旬のお魚かわら版

No.17 サクラマス

2021.05.17

旬のお魚かわら版 No.17(2021年5月17日)


 北海道ではこのかわら版が届く頃はギリギリ桜が咲いていると思いますが、本州以南では既に花は散っており、来年こそ「本来の花見」を期待している人も多いのではないでしょうか!ということで、今回は桜に因んで旬のサクラマスについて取り上げます。

サクラマス
出典:ぼうずコンニャクの市場魚介類図鑑

 サクラマスは鮭の仲間です。9~12月に産まれた卵は川底で冬を越し、翌年春に孵化します。サクラマスと言うくらいなので桜が咲く頃がこの魚の旬で、本州だと3~6月頃が漁獲時期、ピークが4月頃になります。ただ北海道では1か月くらい時期がずれるようです。

ヤマメ
ヤマメ 出典:ぼうずコンニャクの市場魚介類図鑑

 稚魚は1~2年川の上流で暮らしますが、その後海へ下るものと、そのまま川に残るものに分かれます。海へ下るもの(降海型)が「サクラマス」、川に残るもの(河川残留型)が「ヤマメ」と呼ばれています。写真のとおり、両者は姿形もまったく違ったものになります。海へ下ったサクラマスは約1年後、生まれた川に戻って来ます。
 サクラマスの名前の由来は、戻ってくる時期が桜の咲く季節であることや、身色が桜色をしていること、などと言われています。
 サクラマスの寿命は、同じサケ類のシロザケ(トキシラズ、秋サケ)より少し短く、3~4年と言われています。

サクラマスの全国漁獲量(2019年)
資料:国立研究開発法人 水産研究・教育機構

 2019年の日本での沿岸におけるサクラマスの漁獲量は 1,481トンで、その7割を北海道が占めています。次いで、青森県、岩手県となります。
 山形県ではサクラマスを県魚に指定していますが、漁獲は僅かに過ぎません。日本海ではマス延縄漁業がなくなったことなどが漁獲量に影響しています。また河川環境の悪化なども資源に影響を与えているかもしれません。サクラマスの漁獲は殆どが日本で、残りはロシアが若干漁獲する程度なのです。

 さて、サクラマスと同じく○○マスと呼ばれ、海に下って大きく育つサケ類に、カラフトマスがあります。カラフトマスは缶詰などで親しまれ、地方により青鱒と呼ばれます。このカラフトマスなどよりも、サクラマスの方が格上のマスとされたようで、サクラマスは地方により本鱒(山形)、真鱒(青森、岩手)とも呼ばれています。「本当のマス」という意味なのでしょう。

 サクラマスは身色もサーモンピンクでいかにも美味しそうに見えます。
 先週、食育セミナーの食材の買い出しに「築地魚河岸」の京富さんに立ち寄った時に目の前にサクラマスの半身があり、見とれていたら、すかさず業者さんが購入していました。

 そういえば、ずいぶん前のことになりますが、全国漁業協同組合連合会主催の料理教室に参加したことがあります。料理教室ですから当然旬を意識した食材が選ばれます。その時にサクラマスを現地の山形県の酒田から取り寄せて、前半の講義に続き料理実習が行われました。半身以上のサクラマスをみたのは、その時以来かもしれません。

 色鮮やかなサクラマスは、焼いてよし、煮てよし、揚げてよし、もちろん生もよしですが、刺身はルイベにしてからです。(ルイベとは、サケ類などを冷凍保存したもの、冷凍のまま薄切りにした刺身を指す北海道の郷土料理です。)
 身質も火を通しても堅くならず、美味しく食べることができる高級魚です。スーパーではほとんど売っていないと思いますが、築地魚河岸あたりをぶらぶらすれば買えるかも!

旬のお魚かわら版

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