旬のお魚かわら版

No.11 キンメダイ

2021.02.15

旬のお魚かわら版 No.11(2021年2月15日)


 まだ2月とはいえ立春も迎えて少し暖かくなり日差しも春らしくもなってきましたね。
 今回は、以前食育セミナーでも取り挙げたことがあるキンメダイについてです。キンメダイの目が金色に見えるのは、目の奥にあるタペタムという反射層に光を集めているためです。

キンメダイ
出典:ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑

 キンメダイの成魚は200m以深のいわゆる深海に棲んでおり、様々な釣り漁法で漁獲されます。中には、樽に糸と針を付けて潮流をみて流しながら順次樽を引き上げる、「樽流し漁法」(下図)と呼ばれる珍しい漁法もあります。

樽流し漁法
出典:高知県庁ホームページ

 以前の食育セミナーでも東京に関連する魚ということで取り挙げたことがあります。キンメダイの漁場は、関東沿岸から伊豆諸島で最も漁獲が多く、東京都以外の漁船も集まって操業しています。この他に近海では高知沖などでも漁獲され、遠洋漁業でも三陸東はるか沖の天皇海山付近で底引き網などにより漁獲されます。国立研究開発法人水産研究・教育機構によると寿命は24歳以上とされ長寿の部類に入ります。

キンメダイの水揚げ量と価格の推移
資料:おさかな広場

 上図をみると2010年以降水揚げが減ってきているのが分かりますね!全国的に資源水準は低いとされており、その動向も減少傾向とされています。逆に単価は徐々に高くなっており、20年前に比べると約2倍になっています。その意味では格が上がった魚の一つといえます。


 もう一つ格が上がったと有名で、皆さんも良く知っている魚があります。何でしょう?答えは次号で!ヒント:今開催されている全豪テニスで初戦敗退しましたが、錦織選手が日本に戻ってきた時に食べたいと言ったことでブームに火がつき、有名になった魚です。


 さてキンメダイに戻りますが、昭和年代(1970-80年代)、キンメダイは基本的に煮魚で出されていました。伊豆辺りの民宿でもキンメは煮魚、マダイは刺身と色分けされており、マダイの方がまだ養殖も少なく高級魚で、キンメは総じて総菜魚の役割を担っていたと記憶しています。


 それが今やキンメも刺身やしゃぶしゃぶを始めとしてカルパッチョなど洋風の料理にも使われ、また開きは焼き魚になり、切り身は漬魚の原料として八面六臂の活躍をしています。


 キンメダイは御存じのように赤い色をしています。日本では総じて赤い色の魚は好まれ、価格も高いのです。キンキ、アカムツ、アマダイはその代表的な魚です。因みに漁業の世界でも底引網では黒っぽい魚の漁獲が多いのですが、中に赤い魚(あかうお)が混じっていると漁師は大喜びです。それは、赤い魚は魚価も高く、黒い色の魚だけの漁獲物とは価値の差が歴然としているからなのです。

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「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!