旬のお魚かわら版

No.33 アンコウ

2022.04.7

旬のお魚かわら版 No.33(2022年1月15日)


 今回は、マダラ同様冬の鍋の定番の素材ともいえる「アンコウ」についてです。
 冬の鍋の定番といっても意外に食べたことがない人の方が多いかもしれません。しかしそのグロテスクな顔貌と鋭い歯や吊るし切りなどのシーンは、しばしばメディアに取り挙げられるので知名度は高いのです。
 学術的な分類では、アンコウ目アンコウ亜目アンコウ科の魚で、食用種としてはキアンコウやアンコウなどがあります。 偶然にも先日、NHKの「ダーウィンが来た!」でアンコウが取り挙げられており、キアンコウが駿河湾の海底で獲物を捕るシーンなどを驚きの眼でみた人も多かったのではないでしょうか?

アンコウ
出典:山口県HPより(下関漁港沖合底びき網漁業ブランド化協議会提供)

 一般的にアンコウとして出回っているのはキアンコウ(ホンアンコウ)のほうでアンコウ(クツアンコウ)より多いといわれ、味も良いとされています。

 アンコウはどちらかといえば深海魚になることから、主に底曳網で漁獲されますが、地域によっては刺網やはえ縄などでも漁獲されています。大きいものでアンコウは全長1m、キアンコウは全長1.5mになります。また、アンコウは捨てる部位がほとんどなく、食用となる肝、とも(鰭)、柳身(ほほ肉、身肉)、ぬの(卵巣)、水袋(胃袋)、鰓(えら)、皮の七つの部位は、アンコウの七つ道具と呼ばれます。
 食用とならない骨とあご、眼球以外は余すところなく食べられる歩留まりの高い魚でもあります。高級な白身魚のたとえとして「西のフグ、東のアンコウ」とよく言われますが、漁獲量でいえば西のアンコウも水揚げがかなり多いのです。

あんこうの水揚量
出典:山口県HPより(山口県以東機船底びき網漁業協同組合、下関漁港沖合底びき網漁業ブランド化協議会提供)

 関東に住んでいるとアンコウの産地といえば茨城県や青森県を連想しやすいですが、上図にあるように国内では山口県(下関主体)での水揚げが最も多いのです。
 そのようなこともあって、下関では従来の「フク」だけでなく、アンコウの普及にも力を入れています。また市を始め関係者は下関漁港沖合底びき網漁業ブランド化協議会を立ち上げ、アンコウ等の普及に取り組んでいます。

アンコウの吊るし切り
アンコウの吊るし切りの模様
出典:(一社)大洗観光協会「よかっぺ大洗」HP

 上の写真はアンコウの吊るし切りの模様です。

 アンコウは、巨体であることに加え、まな板の上では切りにくいことから、吊るし切りにするようになったといわれています。吊るし切りでは、切りやすいように口から多くの水を注いで魚体を安定させます。そのため、右側の写真のとおり、下にバケツを置いていますね。
 こうした吊るし切りイベントは各地で行われていますが、特に全国の関係者による「全国あんこうサミット」が2014年から「あんこうどぶ汁」の発祥の地北茨城市で毎年開催されています。2014年の参加団体は、茨城県内は北茨城市、日立市と大洗町、県外は青森県風間浦村、山形県鶴岡市、宮城県石巻市、同県加美町、福島県いわき市、神奈川県小田原市、山口県下関市から来た各団体。


 さて、街では1匹で売っていることはまずなく、産地でも1匹で買うときは事前に注文するそうです。ですから普段はパックに肝、たれ付きで購入することが可能です。どうしても解体にトライアルしてみたい方は注文型になると思います。そして解体後の処理如何によってその後の味に差が出るそうです。
 臭みをとるコツは、お湯の中に入れて表面が白くなるくらい入れ、それを冷水にとり、ぬめりと血合いを取り除くと鍋にしたときに各段に味が良くなると、産地の人は話してました。これはパックで買った時でも同じだそうです。
是非試してみてください。


 筆者が産地で最初にアンコウ鍋を食べたのは茨城県の平潟の旅館でした。30年以上前になりますが当時茨城県水産試験場に在職していたNさんに紹介してもらった旅館で食べたいわゆるみそ仕立てのどぶ汁が最初でした。その他には醤油仕立てのものもありますが、こちらはどぶ汁以前に神田須田町にあるアンコウ専門店(?)で食べたことがあります。機会があればまだ時期なので是非色々チャレンジしてみてください。

 11月23日はアンコウの日だそうです。何故11月23日なのでしょうか?

最初の方にヒントが隠されています!!

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