旬のお魚かわら版

No.15 マアジ

2021.04.15

旬のお魚かわら版 No.15(2021年4月15日)


 桜前線も東北地方まで北上しました。関東地方ではほぼ桜も散ってしまいましたが、今年はコロナ禍で「自粛花見」でしたね!桜が散るころから本格的な旬を迎えるマアジ(真鯵)について、今回は取り上げます。

マアジ
画像:ぼうずコンニャクの市場魚介類図鑑

 マアジの名前の由来については色々ありますが、一般的な説は「味が良く美味しくて参ってしまう」ことから、魚編に参が付いて「アジ」になったといわれています。良くアジの特徴を表していると思いますね。
 もう一つは、旧暦(太陰暦)の3月(参月)に良く獲れたのでというものがあります。旧暦の3月は、新暦(太陽暦)の5月頃にあたります。自然を相手にしながら営む漁業では今でも旧暦の名残が残っているものもあり、九州の大中型まき網漁では、ひと月のうち満月を挟んで7日間の一斉休漁が実施されています。これなどは、旧暦を基にし操業計画をたてている最たるものです。この一斉休漁は乗組員の休養のためのものですが、資源の保護にも通じています。

マアジの全国生産量の推移
資料:農水省漁業生産・養殖統計年報

 全国のマアジ漁獲量は、1960年にピークを迎えますがその後は低迷し、1990年代にやや盛り返すもののその後は再度減少に転じるなど、特にこの3年は、10万トン前後まで漁獲量は落ちています。
 漁業の方法(漁法)は大別すると網漁法と釣り漁法に分けられます。マアジも網漁法ではまき網と定置網、釣り漁法では1本釣りが、それぞれの主要漁法になります。街のスーパーではほとんど見かけませんが、より鮮度が良いアジを選ぶとすれば一般的には、「関アジ」に代表される「釣りもの」に軍配が上がりますが、もちろん巻き網などで漁獲されたアジでも十分に美味しくいただけます。全国のスーパーなどで毎日、鮮魚のマアジを買うことができるのも、大量漁獲と供給が可能な巻き網のおかげだと言っても過言ではありません。

 また、マアジには、沖合を回遊する「クロアジ」と、沿岸域に棲息して大きく移動しない瀬付(地付)の「キアジ」の2つのタイプがあります。食べるエサの違いなどから、体やヒレが黄色がかっているのが「キアジ」で、目利きの評価では「キアジ」の方がより美味しいとのことです。もし売っているのを見かけたら是非一度買って食べてみてください。

マアジの県別生産量のベスト10
資料:農水省漁業生産・養殖統計年報

 上図はどこの県の船がマアジを沢山漁獲しているか、ということを表しています。このグラフのとおり、九州を始め、まき網漁がさかんな西日本の県で漁獲が多いことが分かりますね!ただ最近では、漁獲量が少なく、アジに馴染みの薄かった東北地方や北海道でも水揚げされるようになってきました。東京水産振興会で実施している漁獲変化の調査でも、北海道地区のレポートによれば、昔は獲れても雑魚と一緒に魚粉用にしか売れなかったマアジが今は徐々に食卓に上がるようになってきているとのことです。
 筆者も高校生の頃まで秋田県の男鹿半島の海辺の町に住んでいましたが、マアジを食べた記憶がありません。しかし、北日本でも水揚げされ、消費されるようになり、マアジも全国区の魚に変わりつつあるようです。


 また、先週食育セミナーが行われたのですが、「アジのさんが焼き」を作るために3枚卸をやりながら、「アジは匂いが少ないね!」という会話のやり取りがありました。同じ青物類でも、サバやイワシに比べると鮮度問題はあるものの確かに匂いは少ないと思います。特に匂いに敏感になっている現代人にとっては、食べやすさやイメージの良さにアジは繋がっているのかも。
 アジの呼び名についてですが、地方によっては小さなアジのことを「ジンタ」と呼びます。昔聞いたところによれば、あの「森下・・・・」に由来しているそうなのです。どちらも小さくて銀色に輝く姿を想像すれば、皆さん納得できるのでは!

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