旬のお魚かわら版

No.29 シシャモ

2022.02.21

旬のお魚かわら版 No.29(2021年11月15日)


 今回は、北海道で漁期終盤を迎えている「シシャモ」についてです。
 かつては子持ちシシャモといえば北海道産のシシャモではなく、大西洋産の輸入品のことを称していました。大西洋産のシシャモは、キュウリウオ目キュウリウオ科カラフトシシャモ属で、和名がカラフトシシャモ、英名がカペリン、キャペリンで今では、小売店での表示もシシャモではなく、カラフトシシャモもしくはカペリン等となっています。一方、本シシャモともいわれる国産のシシャモはキュウリウオ目キュウリウオ科シシャモ属に属しており日本固有の魚です。

シシャモ
出典:釧路市漁業協同組合HP

 国産といっても漁業の対象になっているのは北海道の太平洋沿岸のみで、漁期も10月初めから11月半ばくらいまでで非常に短い期間なのです。現地では秋から冬の風物詩としてこの季節になるとメディアでも取り挙げられます。その短い期間に産卵のために川に戻ってくる途中の沿岸で漁獲されます。その意味では、サケと同様川から海、そしてまた川に戻って産卵するサイクルを繰り返します。

ししゃもこぎ網
出典:釧路市漁業協同組合HP

 漁法は上図にありますが、ししゃもこぎ網という底曳網の一種になります。何となく底曳網であることが分かりますね!
 ところでシシャモは「柳葉魚」と書きますが、その由来は次のようにいわれています。「その昔、北海道がまだ蝦夷と呼ばれていた頃、狩猟採集で生活していたアイヌ民族が大飢餓にあった時、困った人々がトカプチェプカムトと言う神様に大漁祈願をしたところ、神様は河畔の柳の葉をつまんで川の中へ投げ入れた。すると今まで静かだった川面が俄かに騒がしくなり、突然、その形も柳の葉に似た小魚が川一面にわき上がり、彼等を飢餓から救ったという。以後、アイヌ民族はこの小魚をシシュハモと名付け、神様から賜った魚として大切にしてきた。「シシュ」は柳の葉、「ハモ」は魚を意味し、北海道のアイヌ民族の住む川のみ捕れる魚として古く伝えられている。」(釧路市漁協HPししゃも大辞典より)

シシャモの漁猟量の年別推移
出典:北海道水産現勢より作成

 上図は1991年以降のシシャモの漁獲量の推移です。実はこの図以前の1980年には過去最高の18,881トンの漁獲があり、この前後では1万トン台の漁獲もみられました。しかし、その後は漁獲が急減しました。今は更に漁獲が減少し一昨年515トン、昨年は過去最低の301トンに終わっています。シシャモの漁獲量は上図でも分かる通り釧路・十勝地区で8割がたを占めており、この地区での漁の良し悪しに影響されます。今年の漁も昨年をやや下回っており、過去最低を更新しそうな気配です。

 唯一の朗報は、釧路・十勝地区以外の有名産地である胆振(いぶり)地区の「むかわ(鵡川)町」では漁獲量は少なかったものの、型がやや大振りで脂も乗っているということで、「鵡川のシシャモ」ブランドを買い求める客が多かったそうです。産地価格(キロ単価)も一昨年までは1000円台後半でしたが、漁獲量の減少を反映し、昨年は2000円台に上昇しました。今年は、更に価格が上昇しているようなので、なかなかこちらでは手に入れることが難しいでしょう。シシャモは1960年代頃から安定して漁獲されており、1980年の漁獲量のピークを過ぎたころから品不足となり、代替品として輸入されたカラフトシシャモが小売りでの「子持ちシシャモ」としてマーケットを席巻し、定着しました。


 輸入元のノルウェー等では食べる習慣がなく、確かミールなどに利用されていたと聞いたことがあります。国内の需要と供給先のノルウェー等の需給バランスがとれていたということでしょう。筆者ももう20年以上前になると思いますが、何回か釧路からシシャモを送ってもらったことがあります。
 今はあまり見かけなくなりましたが、縦型の1斗缶にびっしりシシャモが雄雌関係なく詰まっていました。缶の中にはシシャモと一緒に色々な葉っぱも入っていましたが、それが柳の葉であったかどうかは確認しませんでした。そのシシャモは塩焼きと一夜干しにしてあっという間に筆者の胃袋に収まった記憶が鮮明にあります。

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