旬のお魚かわら版

No.86 ホッケ

2024.03.29

旬のお魚かわら版 No.86(2024年3月29日)


 今回は、どちらかと言えば開き干しでお目にかかることが多い「ホッケ」です。

 ホッケはスズキ目アイナメ科に属していて近縁種にキタノホッケ(通称シマボッケ)がいます。

 ホッケの名前は広く知られていますが、まとまった水揚げは北海道の漁港に集中していることが多く、刺身などで食べる機会は産地以外では殆どないため、意外に鮮魚としては知名度や印象が低い魚かもしれません。

ホッケ
ホッケ
出典:生鮮の素+さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 上の写真でも分かるように、ホッケの背びれは尾びれの近くまで伸び、間に深い切れ込みがないのが特徴です。

 またホッケはアイナメ科の魚であり、下の写真のアイナメとは体の色が違うので区別できるのですが、色が黒っぽいアイナメだとホッケとの見わけが難しいこともあります。

アイナメ
アイナメ
出典:生鮮の素+さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 さてホッケは北海道沿岸全域で獲れる魚ですが、北海道以南では青森県から山口県までの日本海沿岸、青森県から熊野灘の太平洋沿岸に生息しています。また、朝鮮半島東岸中部から沿海州を経てサハリン、オホーツク海南部、千島列島にも分布しています

 分布や産卵海域などの違いから、ホッケには複数のグループ(系群)があると言われています。主要なグループである道北系群の生態を見ると、稚魚・幼魚期に日本海、サハリン、オホーツク海の表層で生活し、満1歳となる秋には、底生生活に移り、着底後大部分は日本海に移動しますが、一部はオホーツクに残って1~2年を過ごします。越冬後の魚は「春ボッケ」として表層に浮上し、密集して索餌(さくじ)行動をします。また岩礁域に定着したものを「根(ね)ボッケ」といいます。ホッケの寿命は8~9歳ですが、成熟後(3歳以降)は成長は頭打ちになり、年齢による体長の違いを見極めるのは難しいといわれています。呼び名の略称で体長の大きさを表すと、青(未成魚で4~16㎝)<ローソク(未成魚で18~22㎝)<春<根、の順になります。

ホッケ漁獲量
出典:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」

 上のグラフは1964~2022年の国内ホッケ漁獲量の推移です。

 ホッケの漁獲量の増減は主要グループである道北系群の漁獲の多寡に大きく左右されます。道北系群の漁獲量は、1980年台前半に10万トン前後から3万トン前後に減少しましたが、1990年代前半には10万トン台まで回復しました。その後も増加傾向を辿り、1998年には20万トンを超えました。2000年代は9.6万~15.1万で推移しましたが、2010年以降急減しました。2015-2017年は1.6万~1.7万トンと1985年以降で最も少ない状況でしたが、2018年からは増加に転じて2.7万トンとなり、2019年以降は3万トン前後で推移していて、若干上向いています。しかし近年では2013年に5万トン超えでしたので、資源水準としては依然低い状態だと言ってよいと思います。

ホッケ漁獲割合
出典:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」

 上のグラフは2022年のホッケ漁獲量の都道府県別割合で、総漁獲量35,283トンの96%を北海道が占めます。ですから、国産ホッケのほとんどは北海道産ということになります。

 冒頭でも書きましたが、ホッケは主産地である北海道を別にすれば、鮮度落ちが速いということもあって本州以南では鮮魚としてはあまり見ることができません。

 また、ホッケを買ったり、食べるたりすることができるのは、スーパーの店頭か、居酒屋や定食屋でのメニューでしょうか。ただ、このホッケの多くはキタノホッケ=シマホッケ(チシマボッケとも)で主にアメリカ(アラスカ産)やロシアから輸入されています。これはこれで脂が乗っているものは安い割には美味しいものです。チェーン店の居酒屋や定食屋では定番になっていますから、支持されているのでしょう。

 ホッケは、戦後の食糧難のときに配給品として一時、国内に出回ったそうですが、まだ鮮度管理などという概念はとぼしく、当時これを日常的に食べた記憶のある人にとっては「またホッケか!」の記憶が残り、忌避する人もいたようです。

 筆者のホッケ初体験はフライです。昭和30年代だったと思いますが、現在はほとんど見なくなった「乾物屋」が当時住んでいた集落に1軒あり、そこで買ったホッケフライが最初と記憶しています。当時コロッケはありましたが魚のフライは初めての食体験で、「フライは美味しい」ものだと身体が記憶し、今でもフライ物は大好物の一つです。

 また、以前釧路に出張した折、釧路で一番有名な炉端焼き屋で「羅臼ホッケ」と書かれたメニューを目にしたので当然頼むことになりましたが、出てきたのはかなり大きい開きホッケで、それを一匹食べると他の料理を注文するのに躊躇するほどの巨大さに圧倒されたのでした。

 平成年代の初頭から半ばにかけて安定して15万トン前後の漁獲があった時代は、すり身を始めとして様々な加工品が作られていました。

 まもなく北海道の羅臼ではホッケ刺し網漁が始まります。今は資源が減少気味ですが、復活の日を待ちながら食を繋いでいけたらと思います。

ホッケイラスト
イラスト:N.HIKARI
旬のお魚かわら版

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