旬のお魚かわら版

No.25 ゴマサバ

2022.02.16

旬のお魚かわら版 No.25(2021年9月15日)


 今回は、一部の地区ではブランドになっている「ゴマサバ」についてです。昨年の11月にマサバを取りあげましたが、ゴマサバはその仲間になります。
 姿形はマサバとあまり変わりませんが、体の中心部から腹部にかけて数多くの小さな黒い斑点があります。その姿がゴマを散らしたように見えることが、名前の由来とされています。マサバは平サバとも呼ばれますが、ゴマサバは断面が丸いことから地域によっては丸サバと呼ばれています。

ゴマサバ
出典:高知県 土佐清水市HP

 ゴマサバはマサバに比べると少し暖かい海に棲息し、西日本が主な水揚げ産地でした。筆者の記憶でも、昭和年代は北海道や三陸の沖合での漁獲は少なく、殆どがマサバでした。しかし、平成年代に入ってから三陸海域でも徐々にマサバにゴマサバも混じるようになってきました。ゴマサバの資源が増えてきたことや海の温暖化の影響もあるのでしょうか?徐々に生息域も北上しているような感じを受けます。
 2000年代に入ってからサバ類の漁獲が減少した頃から、ゴマサバもマサバの代替品としてスーパーでは普通に切り身が並ぶようになってきました。

 最初の頃はゴマサバ表示もなく、サバとしてマサバと同列に並んでいたと思います。もともと、ゴマサバは主にサバ節(そば出汁原料)の原料として使われていました。今はあまり見られなくなりましたが、よく蕎麦屋さんの店の外にサバ節が干してあったのを記憶しています。特に静岡県や鹿児島県では、サバ節の生産が盛んに行われていました。

 また小さなサイズのゴマサバは魚類養殖用の餌料としても利用されていました。ですから、関東以北、特に東北や北海道ではあまり食用としての価値は高くありませんでした。以前、三陸の漁港では「ゴマサバではちょっと?」といってマサバオンリーでしたが、その後鮮魚でも、缶詰を始め様々な加工品にも普通に使用されるようになって、格が一段上がりました。

土佐の清水さば
出典:高知県 土佐清水市HP

 特にゴマサバの価値の上昇に寄与したのは、何といっても「土佐の清水さば」の登場ではないでしょうか!高知県の土佐清水沖では、大きな回遊をしない瀬付のゴマサバを立て縄という釣り漁法で漁獲しています。そのゴマサバを「土佐の清水さば」としてブランド化するため、土佐清水のサバ漁師は1尾ずつ丁寧に釣り上げ、漁船内の冷却水槽に活かしたまま漁港に戻ります。漁港では漁協職員が待機していて、水揚げ後すぐにゴマサバをたも網で陸上の活魚水槽に運び入れます。ゴマサバを一旦活魚水槽に入れ、魚体を落ち着かせてから鮮度バツグンの状態で活け締め等で出荷をするのです。

 その水揚げの様子を私も見たことがありますが、活魚水槽に運ぶため漁協職員はダッシュで往復し、実に手早く処理していきます。そうして手間ひまかけてブランド化したゴマサバの刺身が上の写真です。
 関東ではなかなか食べる機会がありませんが、現地でハガツオの刺身と一緒に食べたことがあります。ゴマサバの刺身も実に美味しいものだ、と改めて思いました。ブランドのゴマサバでは、鹿児島県屋久島産の「首折れサバ」も有名です。


 余談ですが、博多の居酒屋では「ごまさば」という人気メニューがあります。こちらは、新鮮な生のマサバを一口大の薄切りにして調味料(しょうゆ、酒、みりん、白ごま、小ねぎ等)をまぶした料理です。北海道や東北地方では、サバ類(マサバ、ゴマサバ)を刺身ではほとんど食べませんが、関西以西の地域ではサバ類(マサバ、ゴマサバ)を生で食する文化があり、同じ日本列島でも随分違う食べ方があるのが分かります。刺身用ゴマサバの入手はスーパーや専門店でも難しいのですが、通販やふるさと納税でも入手できます。機会があったらぜひ、通販をしたり、産地に行ったりして食べてみてください!

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