旬のお魚かわら版

No.72 カツオ

2023.09.5

旬のお魚かわら版 No.72(2023年8月31日)


 今回は東北地方を主体に旧盆から秋にかけて旬を迎える「カツオ」です。

 カツオは春から初夏のいわゆる初カツオであったり、上りカツオの時期に取り上げられることが多い魚類ですが、東北地方では以前から脂ののった戻り(下り)カツオの時期のカツオを好んで食していました。ですから、いわゆる春から初夏のカツオに対しては深い思い入れは無いように思います。あの身色も赤く、味もサッパリした感触の上りカツオには、食指が動かないのかも知れません。

 さてカツオは、世界中で多くの国々が太平洋、インド洋、大西洋と広い海域でマグロ類同様に漁獲をしています。

 カツオは海洋を広域回遊しますので、マグロ類と同じく、海域ごとに国際的な漁業管理機関が設置されています。太平洋では、中西部(日本の多くの漁船はこの海域で操業しています)と東部の2つの海域に国際機関が設置され、関係国によりカツオの資源評価や漁業管理などについて議論が行われています。その中で最も関連の深い中西部太平洋のカツオ資源は、資源水準は高いものの、その動向は減少傾向と評価されています。

カツオ漁獲量
資料:農水省「漁業・養殖業生産統計年報」

 上のグラフは1956年から2022年までの日本のカツオ漁獲量の推移です。カツオは、主に曳縄(ひきなわ)、一本釣り、まき網により漁獲されます。一本釣りとまき網には遠洋漁業もあり冷凍状態で水揚げされますので、グラフの数値は生鮮と冷凍の合計値となります。図でも表されているように、1980年代中半から後半にかけて漁獲のピークがあり、その後は減少傾向になっています。最も漁獲が多かった1984年は44.6万トンでしたが、現在ではその半分以下の17.5万トン以下に落ちています。

 ですから、国際機関により資源水準が高いと評価されても、何か実感としては腑に落ちないといったところでしょうか。ただ、国際機関による資源管理方策は講じられており、禁漁期間の設定や、操業日数の制限などが行われているので、漁獲量の回復を期待したいところですね。

カツオ入荷
出典:(一社)漁業情報サービスセンター「おさかな広場」より作成

 上のグラフは東京都中央卸売市場における近年のカツオの年別・月別入荷状況の推移(ただし、2023年8月は28日までのデータ)です。東京(消費地市場)では、ほぼ例外なく5~7月に入荷のピークがみられます。

 そしてその頃に価格も最も下限に近付きます。その後は入荷が急減することもあり価格は、じりじりと上昇傾向となり、1年のサイクルを終えます。ただ、漁にもよりますが「戻りカツオ」も現在ではかなり浸透・定着していて9月前半頃までは入荷もあり、市中に出回りますが、それ以降は秋の魚種と交替し専門店やスーパー等でもあまり見ることはできません。旬が比較的はっきりしているカツオもかつては消費地での入荷は上半期に集中していて真夏以降は入荷が急減していました。その意味で限られていた「戻りカツオ」の評価が定着したのだと思います。

気仙沼カツオ
出典:(一社)漁業情報サービスセンター「おさかな広場」より作成

 上のグラフは、生鮮カツオの水揚げで26年日本一を誇る気仙沼漁港での水揚げ状況です(ただし、まき網漁船の水揚げは含みません。また2023年8月は28日までのデータを集計で暫定的なものです)。このデータをみると、カツオの来遊が早い年と遅い年があるため、水揚のピークが年によりかなり違いがみられます。早い年は6月(稀ではありますが)、遅い年では8月で通常は7月がピークになります。

 もちろん犬吠埼沖を流れている黒潮前線を越えてくる若いカツオの群れの来遊量の多寡や その年の海況条件などにも左右されるために、そのピークを予測するにはなかなか難しい判断を関係者は要求されます。

 ただ価格は産地ならではの動きをします。7月から8月にかけてはこの6年をみても必ず上昇しています。もちろん水揚げが減少して価格が 上昇するだけでなく、水揚げが増加している2019年や2020年でも価格は上昇しています。

 この時期、地方は旧盆に入り帰省客等で人口も増加しそれに伴い食需要も伸びます。大都会とは違った需要の動きがカツオの価格にも反映されるのでしょうね!


 数年前にはアニサキス騒動もあり、鮮魚で売られているカツオも解凍ものが多かったのですが、今は解凍ものも少なくなってきました。柵にしろお造りにしろ鮮度管理をしっかり施した美味しいカツオを食べたいものですよね。

 カツオといえばもう随分経ちますが、2014年6月に豊海おさかなミュージアムのイベントとして「旬のおさかな学校-カツオ」を開催しました。近海カツオ一本釣り漁船の母港として有名な高知県黒潮町から招いた元漁師のMさんたちの指導の下、房総勝浦で水揚げされたカツオを解体処理し、黒潮町の藁を用いてカツオを焼き、タタキにして子供たちや大人60数名で供食したことを思い出します。

 タタキのたれもMさん自前のたれで今まで食べたどんなタタキより美味しかったことを思い出します。子供が同居していた頃、刺身やタタキに飽きたときは、しばしば手捏ね寿司を造ったこともあります。刺身やタタキも薬味を変えたりすれば、また違う1品になります。また多く買いすぎた時は漬けにして食べるのも良しです。台風が通過した後、漁に勢いがなくなりましたが、また復活もあるでしょうからまだ間に合います。夫々の味の創作カツオ料理にチャレンジもあり、です。

カツオたたき
カツオイラスト
イラスト:N.HIKARI
旬のお魚かわら版

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「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!