旬のお魚かわら版
No.105 マコガレイ
2025.01.15旬のお魚かわら版 No.105(2025年1月15日)
今回は近年市場入荷が少なくなっているものの、カレイ類の中ではそれなりのポジションを持っている「マコガレイ」です。
マコガレイはカレイ目カレイ科マガレイ属に分類されます。マガレイ属ですから、マコガレイはマガレイにとても近い仲間ということになります。
マコガレイと言われるだけあって、真子(卵巣)に特徴があり、産卵期には大きな卵を抱いています。その姿が精巣=白子と区別するために呼ばれるようになったとか。
外見は同属のマガレイとよく似ていますが、マコガレイの方が口が小さく、目と目の間には鱗があります。一番の区別ポイントは無眼部(眼のついていない裏側)の体色で、マガレイでは尾びれの付け根周辺部が黄色くなるのに対し、マコガレイでは全体が白色で判別しやすいのです。
生息海域は、太平洋側では北海道南岸~土佐湾の沿岸、瀬戸内海、日本海側では北海道西岸~東シナ海沿岸まで。また朝鮮半島全沿岸、渤海~東シナ海北部にも生息しています。北海道南部の知内(しりうち)町沖合は商業ベースでのマコガレイの北限とされています。
成魚は水深10mから100m程度までの沿岸浅海域に生息し、夏場は深場にいて冬から春の産卵期に岸近くの浅場に移動します。ふ化後の仔魚は全長10mm程度になると表層から海底に着底し稚魚期に入り、水深10m前後から波打ち際近くのごく浅い、泥底率の高い海岸線付近に生息します。
1年で標準体長16.5~20㎝、2年で20~28㎝、3年で28㎝以上になる個体が多いとされています。雌雄で成長差があって、標準体長が32㎝以上の個体は雌と判断されています。
太平洋北部に生息するマコガレイの雄は満2歳、雌は満3歳で成熟するとされています。卵は海底の砂粒や礫などに付着する沈性粘着卵で、浮遊卵を生む他の沿岸性カレイ類とは異なっています。
主な漁法は小型底引網と刺網で、主体となる漁法や漁期は水揚げ地区によって異なっていますが瀬戸内海では一部定置網でも漁獲がみられます。
なお、マコガレイの漁獲量に関する全国的な統計は公表されていません。そこで参考データとして、水産庁、国立研究開発法人水産研究・教育機構の水産資源評価結果から「千葉県内湾・内房地区の主要4漁協のマコガレイ漁獲量」の推移をみたのが上のグラフです。
このグラフによると、2007年をピークに漁獲量が減少基調にあることが分かります。資源評価結果でも太平洋側の資源水準は低位、その動向は減少とされています。また、瀬戸内海においても、県によっては資源状況は危機的であるとの評価もあります。
これらのデータに触れると、最近マコガレイが店頭販売されているのをみたことがないことにあらためて気が付きました。以前はマガレイ・マコガレイはカレイ類を代用するようなポジションにあったように思います。
また、大分県日出(ひじ)の「城下カレイ」、富山県新湊の「万葉カレイ」など有名なブランド魚があり、さらに商業ベースで生息の北限とされている北海道の知内では蓄養したマコガレイが高い評価を受ける等、大衆魚から高級魚のポジションまで守備範囲が広いのもマコガレイの特徴です。
上のグラフは東京都中央卸売市場におけるマコガレイの取扱状況です。
グラフのとおり、2005~2008年まで比較的多い入荷でしたが、その後は減少傾向が続き、2020年以降は200トンをかなり下回っています。ですから1か月当たりでは10トンを若干上回る程度の入荷ということになります。これでは中々お目にかかることはできませんね!卸売価格も2021年以降高騰しています。
ただそれ以前は入荷減少の割には価格高騰の動きはみられません。2009年以降入荷が急激に減少しましたが、価格の動きには極端な変化はなく、横ばい圏内での動きでした。その理由は明確ではありませんが、サイズ組成に変化があったか、マコガレイに質的変化がみられたか、入荷自体が少なくなり需要の減少、資源の減少もあって価格の安い野締めの割合が増えた、などの要因が考えられます。
また、入荷先の産地をみますと、2023年(全国各地からの入荷量141トン)では、東京都以北北海道までの地域からが98%を占めています。ちなみに、最も入荷が多かった2006年(同入荷量537トン)では東京都以北北海道までの地域からが93%でしたので、年々入荷先が北偏していることになります。
マコガレイは暖海性のカレイとされてきましたが、東京都中央卸売市場に入荷するマコガレイでは東京以北、特に東北と北海道からが大半となっています。ただ、前述のとおりマコガレイの資源が減少傾向にあるため産地での漁獲量も減り、その結果、消費地にも大きな影響を与えていることが伺えます。
カレイ類の多くは独特の臭みがあるため、ほとんどのカレイ類は煮たり、焼いたり、揚げたりと総菜魚と位置付けられます。一方、マコガレイ、マツカワカレイ、ホシガレイにはその臭みがありませんので、これら3種のカレイは刺身で食べられる高級魚の部類に入ります。そうした点からも、今の資源状態でマコガレイを食べる機会が少なくなっているのは残念ですね!
旬のお魚かわら版
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