旬のお魚かわら版

No.59 ホウボウ

2023.04.14

旬のお魚かわら版 No.59(2023年2月15日)


 今回はこれから産卵時期を迎える「ホウボウ」です。
 スズキ目ホウボウ科の魚ですが、同じ科には体の形や色がそっくりな「カナガシラ」という魚もいます。「ホウボウ」は「カナガシラ」に比べると大きく60cm位まで成長するといわれています。

 はっきりとした違いもあります。それは胸鰭(むなびれ)の色の違いで、何れも幅の広い大きな胸鰭を持っていますが、「ホウボウ」は鮮やかな緑色で青色の斑点とふちに彩られています。 一方、「カナガシラ」の胸鰭は体色と同じ色をしています。魚類には「鳴く魚」と呼ばれる魚が稀にいますが、その一つが「ホウボウ」です。 声を出すわけではありませんが、鰾(うきぶくろ)についた発音筋と呼ばれる筋肉を 振動させることで音を発生させています。その鳴き声が「ほうぼう」と聞こえるので「ホウボウ」と名付けられたそうです。ホウボウは暖水系の魚で南は南シナ海、渤海、黄海、日本周辺では九州の東シナ海、瀬戸内海、太平洋沿岸、北海道の太平洋側、日本海側と南北に広い海に棲んでいます。

ホウボウ
ホウボウ
カナガシラ
カナガシラ
生鮮の素+プラス さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 さて、「ホウボウ」は時々スーパー等でも販売されていますが、東京都中央卸売市場でも入荷はそんなには多くありません。

ホウボウ入荷量
資料:東京都中央卸売市場・市場統計情報(年報)

 月平均20トン前後の入荷量で、この10年間でみると比較的安定しています。価格もコロナ以前は安定した推移でしたが、初の国内感染がみられた令和2年と3年は自粛生活やキロ当たり900円前後まで下落しました。昨年はロシアによるウクライナへの侵攻により魚価全般に値上がりの影響を受けたのか、この10年間では平成28年に次ぐ高値となっています。

令和4年出荷先
平成20年出荷先
資料:東京都中央卸売市場・市場統計情報(年報)

 上の2つのグラフは、東京都中央卸売市場における「ホウボウ」の出荷地トップ5(令和4年と平成20年)をみたものです。

 入荷量自体は毎年、比較的安定しているのですが、出荷地は大きく変動していて令和4年のトップの福岡県は平成20年はトップ10にも入っていません。比較的東京市場に多く出荷している千葉県と長崎県が安定しているほかは、変動が激しいのが特徴といえそうです。

 また、この10年くらいは豊洲(築地)市場に入荷される「ホウボウ」の入荷時期のピークが3~4月と、以前の2~3月より遅くなっています。産地の漁獲時期などに変化がみられているのかも。


 なお近年、地域によっては「カナガシラ」が沢山網に入り、処理に困っている等の話も聞きます。 子供の時の記憶で、今では「ホウボウ」か「カナガシラ」かは分かりませんが、筆者が育った男鹿半島では「キミヨ」と呼んでいて、そして食べるときはほぼ煮つけでした。 その時に「骨が硬いから」といわれていたような記憶があります。 骨が硬く下処理が難しいことや、頭が大きく歩留まりが悪い(大きさの割に身の部分が少ない)ことなども、 沢山漁獲されて処理に困っている一因かも知れません。


 ホウボウは白身で上品な魚として今ではその地位を占めています。 「キミヨ」とは「君魚」殿様が食べる魚という意味合いだそうです。 何かわかるような気もします。 昔は刺身では食べませんでしたが、最近では薄造りなどでも供されるようになり、また魚にこだわりを持っている居酒屋さんでも運が良ければ食べることができますので、是非チャレンジを!

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