旬のお魚かわら版

No.28 サンマ

2022.02.21

旬のお魚かわら版 No.28(2021年10月29日)


 今回は、今年も不漁の色濃い「サンマ」についてです。
本来であれば、今年は何匹食べた?というような会話が巷では盛んに行われている時期です。10年位前までは、9月に入ると街中にサンマが出回るほどの勢いがありました。
 しかし下のグラフのとおり、この10年ほどで漁獲量が急激に減り続けています。

サンマ
出典:全国さんま棒受網漁業協同組合HP

 下のグラフは1981年以降のサンマの漁獲量を表したものです。
特にこの5,6年の漁獲不振が目に付き、昨年はこの40年で最も漁獲が少なかったのです。漁獲が少ないことも問題ではありますが、何しろ漁期始めから漁場が遠いのが恒常的になっています。
 漁場が遠いということは、漁獲したサンマ(生鮮)を水揚げ港に運ぶ時間が長くなるということですので鮮度が落ちやすいですし、また、漁港と漁場を往復する距離が長くなりますので漁船の燃油代もかかり漁業経営を圧迫することにもなります。
 こうしたことが近年はずっと続いており、道東の沿岸や近海に寄ってくるサンマが少ないのと漁期も非常に狭められています。国の調査等でも日本列島に寄ってくるサンマ資源が少なくなっているとしています。

1981年以降のサンマの漁獲量
さんまの回遊ルート
出典:全国さんま棒受網漁業協同組合HP

 上の地図は、日本近海におけるサンマの標準的な回遊ルートと時季ごとの主要水揚げ港を表しています。この地図のとおりであれば、今頃(10月下旬)は三陸沖や常磐沖にサンマ漁場が形成され、各地の漁港がサンマの水揚げでにぎわっているはずなのですが、上記のとおり、漁場が遠く、親潮に乗って日本近海にやってくるサンマが少なく、まだ三陸沖などに漁場が形成されていません(今は北緯42度、東経151度付近。)そのため、漁期にも遅れがみられていることになります。
 また、こうした残念な状況のため、今年はまだサンマを食べていないという人も多いかもしれませんが、食べたことのある人は気づいているかもしれません。以前のサンマに比べると痩せていると思いませんか?漁獲が少なくなった最近は丸々と太ったサンマをみることが少なくなってきていると感じている人は多いと思います。
 おそらくサンマが回遊してくる海洋環境に変化があったのではないでしょうか?特に餌を食べながら回遊している(索餌回遊)海域の環境に大きな変化があったのかもしれません。


 サンマの寿命は2年程で青魚の中では非常に短い一生を送ります。初めの1年で成熟しますが、その後はあまり大きくはなりません。また、これからは成熟したサンマは徐々に産卵に向かうものも出てきます。ですから、これから脂の乗りが良くなることは少ないと考えられます。


 産地価格は、9月が昨年に比べると水揚量が多かったのでかなり下げたのですが、10月に入ってからは漁獲が伸びず、特に中旬以降は一転昨年の価格を上回っています(産地価格:今は1kg当たり700円位、昨年同期は500円位)。このような状況なのでこれから爆発的に水揚げが伸びる状況は考えにくく、このままシーズンが終わるとみられます。
 ここ数年皆さんもなかなかサンマを食べられない状況が続いていますが、いずれ復活もあるでしょうから復活する日まで気長に待って美味しいサンマのイメージを膨らませてはいかがでしょうか!

旬のお魚かわら版

旬のお魚かわら版

「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!