旬のお魚かわら版

No.19 ホヤ

2021.06.16

旬のお魚かわら版 No.19(2021年6月16日)


 今回は、今まさに旬を迎えている「ホヤ」についてです。
 代表的な食用ホヤであるマボヤには突起が多くあり、形がパイナップルに似ていることから「海のパイナップル」とも呼ばれています。
 下の写真がマボヤですが、初めてその姿を見るという人、また、これは一体動物なのか植物なのか?そして本当に食べることができるのか?と疑問に思う人も多いのではないかと思います。実は、ホヤは卵から生まれる動物なのです。

ホヤ
画像:ぼうずコンニャクの市場魚介類図鑑

 ホヤの仲間は海底の岩などに固着して成長しますが、孵化直後はオタマジャクシのような形をして泳ぐことができ、その時期だけ体内に「脊索(せきさく)」と呼ばれる棒状の組織を持ちます。そのことから、脊椎動物に最も近い動物のグループ(専門用語で「原索動物」または「尾索動物」)に分類されています。
 マボヤは、西は朝鮮半島から九州、日本海、瀬戸内海、太平洋側は三陸を中心に北海道に棲息しています。天然物もありますが、三陸では養殖生産が盛んに行われており生産量の大半を占めます。

ホヤの県別生産量

 昨年の生産量は左側の円グラフのとおり4道県で100%を占めています。東日本大震災前は、宮城、岩手の2県で95%を占めていました(右側の円グラフ)。ですから、北海道・東北以外の人にとっては、ほとんど馴染みの無かった水産物とも言えます。もちろん関東地方などでも、これまで居酒屋メニューの「ホヤ酢」などで多少は消費されていましたが。そうしたマボヤの消費状況が東日本大震災を境に大きく変わりつつあります。

 上記のとおり、震災前は宮城県が圧倒的な養殖産地であり、その7~8割は韓国向けに輸出されていました。ところが、福島第一原発事故を理由に、韓国が三陸地方などの水産物の輸入を全面的に禁止したため、三陸産ホヤの大半は販売先が無くなり、やむなく廃棄処分せざるを得ない状況となりました。ホヤは3~4年で収獲可能ですので、震災の痛手から立ち直り、これから水産業の復興に力を入れようとしていた矢先のことでした。

 そこで、ホヤの国内消費を増やすために、宮城県を中心として各地でメニュー開発や販売促進活動が活発に行われるようになりました。その代表的な存在が2014年に結成された「ほやほや学会」で、「ほや祭り」などのイベントを通じて、ホヤの消費拡大や情報発信を進めています。

 実は、新鮮なホヤは加熱食材としても有用で、唐揚げ、串焼き、焼きそば、アヒージョなど料理メニューが増えています。皆さんもホヤを見かけたら、ぜひホヤ料理にチャレンジしてみてください。なお、韓国は北海道産水産物の輸入は禁止していないことから、上のグラフのとおり、北海道でのホヤ養殖と韓国輸出が増えています。
 因みに、筆者が初めてホヤを食べたのは、ほぼ半世紀前で、当時湯島にあった居酒屋(I屋)ででした。「奥様公認酒場」と銘打っており、岩手の地酒「酔仙」が並べられていたような記憶があります。

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