持っていました。そこから進化する過程で貝殻は退化していき、その名残がスルメイカ等の軟甲やコウイカ類の甲なのです。
 冒頭不漁のことを話しましたが、今現在スルメイカの国内漁獲はどうなっているのでしょうか?

スルメイカの年別生産量の推移
資料:農水省統計部 漁業・養殖業生産統計年報

 上図は平成年代からのスルメイカの年別生産量の推移です。一目瞭然2000年前後から減少傾向が明瞭になる中、多少の増減もありますが、長期的には減少傾向がはっきりしています。今年も特に生鮮スルメイカは近年になく不振で、ぼつぼつ上向きになる季節なのですが一向に上向きません。現在の状況のまま進むと、平成年代以降でも最低の漁獲に終わる可能性も否定できません。

 小型漁船中心の生鮮イカ釣り漁は低調ですが、救いは中型漁船による冷凍イカ釣り漁(船内凍結)は、極めて低調だった過去2年を上回る水揚げがあることです。
 なおイカ漁についての一般的なイメージは、集魚灯や漁火(いさりび)に代表されるように、釣り漁を連想される方が多いと思います。しかし、現在主体になっているイカ漁は底曳船による水揚げが7割ほどを占めているので、ことの外釣り漁の不振が目立っています。底曳船による漁獲が多いということは、イカの多くが海の深い場所に留まっていて余り浮上してこないため、釣り漁では多く漁獲できないということかもしれません。


 今豊洲市場には、連日生鮮スルメイカの入荷がありますが、1日10トン未満で少し寂しい入荷といってよいでしょう。入荷の主体は1箱25尾入り1キロ当たり1000~950円で取引されています。
 数年前の食育セミナーでは、石川県能登町の小木(おぎ)船団が漁獲した冷凍スルメイカを利用したことがあります。冷凍イカ釣り漁では通常、獲れたイカを一定の尾数単位でまとめて船内凍結(ブロック凍結)するのですが、小木船団のスルメイカは漁獲直後に1尾ずつ丁寧に船内で急速凍結しているので、とても新鮮なのです。子供たちにも人気のあるスルメイカの1日でも早い復活を期待したいですね!!

旬のお魚かわら版

旬のお魚かわら版

「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!