旬のお魚かわら版

No.12 アカムツ

2021.02.26

旬のお魚かわら版 No.12(2021年2月26日)


 今回の瓦版は、赤いシリーズで前回のキンメダイに続いてアカムツです。
 実は前回のクイズの正解はアカムツでした。
 アカムツは通称ノドグロという名前で呼ばれ、最近では回転すしでも扱ったりするので皆さんもおなじみの魚かもしれません。この魚は口の内部(口腔)が真っ黒なためノドグロと呼ばれるのですが、福島県では同じく口の中が黒い「ユメカサゴ」のことをノドグロと呼んでいるそうです。

アカムツ
資料:ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑

 見た目は前号のキンメダイほど鮮明な赤色ではなく、ややどんよりしています。キンメダイが200m以深に棲んでいるのに比べると100-200mの少し浅いところで、北海道を除いた日本周辺海域(太平洋、東シナ海、日本海)などに棲んでいます。
 漁法は、底曳網が主体の県が多く、その他は釣り・延縄が多いのが特徴。ただ富山県だけは刺し網が主体のようです。寿命は、雄が5年、雌が20年で人間同様雌が長生きですね!


 日本海では、夏から秋にかけて産卵期を迎えます。日本海のアカムツの資源状態は、概ね増加傾向にあるとされていますが、魚体が小型化していることもあり、今後の資源状況の悪化を懸念する報告もみられます。特に単価の高い魚でもあり、需要も高いので、過剰漁獲には注意したいものです。
 アカムツは生の刺身はもちろん、煮たり、焼いたり、蒸したり、揚げたり、そして加工品にもたくさん利用されています。

炙りアカムツ アカムツの塩ゆで

 さて、前号で格が上がった魚としてキンメダイのことを書きましたが、アカムツもその中の一つです。兵庫県の日本海側にある柴山港の漁協史に、1948(昭和23)年の魚類価格表が掲載されています。それによると、魚介類が特級から8段階に分けられており、ズワイガニが上から5番目の4級に入っています。エビ、タイ、カレイ、ブリなどよりはるかに低く、ボラやシイラと同等、ましてノドグロはもっと低く6級に分類されています(広尾克子著「カニという道楽」より)。

 私も以前浜の人に「ノドグロは、昔は雑魚の一つ」だったと聞いたことがあります。名前は変わらなくても出世魚の一つと言ってよいと思います。このように、魚の格は時代によっても大きく変化します。また、ひょんなことをきっかけとして大ブームにもなるのでどんな魚も大事にしたいものです。

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