旬のお魚かわら版

No.80 コノシロ

2024.01.5

旬のお魚かわら版 No.80(2023年12月28日)


 今年最後の瓦版になりますが、今回は「コノシロ」です。

 関東地方を中心としたおせち料理の定番「コハダの粟漬け」(一番下の写真)でお馴染みの魚です。おせちの重箱に詰められ、粟の黄色が色鮮やかに存在を主張しているのは、正月の風物詩でもあります。

 コノシロはニシン目ニシン科に属していて、仲間にはニシンを始め、マイワシなどがいます。北海道以南の日本の沿岸域、東シナ海、南シナ海と東南アジアにも拡がっています。コノシロはマイワシやニシンのように大回遊をせず、内湾や汽水域に生息しています。形態的な特徴としては、背びれの最後の1本(軟条)が長く伸びています。

コノシロ

 寿命は3年程度といわれており、内湾域で産卵をします。数か月程経つと新子と呼ばれる幼魚が漁獲の対象となり、漁港にも水揚げされるようになります。

 ところでコノシロは出世魚の一つです。豊海おさかなミュージアムの12月の特別展示「お正月と海の幸」でも紹介されていますが、新子→コハダ→なかずみ→コノシロと成長に伴い、名称も変化していきます。江戸以前の武家社会では幼年時代、青年時代、壮年時代とともに名前が変わります。竹千代→元信→元康→家康はまだ記憶に新しいと思います。出世魚といわれるくらいですから縁起の良い魚でもあります。

 漢字では一般的に魚偏に冬と書きますが、魚偏に祭と書く場合もあります。兵庫県姫路のお祭りには、「鰶のすし」がつきものだそうです。

コノシロ漁獲量
出典:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」

 上のグラフはコノシロの漁業生産量の推移(1995~2022年)です。1995年以前のデータがありませんがグラフからみる限りでは、1995年にピークがみられます。しかし、下のグラフ(東京都中央卸売市場の取扱状況)の1972年の取扱量が約6,000トンですから当時、全国の生産量は上図の1995年の23,707トンを上回っていたものとみられます。

 しかし、2008(平成20)年頃から漁獲はかなり少なくなり、その後も緩やかに減少し現在もその傾向は続いています。コノシロ資源についての状況が公表されてないのではっきりとは言えませんが、コノシロを漁獲対象にする漁船が少なくなったり、取扱業者が少なくなっていることなども、生産量の減少に影響を与えている可能性もあります。もちろん資源それ自体が減少していることも十分考えられます。

コノシロ取扱量
出典:東京都中央卸売市場・市場統計情報(年報)

 上のグラフは直近から10年毎にみた東京都中央卸売市場のコノシロ入荷データです。現在入荷量は年間400トンを割っている状況ですが、1972年の約6,000トンに比べると1割にも達していません。それほど大きく減少しているということになります。何故なんでしょうか?

 コノシロ(市場を始め寿司業界では通常コハダと呼ぶ)を寿司の種としてみかけるか、これからお節に「コハダの粟漬け」として登場し食卓を賑わせてくれるかの2択が多いのではないでしょうか!もちろん「コハダの酢締め」体験のある方もいるとは思いますが。これには寿司業界の変化があったのです。

 昭和33(1958)年に大阪を発祥の地として回転寿司が誕生しました。その後回転寿司は全国に拡大し、当初の100円均一を売りに何回かのブームを巻き起こしながら拡がり、今では回転寿司チェーン大手4社で業界全体の売上げの7割を占めると言われています。

 一方、従来(戦後)からあった町の寿司店は、回転寿司ブームに押されて大きく減少の一途を辿ってきました。町の寿司店が減少しているのは皆さんも日常的に感じていると思います。もっとも回転寿司チェーンも今では1皿100円均一など低価格品のみでなく、地魚、「産地直送」やブランド養殖魚 などを取り入れ、魚介類以外にもデザート、フルーツ、麺類、揚げ物等なんでもござれの様相を呈して幅広い層の客を取り込み、価格帯でもそれぞれ変化が出てきています。

 しかし、こと「光り物」についてはアジ、サバ、イワシ等は見かけますが、コノシロ=コハダは回転寿司では見かけることは少ないのではないでしょうか? かつて、寿司はまず玉子から始まり、「光り物といえばコハダ」で、「光り物はコハダから」という言葉もあり、 それが「通の食べ方」として認知されていた?ようにも思います。

 そして何よりも一般に光り物は鮮度落ちが速く、酢締めにして提供するのが当たり前で、その出来不出来が寿司職人の技=技術に依拠していて、寿司屋の格付けなどに結び付けられていました。町の寿司屋には今でもコハダがない寿司屋はないはずです。

 そうした寿司業態の変化により コハダの消費は回転寿司の普及・拡大、町の寿司屋の減少とともに大きく減少して来たのが上のグラフに表れているのだと思います。消費=利用が増えれば生産者の漁獲対象として魚をみる眼も変化していきます。

 最近の業界紙に「低利用コノシロ、スープに」の見出しで、コノシロを使った食材が紹介されていました。「スパイス薫るコノシロボールカレー」。いかにも子供たちが好きそうなネーミングです。今まで粟漬けや寿司種などの酢漬けとしての利用以外、世間には余り知られていないのが実態です。出世魚コノシロについて冒頭で述べましたが、コノシロは出世する(成長する)たびに価格的には下がります。これを覆す程の需要がでて、今までの常識を変え「コノシロボールカレー」がブームを呼び起こす といいですね!


今年も1年間有難うございました。皆様、良いお年をお迎えください!

コハダ粟づけ
こはだの粟づけ(東京都) 出典:農林水産省HP「うちの郷土料理」
コノシロイラスト
イラスト:N.HIKARI
旬のお魚かわら版

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「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!

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