旬のお魚かわら版

No.74 サンマ

2023.09.29

旬のお魚かわら版 No.74(2023年9月29日)


 今回は、何といってもこの時期最も注目される「サンマ」です。

 ここ数年は漁獲量そのものも少ないのですが、その姿ぶりもサヨリのようにスリムで以前の大きなサンマを食べていた人にとっては食指が動かないのでは。

 サンマは分類上ダツ目(もく)サンマ科に属しています。ダツ目には他にダツ科、トビウオ科、サヨリ科、メダカ科がありますが、いずれも細長い体形が特徴的です。また他の魚類に比べ背びれが後ろ(お尻)の方に位置しているのも特徴の一つです。淡水魚のメダカも同じダツ目というのが面白いですね!

サンマ

 サンマの寿命は約2歳で、比較的短い一生と言えます。現在サンマは記録的な不漁に見舞われています。沢山漁獲されていた時代は日本の200海里内で主に操業していたのですが、今やいわゆる公海漁場といって200海里外で操業するパターンが特に8月、9月の時期に定着しています。今もまだその漁場が主体で徐々にロシア水域に移動して操業しているようですが、日本の近海に姿を現すには少し時間がかかるかも知れません。

 現在公海域では、ロシア(1960年代ソ連時代から)、韓国、台湾(いずれも1980年代から)、中国、バヌアツ(何れも2010年代から)等が操業しています。80年代以降に漁業国が増えているので、単純に考えれば年々漁獲圧力は増しているとも言えます。

サンマ漁獲量
出典:全国さんま棒受網漁業協同組合

 上のグラフは1981年以降のサンマの水揚量の推移です。この40数年では2008年約34万トンをピークに右肩下がりが顕著になっており、中でも5万トンを割ったこの4年間が不振の極み。なお過去最高の漁獲量は1958(昭和33)年の57.5万トンです。今や2万トンを割っていますので、ピーク時の3%程度ということになります。

 さて今年の漁は、低水準ながらも水揚量としては昨年を上回っていて今後に期待が高まっています。漁場は海が暖かいためか去年の今頃より少し北側にできています。

サンマ水揚げ
出典:(一社)漁業情報サービスセンター「おさかな広場」より作成(ただし2023年9月は暫定値)

 上のグラフは、2018年以降の全国の年別月別産地水揚量と価格の推移です。グラフのとおり2023年9月の水揚量は過去4年(2019-2022年)のそれを上回っており、久しく不振に喘いでいた産地では今後の漁模様に期待で胸を膨らませています。9月28日には全国の水揚げ総量が1,000トンを超えました。以前は普通にみられたものですが、ずいぶん久しぶりのような感があります。

 ただ魚体は主力が100g前後のもので、欲を言えばあと20~30g位欲しいところです。ただサイズの割に脂が乗っているとのことで、焼いた時のジュージュー感が目に浮かびます。

 メディアでも29日の朝番組で水揚げ日本一を誇る根室(花咲)漁港が取りあげられ、市民や地元食堂、東京新橋の居酒屋なども取りあげられ、口々に今後の漁への期待を込めていたのが印象的でした。

 今年は酷暑の夏でしたが、海水温の方も未だ平年に比べると高く、特に北海道や三陸沖合では3~5℃高い状態が続いています。しかし秋の気配も深くなってきていて、海も親潮の勢力が目立つようになってきました。サンマも列島寄りに南下し、私たちの食卓を賑わせてほしいものです。

 漁獲が極端に少なくなってからは、サンマに触れ、食べる機会が減ってきていると思いますが、秋はサンマで、が長く根付いて私たちの食文化を豊かにしていました。今週末は首都圏の小売店でもサンマが並べられ皆さんの食卓を彩ってくれるでしょう!

サンマ塩焼き
「豊海おさかなミュージアム」食育セミナーで以前調理した、サンマの塩焼き

 かつて北海道根室の花咲漁港の市場食堂では、サンマの塩焼き定食は普通に2匹並べられていました。筆者は当時、仕事で現地に滞在し、サンマの調査をしていました。調査後に朝ご飯を食べるのは楽しみであり、何よりも鮮度の良いサンマを労働の後に食べることができたので満腹感と満足感で充実した日々を過ごしました。懐かしい思い出の一つです。

サンマイラスト
イラスト:N.HIKARI
旬のお魚かわら版

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