旬のお魚かわら版

No.16 カツオ

2021.04.30

旬のお魚かわら版 No.16(2021年4月30日)


前回はマアジでしたが、旬繋がりということでカツオについてです。
今の季節はカツオにとって「上りカツオ」の時期で、小笠原の方や黒潮に乗って本州方面に一斉に近づいてくる時期ともいえます。5月に入るともっと列島寄りに近づいてくると思います。

カツオ
資料:ぼうずコンニャクの市場魚介類図鑑

 カツオは、堅魚や勝魚などとも表記されることもあり、干すと堅くなるに由来します。カツオ節の本枯節を想像してみてください。如何にも堅そうですね!カツオは魚編に堅と書きますから、イメージ通りですね。カツオの漁業について皆さんがまず連想するのは、やはり一本釣りだと思います。
 16年前の2005年には、近海かつお一本釣り漁業だけで5万トン以上の漁獲量がありました。しかし、ここ10年ほどは上の表のとおり水揚げが極めて低調で、2~3万トン台で推移しています。特に昨年はまれにみる不漁で2万トンを少し上回る水揚げにとどまりました。今年はというと、今のところ順調で、鹿児島港や勝浦漁港(房州)では連日水揚げされています。3月単月では、過去5年と比較しても最も多い水揚量です。
 また生鮮カツオは、一本釣りの他、近海まき網や曳縄(小型船による釣り漁の一種)でも漁獲されます。まき網漁はもうすぐ始まりますが、大量漁獲が見込めることもあり、釣り漁とともに期待したいところです。

全国のカツオ一本釣りの水揚げ量と価格の推移

 一般的に、水揚げ量(供給量)が増えると市場価格は下がります。上の表のカツオの価格は、水揚げ地(産地市場)における平均取引価格(いわゆる浜値)なのですが、今年3月の価格は以前の年に比べると極端に低いですね。水揚げ量の急増に加えてコロナ禍による外食需要の落ち込みが、さらに価格低下に拍車をかけたのではないかと思います。
 ともあれ、消費者にとって、カツオが安く買えるのはありがたいことです。街のスーパーでは、好漁もあって生のカツオが1節480円(4月24日)で売っていました。昨年の今頃は大不漁でスーパーの棚にはなく、解凍タタキがありました。今の時期で1節480円ですからかなりお買い得かな!

 上記のとおり房州の勝浦は生鮮カツオの代表的な水揚げ地ですが、和歌山の那智にも勝浦があります。近海マグロはえ縄船の水揚港で有名な地区です。漁業の歴史には和歌山の漁師が房州(千葉)に移り住み漁業を伝承したとあります。千葉の勝浦や白浜などの地名はその名残りだと言われていますが、何か少し佃島に似ていませんか!

 東京都中央区の佃島も、元々は摂津国佃村(現在の大阪市西淀川区)の漁民が徳川家康の命により江戸に移り、漁業特権を与えられ、湾内の砂州を埋立て居住地を自ら造成して移り住んだ場所なのです。

 さて、5月の食育セミナーはカツオが取り挙げられます。最近読んだ本の中に「江戸時代はカツオに生姜でなく辛子を付けていた」とありました。当時の川柳に「初がつお銭と辛子で二度落涙」とあるそうです。食べたことはありませんが「辛子醤油和え」という食べ方があります。それに似たようなものでしょうか。5月の食育セミナーではさてどんなメニューになるのでしょうか。

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