旬のお魚かわら版

No.36 トクビレ

2022.04.7

旬のお魚かわら版 No.36(2022年2月28日)


 今回は馴染みのない北の魚「トクビレ」を取りあげました。
 前回のスケトウダラと同様北の魚で、北海道民以外では「見たことも聞いたこともない」という人が多いかもしれません。もっとも、北海道でも漁獲が非常に少ないこともあって、日常的にあるわけでなく、「運が良ければ」というような状況のようです。トクビレはスズキ目トクビレ科トクビレ属に属しています。姿・格好からして少し痛そうな感じですが目はなかなか優しい感じを受けます。

トクビレ
出典:北海道庁水産林務部HP「北海道お魚図鑑 お魚カレンダー

 オスに特徴的なのですが、背びれと尻びれが特に大きく開きます。「トクビレ」という名前の由来はそのようなヒレの特徴(「特鰭」)によるものなのです。

 北海道や関東地方では、ハッカク(八角)という呼び名の方が一般的ですが、その他地方によっても様々な呼び名があります。マツヨ、マツオ、ワカマツ、カクヨなど、様々な名前で呼ばれています。ハッカクという呼び名は、断面が八角形なので付けられ広まったようで、特にオスに対して呼ばれるそうです。トクビレは漁獲量が極めて少ないこともあり、生態も良くわからないのが実情です。

トクビレ(ハッカク)のオスとメス
出典:(一社)豊洲市場協会 ザ・豊洲市場/食材NEWS

 上の写真は豊洲市場に入荷されたトクビレ(ハッカク)のオスとメスの姿です。上限サイズはオスが50cmとメスの35cmに比べるとオスの方が大きく、価値が高いとされています。

 生息域は200メートル以浅の海ですが、それより深いところにも棲んでいることもあります。底曳網で多くは漁獲されるので、相当深い海かと想像しますが、実際は中層域が多いということでしょう。全国で年間どれ位漁獲されているか公式統計がないのではっきりしませんが、数百トン程度とみられます。公表されている統計には出てきませんし、東京都中央卸売市場の統計年報の入荷数量にも記載されていません。

ハッカクの軍艦焼き
出典:(一社)小樽観光協会発行 ウェブマガジン「月刊小樽自身」2022年1月号

 さて、ハッカクは余り歩留まりが良くないせいか、かつて北海道では安い魚だったそうですが、漁獲も少ないうえに食べると美味しく、白身魚でもあり人気が出て今では高級魚の部類に入るとされています。

 しかし、何しろ漁獲量が極めて少ないため、関東以西の人で食べたことのある人は少ないと思います。このハッカクは刺身を始め煮ても良し、焼いても良しなのですが、独特の料理が北海道にあります。その料理が上の写真「ハッカクの軍艦焼き」で、背開きにしたハッカクにネギみそを塗り焼いたものです。最初の姿形から写真のように大きく変わります。もう40年位経ちますが最初にハッカクの軍艦焼きなるものを食したのは真冬の稚内にある居酒屋でした。もちろんみそ漬けの切り身の魚は経験があるものの、ハッカクは初めてで練り味噌にネギの香りが心地よく杯を重ねました。

 最近ハッカクを発見したのは偶然にも昨年の晩秋で近所のスーパーで珍しく丸の魚(ハッカク)が陳列されていました。当面出回りは無理でしょうから、秋から冬にかけてこのメルマガを思い出して魚屋さんを覗いてみてください!

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「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!