旬のお魚かわら版
No.34 ノリ
2022.04.7旬のお魚かわら版 No.34(2022年2月1日)
今回は、もうすぐ一斉に巷に「恵方巻」のポスター等が目に付くようになる「ノリ」を取りあげました。
ノリは通常10月に入るとノリ網が張られ、12月頃から収穫が始まり、板ノリ加工過程を経て新ノリが街に出始めます。つまり寒い時期になるとノリ作りが始まり、製品化され、皆さんの口に入るというわけです。 下の写真は、ノリ養殖の網から成長した収穫前のノリです。
さて、豊海おさかなミュージアムでは昨日まで特別展示「海藻の迷宮」を開催していました。その解説ノートにも書かれていますが、日本周辺の海には1500種類ほどの様々な海藻類が生息しています。
海藻は紅藻、褐藻、緑藻の3つのグループに分けられ、私たちが板海苔として食べているノリは、紅藻の中のアマノリ類に分類されます。かつてはアマノリ類のなかでもアサクサノリという種類が養殖されていましたが、現代のノリ養殖ではほとんどがスサビノリという種類が利用されています。海藻は近年でも新種が発見されていて、現在日本産のアマノリ類は31種とされています。
ノリ養殖が始まったのは江戸中期(1710年頃)の東京湾とされており、和紙の技術を応用し板海苔に加工され、「浅草海苔」として江戸の名物になったそうです。
下のグラフは養殖ノリ類の年別生産量の推移ですが、1994年をピークに年々減っています。
丁度その頃から輸入が始まり、今では韓国を始め中国からも入っています。2018年度はグラフにもあるように国内が不作に見舞われ、供給も心配されましたが輸入品が補完した格好になりました。
上のグラフは、養殖ノリ類の都道府県別の生産量の割合ですが、御存知のように長らく佐賀県がトップの座に君臨しています。
街の小売店でも有明(海)一番や初摘み(一番摘み)有明というようなデザインを見かけたことがあると思います。一般にノリは最も品質が優れているのは最初に摘んだものといわれ、二番摘み以降は徐々に品質は落ちていくといわれています。
上の写真は新ノリの検査風景です。板海苔10枚を重ね半分に折った状態を1帖(じょう)という単位で呼び、ノリ漁師は、写真のとおり10帖(100枚)を結束した状態で、所属する漁業協同組合に出荷します。
検査では、数多くの評価基準に基づき、格付けと等級分けがなされます。そのうちの一つの肉眼検査では、色、つや、形が重視されます。素人では、色くらいしか判断できませんが、食べて美味い不味いくらいでしょうか?
検査されたノリは、各県の漁業協同組合の連合会(漁連)などが行う、共販と呼ばれる入札会に出品され、それに参加する入札指定業者(専門商社など)が検査結果を踏まえて買い付けを行います。買い付けした業者は、焼きや味付けなどの加工により様々な商品化を行い、各方面に販売しています。
ノリの実際の需要は80億枚と言われ、そのうち最大なのが総菜のおにぎりで大手コンビニで20億枚、他には少量安定のギフト5億枚、コンビニ、ギフト以下の品質の一般業務・家庭用30億枚、輸入韓国ノリ10億枚でその他中国4億枚始め国内繰り越し分で15億枚を補っているといわれています。因みに令和2年の板ノリ生産量は75億枚でした。
ノリの生産時期は冬場ということで、操業条件的には一番過酷な時期に当たります。ノリ養殖の経営体は年々減少しており、操業条件も厳しく、次世代の養成も厳しいといわれています。 ただ、筆者も以前熊本のノリ業者さんにお話を伺ったことがありますが、皆さん団結心が強く誇り高い漁師さんでした。これからも美味しいノリが持続的に生産=消費できるように応援したいものです。
因みに2月6日は海苔の日です。その由来は、702(大宝2)年1月1日(旧暦)、新暦の2月6日に大宝律令が施行され、海苔が産地諸国の名産として年貢に指定されたことによります。この出来事を元に、全国海苔貝類漁業協同組合連合会が、1966(昭和41)年に記念日として制定したのだそうです。
さて、前号のアンコウの日は11月23日となっていますが、月日を足すと7になります。そうですアンコウの七つ道具七に由来したものです。
旬のお魚かわら版
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