旬のお魚かわら版

No.62 マダイ

2023.04.21

旬のお魚かわら版 No.62(2023年3月31日)


 今回はこの時期「桜鯛」、秋には「紅葉鯛」とも呼ばれていて親しまれている「マダイ」です。
 マダイはスズキ目タイ科に属している魚ですが、正式名称(標準和名)で「サクラダイ」と呼ばれる魚もいます。 この「サクラダイ」はスズキ目ハナダイ科の魚でマダイの仲間ではありません。両者の写真を下に並べましたが、姿も色もあまり似ていませんね。

マダイ
マダイ
生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)
サクラダイ
サクラダイ

 さてマダイですが、北海道から沖縄までの列島沿岸域から沖合の全域に棲んでいます。寿命は10年以上とされていて、成熟年齢は雌雄とも3歳位から始まり、4歳では殆どの個体が成熟し、産卵に加わります。底曳網、定置網、釣り・延縄、刺し網、ごち網、まき網等主要な漁法全てで漁獲されます。

 マダイは天然物と養殖物があります。今では、天然物と養殖物の生産量には3~4倍位の差があり、養殖物優位は変わりません。

 天然物と養殖物の分かりやすい違いの見分けかたですが、まず色です。天然物がきれいな薄いピンク色、比べて養殖物は全体にやや黒っぽさが混じっています。マダイは元々水深30~200mくらいまでの深場に生息する魚ですが、養殖生簀では水深が浅いため 養殖マダイは日焼けして黒っぽくなると言われます。 尾びれも天然物は直線的で後縁が黒く、養殖物は養殖過程でスレが生じたりするのでやや丸みがあります。また全体的にみると養殖物は丸みを帯びていて、総じて肉厚といえます。

 マダイは天然・養殖とも専門店では姿売りしているので、機会があったら比べてみてください。

マダイ生産量
資料:農水省「漁業・養殖業生産統計年報」

 上のグラフは昭和31(1956)年以降のマダイ(天然・養殖)の生産量の推移です。

 マダイは天然物より養殖物が供給に占める割合が高く、こうした傾向は昭和の後期から変わっておらず、現在でもその差はかなりあります。

 天然のマダイはこの30年間は1.5万トン±1万トンの幅の範囲にあって、低位安定といったところです。一時は養殖物が小売マーケットを席巻していた記憶がありますが、最近は天然のマダイを見かける機会も多いように感じています。特に2022年は前年以上に好調で、今年も九州地区では好漁の話も聞かれます。ですので、少しづつではありますが漁獲は回復しているものと思われます。

 昔からお祝い事等のおめでたい席の魚の定番は「マダイ」でした。今ではかなり少なくなりましたが、かつては、こうした席に輸入物(豪州やニュージーランド産のマダイ)も 盛んに使用され、多い時は1万トンを超える輸入量がありました。

マダイ入荷量
資料:東京都中央卸売市場・市場統計情報(年報)

 さて、マダイは日本近海の各地で季節を問わず漁獲されています。養殖マダイも季節を問わず周年出回っているので、見る機会が多いのですが、天然マダイについては、上のグラフのとおり春から初夏にかけての3~5月が入荷のピークで、価格もその頃がボトムとなっています。

 また、天然マダイが年間を通じてどの地方から入荷しているのかをみると、2022年は九州地区7県(沖縄県からは入荷なし)から約1200トンで総入荷量2544トンの47%を占めています。

 ですから、「桜鯛」を購入するにはやはり桜が満開になり、桜前線が徐々に北上していく頃がベストといえるかもしれません。桜の開花時期も年々早くなり、かつては東北・北海道はGW前からGWにかけてと言われていましたが、今や東北地方ではGW前に満開になりそうな気配です。

 一方、養殖マダイは、天然同様3~5月に入荷のピークがありますが、年末にもピークがみられます。養殖魚の特性(出荷時期が調整可能)を良く表しているのが分かります。 同時に入荷量・価格とも天然に比べると月ごとの差が少ないのも特徴です。 天然魚、養殖魚夫々の特性を理解しながらのマダイ観察も面白いかもしれません。

 ふるさと納税の返礼品としてもマダイ(鮮魚ボックス等)はかなり使われているところをみると、やはり日本人はマダイについてある種の感情を抱いているのかも知れません。今日の新聞の朝刊の記事にも「マダイの塩焼きと赤飯」についてのお話があり、塩焼きの際に振る化粧塩、特にヒレに振った焼けた塩を赤飯にかけると、香ばしさもあり、大変美味しいということが書いてありました。

 マダイは刺身を始め、焼いて、煮て、蒸してと和洋如何様にもアレンジできます。私も日曜日に来客があったので、急遽アクアパッツァを作りました。もちろん、マダイ入りの。

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