旬のお魚かわら版

No.65 カサゴ

2023.05.16

旬のお魚かわら版 No.65(2023年5月15日)


 今回は前回のタケノコメバルに続いて「カサゴ」です。
 カサゴは分類上はカサゴ目メバル科カサゴ属の魚です。前回のタケノコメバルとはメバル科までは一緒ですが、そこから分かれます。カサゴは、漢字で「瘡魚」または「笠子」と書きますが、前者の由来は、体の模様が、傷口にできる瘡(かさ)ぶたのように見えるからとされています。同じメバル科でもカサゴ属にはメバル属ほど多くの仲間はいませんが、「ウッカリカサゴ」と「アヤメカサゴ」という近縁種が存在しています。また、よくテレビなどでも紹介される「ミノカサゴ」(下の2番目の写真)はメバル科に属していません。

カサゴ
カサゴ
ミノカサゴ
ミノカサゴ
生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 上の方の写真がカサゴですが、大きくなると25cm位になり赤や黒など色は微妙に変化するようです。画像の通り、斑紋は下の方にくっきりとみることができます。また背鰭、腹鰭、尻鰭などに強い棘(とげ)があります。そしてよく見ると目の周辺の頭部にも棘がありますね。

 カサゴ目の魚にはオニオコゼやミノカサゴのように鰭(ひれ)の棘に毒のある種類もありますが、本種の棘には毒は無いようです。しかし棘は鋭いので、釣りや調理をするときにケガをしないよう、注意が必要です。

 メバル科の魚は卵胎生の魚が多いことは前号でも述べましたが、カサゴも同様に卵胎生です。カサゴはメバルに比べると総じて浅い海(水深80m位まで)の岩礁域や砂地・砂泥地の海底付近に生息しているものが多いのも特徴で、寿命は15年程度といわれています。北海道から九州南岸までの列島沿岸域、朝鮮半島南岸・東岸、済州島、中国渤海・東シナ海・南シナ海沿岸、台湾等アジアに棲息・分布しています。

 カサゴはメバル同様、釣り人にとってはなじみ深い魚ですが、堤防釣りを始め、岩場、そして船釣りでも人気のある魚です。さて、カサゴの漁獲量は公式の統計で公表されていないので、漁業情報サービスセンター(JAFIC)の「おさかな広場」のデータをみてみます。

カサゴ水揚げ
資料:JAFIC「おさかな広場」

 過去2年は漁獲が伸びているようにみえます。主だった水揚港は、相馬原釜、金沢、唐津、佐世保です。前回のタケノコメバルよりは多いというところでしょうか。

 水揚のピークは春から初夏、秋と年2回みられるのが分かります。単価的にみると、産地によってかなり差があります。これは産地による差というよりも サイズによる価格差が大きいのだと思います。下のグラフは東京都中央卸売市場(2022年)におけるカサゴの入荷量と卸売価格の月別推移です。

カサゴ入荷
資料:東京都中央卸売市場・市場統計情報(年報)

 この消費地でのデータをみても春から初夏、秋2回入荷のピークがあるのが分かります。価格的にも春の3-5月、秋の9-11月に下落傾向がみられます。その意味では需給バランスがとれている価格推移といって良いでしょう。

 さてカサゴは一体どこの県から多く集まってくるのでしょう?2022年の東京都中央卸売市場に入荷したカサゴは年間88トンでした。最も多かったのが福岡県からで37トン、次が長崎県で26トン、続いて青森、茨城、東京 が3トンでした。なので、入荷の主体は九州方面からが多いことが分かります。

 カサゴは九州では、アラカブとも呼ばれています。記憶に残っている中で、最初にカサゴを食べたのは博多で、そのメニューは「アラカブの唐揚げ」でした。その時に九州ではカサゴ=アラカブ、ということを初めて知りました。小骨も含め身はパリパリで、レモンが添えてあり、塩コショウでの単純な味付けが白身にはピッタリだったことを記憶しています。

 カサゴは高たんぱくで低脂肪の魚ですが、様々な栄養素を含んでいます。それを列挙するとたんぱく質、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンE、パントテン酸、葉酸、リン、鉄分、マグネシウム、カリウム、カルシウム等です。上図のように季節的にはまだ5月ですから出回っているはずです。比較的手に入りやすい小型のカサゴを使って、手際よく唐揚げにチャレンジを!!

カサゴ唐揚げ
旬のお魚かわら版

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