旬のお魚かわら版

No.20 かつお節

2021.06.30

旬のお魚かわら版 No.20(2021年6月30日)


今回は、7月の食育セミナーで勉強する「カツオ節」についてです。
 多くの一般家庭では日常的に出汁をとる習慣が薄らいでいる昨今ですが、コロナ禍以前のセミナーでは年に1回は近くの晴海(東京鰹節センター)にある、東京鰹節類卸商業協同組合さんにお邪魔して、工場見学等を行っています。

カツオ節
出典:枕崎市漁業協同組合 魚屋まくぎょ

 カツオ節の基本的なことについては、セミナーの動画の中で同組合の中野さんがお話しするので、この瓦版では少し違った視点でみてみたいと思います。
カツオ節の起源は定かではないといわれていますが、「日本最古の文献「古事記」によれば、今から1500年ほど前古墳時代の雄略天皇(ゆうりゃくてんのう)の代に「堅魚」という名前が用いられています。」((一社)日本鰹節協会HPより)「堅魚」とは生のカツオを干した素干し品という程度のものだった、と言われています。

 当時は現在のように生で食べる習慣がなかったのかもしれません。ですから手間暇がかかり精巧に作られている今のカツオ節とは少し違い、いわゆる簡易加工品のようなものだったのだと思います。

 今のカツオ節の製造方法である燻製法が考案されたのが、1600年代の半ばころ、紀州の甚太郎という人が土佐国(高知県)の宇佐浦ではじめたのが起りで、その後、土佐の与市がこれを改良し、ほぼ現在と同じ燻製法を完成したといわれています。((一社)日本鰹節協会HPより)さて時代を進めて近年の鰹節の生産状況を昭和、平成、令和で比べてみましょう。

 まず、鰹節を始めとする節類の生産量について、平成初期以降の長期推移をみてみましょう。

日本の各節類の生産量の推移
資料:水産物流通統計年報(農水省統計部)

主力はかつお節ですが、平成10年代前半と後半にピークを迎え、その後やや減少傾向がみられます。
 なまり節は昭和年代には1万トン前後の生産量でしたが、その後は右肩下がりが目立ち1000トン程度まで落ちています。かつおけずり節は、ピーク時に比べると若干落ち気味、サバ節は増減を繰り返しながら今は横ばいといったところ。

鰹節の県別生産量1979年
鰹節の県別生産量1999年
鰹節の県別生産量2019年
資料:水産物流通統計年報(農水省統計部)

 カツオ節は鹿児島県(枕崎、山川)と静岡県(焼津主体)が有名で、生産量もその2つの県に集中しています。なかでも昭和、平成、令和を通じて鹿児島のシェア(56%→59%→75%)が増加しています。
 カツオ節は生産地に関連し薩摩節、土佐節、紀州節のように由緒ある伝統的な名称で呼ばれたりもしますが、徐々にこうした名前も消えていくような喪失感を覚えます。カツオ節(本枯れ節)が出来るまではかなりの手間暇がかかっています。一見そんな風にはみえませんが、色々な工程を踏んでカツオ節は完成します。
 20年ほど前に鹿児島の山川の鰹節工場に立ち寄ったことがあります。その日は夏の暑い盛りでしたが、従業員が加工場の外で上半身裸のまま休憩していました。加工場内では火を使った作業をしているので、猛暑日であろうとも屋外の方が涼しく感じられたのかもしれません。
 また、子供が小学校に通っていた時、担任の先生から、家庭にある何か珍しいもの(?)があったら持ってきて、という話があり
自宅のカツオ節削り器を持たせたことがあります。

けずりっ子
出典:株式会社トマル水産産
カツオ節削り器
出典:愛工業株式会社ホームページ

 それはそれは大好評で随分喜ばれたことがありました。考えてみると今はカンナを日常的にみることは殆どなくなっているので、もちろん削り器は更に珍しいものだったでしょう。
 コロナ禍で家にいることが多い日が続いています。従来の削り器の他、最近ではハンドル式の削り器もありますので、この機会に一度カツオ節削りにチャレンジするのも良いかも。

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