旬のお魚かわら版
No.87 ソウハチ
2024.04.15旬のお魚かわら版 No.87(2024年4月15日)
今回は前回の「ホッケ」以上に加工品としての需要が多い「ソウハチ」、いわゆる宗八ガレイです。
ソウハチはカレイ目カレイ科ソウハチ属の魚です。
カレイ類は何しろ種類が多く、この「お魚かわら版」でも度々取り上げてきたとおり、日常的にいろいろな種類が食べられている人気のある魚です。
ただ、ソウハチは北海道・東北・日本海側の人にとっては比較的馴染みがありますが、関東以南の人には知名度が低いかもしれません。それは主に加工品(干物)で食べられることが多いからです。一般的にカレイ類は煮たり、焼いたり、揚げたりして食べることが多いのですが、ソウハチには独特の風味があるので鮮魚で調理するよりも干物で食べることが魚の特性に合った賢い食べ方でもあるのです。
ソウハチは、カムチャッカ半島西岸、北千島から常磐沖にかけての太平洋沿岸、オホーツク海の北海道沿岸および日本海のほぼ全沿岸に加え、渤海・黄海にも分布し、水深100~200mの泥底に生息しています。
分布域が広いので地方名も多く、北海道、東北、関東ではソウハチですが、西日本、特に山陰地方ではエテガレイと呼ばれています。また日本海側の一部ではシロガレイ、他の地方でもキツネガレイやカラスガレイなどさまざまな呼ばれ方をしています。
また、ソウハチには、日本海南西部系群と北海道北部系群という2つのグループがあります。寿命は日本海南西部系群では雌のほうが長く、雌が7歳、雄が5歳の個体が確認されています。成熟は雄が2歳から、雌は3歳からで雌は成熟開始年齢が遅い分寿命が長いことになります。北海道北部系群の寿命は雄雌とも7歳以上とされています。
上のグラフは、国内のソウハチの漁獲の多くを占める北海道北部系群と日本海南西部系群の年間漁獲量の推移です。
北海道北部系群は主に沖合底びき網漁業(沖底)と沿岸刺網漁業で漁獲され、日本海南西部系群は1そう引きまたは2そう引きの沖底と小型底びき網漁業の漁獲されています。
日本海南西部系群は2000年前後に漁獲のピークがみられますがその後は増減を繰り返しながら、現在の漁獲量は2,000~3,000トンの枠内で推移しています。北海道北部系群は一時1,000トンを割った年(2014年)もありましたが、その後はやや回復基調にあります。
また、従来は日本海南西部系群の漁獲量が北海道北部系群を上回っていましたが、近年では北海道北部系群の方が上回ることもあります。もっとも、北海道北部と言っても北海道西方沖合の漁場は日本海に属しているので、ソウハチは基本的に日本海での漁獲が主体です。
北海道北部系群については、近年(この15年位)は沖合底引網漁業の漁獲が沿岸漁業の漁獲を大きく上回っており、現在では沿岸漁業での漁獲量は1,000トンを下回る3ケタ台前半に留まっています。
北海道北部系群のソウハチ漁獲と需要との関係では、
「〇沖底の主要な魚種であるスケトウダラ、ホッケ、マダラの漁獲動向、市場の需要や魚価の動向に
大きく左右され、以前はソウハチ狙いの操業は少なかった。
〇2016~2019年にかけては海外の販路の拡大もあり、ソウハチ狙いの漁船が増え、また以前は自主
規制していた23㎝以下の小型サイズが多く漁獲されるようになった。
〇しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により海外需要の減少がみられ、2019年の漁期後半以降
魚価の低下もあり、ソウハチ狙いの積極的な操業がみられていない。」
という動向が、グラフ出典の資料に書かれています。
上の二つのグラフは、ソウハチの主要な水揚港のこの10年間の水揚量と産地価格の推移です。
北海道では小樽港、山陰では香住港(兵庫県)での水揚げが多いのですが、何れも沖合底引網漁業が主力の漁港です。北海道では15年前位までは沿岸漁業(主に刺網)の水揚量も沖底と拮抗していましたが、その後は沖底主体の水揚げに大きく差をつけられています。
産地価格は、北海道の稚内・小樽と、本州の新潟・香住とでは価格差が大きいのが特徴。この差は、漁獲量の水揚量の多寡、サイズ差、品質差、漁獲時期、加工需要の有無等の要因が考えられます。
さて、筆者のソウハチの食体験は、釧路の副港市場近くにあり、現在「シャケ番屋」となっている当時「番屋」と呼ばれていたと記憶している居酒屋で食べことがあります。確かお店で購入した魚が食べられるシステムになっていて、好きな魚介類を選んで食べたと記憶しています。カレイ独特の香りが漂う中でソウハチを肴にしてのひと時が思い出されます。
旬のお魚かわら版
「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!