旬のお魚かわら版

No.13 キチジ

2021.03.15

旬のお魚かわら版 No.13(2021年3月15日)


 赤い魚シリーズも今回が3回目です。今回は北国では殊の外好まれるキチジについてです。色や形は、前回のアカムツや前々回のキンメダイに比べ鮮やかな赤がやや濃いのが特徴で、背びれの中心付近に黒い斑紋があります。

キチジ
画像:ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑

 キチジの呼び名は地方により様々で、北海道ではメンメ、メンメンと呼ぶ地域もあります。その他、キンキと呼ぶところもありますし、八戸ではサイズの小さいものをキンギョと呼ぶそうです。
 寿命は20歳程度とされており、産卵場は400m以深ですが、深いところでは1100m位というデータもあるようです。1100mですからキンメダイやアカムツよりはるかに深い海で産卵していることになります。

漁獲量
資料:国立研究開発法人 水産研究・教育機構

 キチジは漁場や産卵域により、オホーツク、道南・道東、太平洋北部の3グループ(系群)に分けられます。上図は道南・道東グループの漁獲量の推移です。近年はやや盛り返していますが、1980年代に比べると低い水準なのがわかりますね!漁獲量が少なく美味であるのが、高級魚と呼ばれるゆえんですね!
 赤い色の高級魚といえば、北海道や三陸、関東地方ではキチジですが、西日本ではアカムツのイメージが強く、またキチジは日本海ではほとんど漁獲されないため、関西や日本海側の地方などでは馴染みが薄い魚といえます。あまりスーパーなどでは見かけませんが、デパートや街の専門店では見かけることがあると思うので、その際は赤が鮮やかなものを選ぶのがコツです。

年別・月別平均価格
資料:東京都中央卸売市場年報

 上図は、豊洲市場でのキチジの価格推移です。価格のピークにふた山あるのが分かります。12月に値段が高いのは一般的に理解できますが、いずれの年も夏場の8月に高いのは何故でしょうか?それは、年間を通じて8月が一番入荷が少ないからなのです。
 キチジの漁法も大別すると底曳きと釣りになります。底曳き漁が休漁に入る地区が多いこともあり、市場入荷も少ないのです。当然底曳きの水揚の方が数量が多いので休漁の影響が出ているのです。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、特に上半期の緊急事態宣言もあり、価格の下落も目立っています。
 キチジといえば、30年近く前になりますが釧路の幣舞橋(ヌサマイバシ)の程近くに炉端焼き屋さんがありました。そこで食べたキチジの味は最高でした。価格も数千円でしたが、満足度100%の味でした。煮つけを注文したのですが、そのころから価格は上昇傾向になっており、キチジの格が以前より格段に上がったといわれています。炉端焼の女将もキチジのように美人女将として界隈では有名な人でした。

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