旬のお魚かわら版
No.47 スルメイカ
2022.10.18旬のお魚かわら版 No.47(2022年8月15日)
今回は夏漁真っ最中の「スルメイカ」についてです。昨年もスルメイカについては瓦版で書きましたが、今の季節のスルメイカは、「夏イカ」と呼ばれていて、秋イカに比べると身が薄く柔らかいのが特長です。
下の写真は、夏場に盛漁期を迎える山形県庄内浜水揚げのスルメイカです。とても美味しそうですね!
さて、イカ類(スルメイカ、ヤリイカ、ケンサキイカ、コウイカ等)は多くが1年の寿命です。寿命が1年の魚介類は、研究機関で水産資源の増減を予報する担当者にとって非常に厄介な存在です。産卵時の海の環境(海水温など)は稚魚(稚イカ)の生き残りに影響しますが、一生に1回しか産卵しない魚介類の場合は特にその影響が大きく、資源予報を左右します。
例えば親が沢山いて沢山卵を産んでも、産卵後の海の環境が悪い場合には稚魚の多くが生き残れず資源が減少し、逆に生育環境が良かった場合は爆発的に増えたりするからです。
また前回では、イカは貝類に近い仲間で、その祖先は貝殻を持っていたという話を書きましたが、今回は心臓の話を。
普通は、心臓といえば1つとなりますが、イカの心臓は3つあります。イカには本来の心臓のほか、左右一対ある鰓(えら)の根元にも1つづつ心臓が付いています。それらは鰓心臓と呼ばれます。
3つあるからには、それぞれ何らかの役目があるはずです。その役割は、活発な運動をするイカにとって、鰓でガス交換するために、鰓に能率よく血液を送る必要があるからといわれています。
因みに同じ頭足類のタコにもイカ同様3つの心臓があります。
上のグラフは昭和年代からのスルメイカの年別生産量(1956~2021年)の推移です。
約70年前からの統計ですが、1960年代後半にピークがありますが、その前後は増加するのも減少するのも急激にみえます。過去に60万トンを超えたのは1968年の668,364トン1回のみですが、生産量の割には上げ幅、下げ幅も20万トン前後の年が5回程あり、大きいのが分かります。
因みに1963年から1964年にかけては過去最大の35万トン程度(590,647トン→238,290トン)の落ち込みがみられました。このようにスルメイカは20世紀は生産量の増減幅がかなり大きかったのです。
平成年代に入ってからは40万トンを超えたのが1年のみで、総じて右肩下がりが続き、特に近年の過去6年は10万トンを下回るなど極めて低調な漁獲に終わっているのはよくご存じだと思います。
上のグラフは東京都中央卸売市場での生鮮スルメイカの月別入荷状況です。
20年前は初漁期いわゆる夏イカ漁と呼ばれている時期の入荷が多く、年間を通じても7月頃の入荷が最も多かったのです。もちろん絶対量も現在の倍以上の入荷があったのが分かります。
最近は以前に比べると後半型(秋の入荷)に変わっており、海の温暖化の影響もあるのかもしれません。今年も今のところ過去最低だった昨年よりは少し水揚げは多いのですが、低水準の中での状況なので、まだ爆発的に増加しているわけではありません。
ただ、石巻漁港では小型底引網漁業で前年の4倍ほどの小型スルメイカが漁獲されました。現地では、9月から沖合底引網漁業が再開されるのですが、この水揚げに大きな期待をかけているそうです。近年の傾向では、上図にもあるように真夏が過ぎて秋に入荷のピークがみられます。
いつどこでも買うことが出来る大衆魚は食卓には欠かせないものです。「夏イカ」を味わいつつ、9月以降はエサを食べてさらに身も肉厚になる秋のスルメイカも堪能したいものですね!
旬のお魚かわら版
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