旬のお魚かわら版
No.22 シイラ
2021.07.30旬のお魚かわら版 No.22(2021年7月30日)
今回は、ハワイでは「マヒマヒ」とも呼ばれる「シイラ」についてです。
魚編に暑いと書けば、?(シイラ)と読みます。猛暑の今にピッタリではないでしょうか?釣り上げる時の引きが強いことから「万力」や「万びき」と呼ばれたり、縁起の良いということから「万作」ともいわれます。
画像でもわかるように、背びれが頭上から尾の付け根部分まで一直線に並んでいます。顔面もなかなか愛嬌があり、親近感を持つ人もいるかもしれません。
シイラは世界中の暖かい海に棲んでおり、日本周辺の沿岸から沖合域の表層で暮らしています。大きくなるものは2メートル近くになるといわれ、主にまき網や定置網で漁獲されます。その他にシイラ漬け漁という漁法があります。シイラが流木など浮遊物に集まる習性を利用したもので、シイラ漬(漬木)という漁具を海面に設置してシイラをおびき寄せ、それをまき網や釣りにより漁獲するものです。
この漁法は長い歴史があり、天正年間(1573-1591)に釣りによるシイラ漁業が営まれていた記録があるようです。古い歴史をもっているシイラ漁ですが、食卓や街のお店ではなかなかお目にはかかれません。
それはシイラを食べる地域に隔たりがある為で、特に関東ではあまり見ることができません。食べる地域も中国地方や長野等の山間部に多く、もちろん九州、四国でもというふうに総じて西の地方に多いのが特徴です。
しかし、最近では後述のとおり安価な天然魚であることから、「マヒマヒ」として大手回転すしチェーンで商品化されています。
上図はシイラの年別生産量ですが、1980年代半ばから1990年代前半にピークがありますが、2006年を最後に公表されておりません。現在は1万トンをやや下回る水準で推移していると思われます。
能登半島以南の山陰地区や九州地区、四国といった漁港に主に水揚げされています。20年程前になりますが、一度高知の定置網に乗せてもらったことがありますが、その時大サイズから小サイズのシイラが漁獲されていました。その時のシイラは多少値がついていましたが、多くは乗組員のお土産になっていました。
シイラは、魚類の中で価格的にはかなり安価な部類に入ります。それは、食べる地域とそうでない地域の差でもあり、水揚量の差(ある程度まとまった水揚げのある市場と極端に少ない水揚量)でもあります。産地価格も、関東以北の市場では1kg当たり2桁(すなわち100円未満)で、関西以西では概ね3桁です。総じて西の地方での評価が高いのです。
食べ方は、刺身に始まり煮物、焼き物、フライ等の揚げ物と多彩なものがあります。大分前になりますが、宮崎県で食べたことがあります。八宝菜(?)のようなものに入っており、クセもなく何の違和感もなく食べた記憶があります。身質も白身で日本人向けだと思います。刺身は限定したところ以外は難しいですが、安価で淡白な魚なので、味付けを工夫すれば、総菜魚として人気が出る可能性を秘めた魚類の一つです。
旬のお魚かわら版
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