旬のお魚かわら版
No.93 マダコ
2024.07.12旬のお魚かわら版 No.93(2024年7月12日)
今回は関西では旬を迎えている「マダコ」です。
マダコはご存知の通り軟体動物の一種で頭足類マダコ科に属していますが、同じマダコ科にはミズダコ、ヤナギダコ、テナガダコ、イイダコなど食用にされるタコ類が含まれます。また、海が暖かくなると話題になる猛毒(テトロドトキシン)を持っているといわれるヒョウモンダコも同じ科です。
後述のとおり、国産マダコの漁獲減などにより、昭和年代から西アフリカ(モロッコ・モーリタニア)沖のマダコ類が多く輸入されてきましたが、それらは日本のマダコとは異なる種類のようです。
スルメイカの寿命は1年ですが、マダコの寿命も短く、長くても3年と言われています。比較的長いミズダコも長くて5年程度ですから、総じてタコ類の寿命は短いのです。
心臓はイカ類と同様3つあります。3つの割に寿命が短いところをみると、心臓の数は寿命には関係ないというべきか!
主に夜に活動が活発になり、カニなどの甲殻類や貝類などを餌としています。体の軟らかいタコが硬い殻に包まれている貝類を食べるというのも面白いものです。
上のグラフは日本のタコ類の年別生産量(1956-2023年)の推移です。
昭和40年代前後は6万~10万トンの漁獲がありましたが、昭和50年代以降は低迷し平成年代に入っても6万トンをわずかに超えた年が2回あったのみで、ここ10数年は4万トン未満の漁獲に終わっています。特にこの数年は2万トンを若干超える程度で、稀に見る不振となっています。
兵庫県の明石市や岡山県の倉敷市下津井地区、広島県の三原市などマダコの名産地は各地にありますが、近年の大不漁に頭を抱えておられる産地が多いようです。
なお、今年の上半期の漁は海域によって好漁の話も聞かれることもあります。6月末現在の累計漁獲量は約2,200トンで昨年を上回って推移しています。特に北海道、東北地区ではミズタコ中心に好調で、日本海側が低調となっています。
タコ漁は地域によっても違いますが、この先冬場に漁獲の盛期を迎えますので、これからの漁次第で昨年を上回るかどうかが決まります。期待して朗報を待ちたいと思います。
上のグラフはタコ類の輸入量の推移です。
タコ類の輸入は国内生産量が6万トンを割った1980年代後半頃に本格化し、特にモロッコ、モーリタニアの西アフリカ諸国からの輸入が盛んとなり平成年代は両国で7割を占めるほどの多さでした。
もともと西アフリカ沖などの大西洋には、日本の遠洋漁船が出漁して直接タコやモンゴウイカ(ヨーロッパコウイカ)を漁獲していたのですが、200カイリ時代の到来で遠洋漁場から締め出されたうえに国産のマダコ漁獲量も減ったので、代替として上記両国からの輸入に多くを頼るようになっていった訳です。
しかしながら、産地国での資源管理強化による操業規制に加え、タコを食べる国が増えて世界的に需要が強まったこと、さらに円安も重なった結果、近年では買い付け価格が高騰し、輸入競争でEU諸国に買い負けするようになりました。その結果、上のグラフのとおり日本のタコ類輸入量は減少傾向にあります。
そこで近年では西アフリカ諸国以外の国々からの輸入も増やしてきており、今年の輸入状況では、モロッコ・モーリタニアで全体の5割、中国とベトナムで4割と輸入先国としてアジア諸国がモロッコ・モーリタニアにかなり接近してきました。今後、長く続いてきた西アフリカ諸国への輸入依存から切り替わるのかも注目です。
今年の半夏生(はんげしょう)は終わり小売店での棚の占める割合は少なくなりますが、なくてはならない商材には違いありません。
タコは刺身以外でも色々な料理に使える他、肝臓の機能を高めるといわれる「タウリン」を豊富に含んでいて、栄養価も高い食品でもあります。
この夏はタコを食べて暑さを乗り切りましょう!!!
旬のお魚かわら版
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