旬のお魚かわら版

No.90 カツオ

2024.05.31

旬のお魚かわら版 No.90(2024年5月31日)


 今回は初夏の味覚を彩る「カツオ」です。

 カツオはスズキ目サバ科に属していますが、サバ科にはサバ属(マサバ、ゴマサバ、大西洋サバ)の他にスマ属、ソウダガツオ属、ハガツオ属やサワラ属、マグロ属などがあります。

 カツオには写真にあるように腹部に縞(しま)模様(縦じま)※がある状態で売られています。泳いでいる時には明確な縞模様は見られないそうですが、筆者は見たことはありませんが、釣り上げられた時など興奮時には一瞬横じまが浮かび出て、死んでしまうと縦じまが出るそうです。

 (※魚の縞模様は、頭を上、尾びれを下にして立てた時の状態を基準として「縦じま」「横じま」としています。)


 漢字で書くと鰹、堅魚、堅木魚などカツオ節にしたときの堅さを表現したものが多いです。また「勝男」とも当て字され、勝負ごとに強い縁起の良い魚とされてきました。

 カツオ節の中でも、いわゆる本枯れ節では、乾燥、カビ付けの工程を何度も繰り返し、世界一堅い食品とも言われる逸品として仕上げられます。

カツオ
カツオ
出典:生鮮の素+さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 さて日本の近海カツオ漁場は主に本州以南の太平洋側で形成されますが、周知のとおり生まれ故郷ははるか南方の熱帯の海です。暖かい海で産まれたカツオのうち一部が豊富なエサを求め、黒潮に乗るなどして日本を目指して回遊してきます。それが初夏の「初がつお」となり、さらに夏から秋にかけて常磐沖を経て三陸沖まで回遊した後、水温低下に伴い越冬や産卵のため南下を始めます。

 なお秋ごろには親潮に乗って南下してきたサンマの漁場も三陸沖に形成され、海流の境目(潮境)を挟んで北はサンマ漁場、南はカツオ漁場が形成されることもしばしばあります(ただし、近年はサンマの来遊がかなり少なくなったので、そうしたケースは見られないようです)。

カツオ生産量
出典:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」

 上のグラフはカツオの年別生産量(1956~2022年)の推移です。日本のカツオ漁業には遠洋、沖合、沿岸それぞれで様々な漁法(一本釣り、まき網など)がありますが、それら全てを含めた生産量です。

 1980年代後半は40万トンを超えたこともあった漁獲量も、この10年は20万トン台が続き、少ない年は20万トンを割ったときもあります。その意味では資源的にも必ずしも安定しているとはいえません。

 前述のとおりカツオは遠洋、沖合、沿岸の各種漁業で漁獲されていますが、遠洋のカツオ漁では漁獲直後に船内で冷凍され、冷凍状態で港に水揚げされます。一方、沖合漁業と沿岸漁業では生鮮で水揚げされます。2022年の漁獲量では、約8割が冷凍カツオ(遠洋もの)で残り2割が生鮮カツオです。冷凍カツオの主体は遠洋まき網(海外まき網)によるものですが、その多くは鰹節や缶詰の原料に向けられ、釣りもの(遠洋一本釣り)の方は主に冷凍タタキ商品の原料に向けられます。

 一方、生鮮カツオの方では、釣りもの(近海一本釣り、沿岸一本釣り、ひき縄)ではタタキを含め刺身商材として、まき網もの(近海まき網)は刺身商材が主体ですが、大量に漁獲された場合やサイズ組成によっては輸出(海外生産のツナ缶原料用)に向けられることもあります。

 今年の漁ですが出足はカツオ魚群の北上の遅れなどもあって、極めて不振な年であった2020年に次いで水揚げが少なく4月までは低調な状態でした。ようやく5月に入ってから伊豆諸島周辺にも漁場ができるようになり、5月27日には1日約300トンの水揚げが全国でみられるようになってきました。ただ、先日発生の台風1号の影響により操業が制約される可能性もあり、常磐沖や三陸沖に漁場が形成される6月からの漁に期待をかけましょう。

カツオ取扱量
出典:(一社)漁業情報サービスセンター「おさかな広場」

 上のグラフは、近年の東京都中央卸売市場における生鮮カツオの年別月別取扱状況を表しています。

 グラフのとおり、近年のカツオの入荷ピークは6月~7月にみられます。以前は5月~6月がピークでしたのでより後半型に移ってきているのかもしれません。


 さて、豊海おさかなミュージアムでは毎月「食育セミナー」を実施していますが、5月のセミナーは大人・子供合同により屋外でカツオの藁焼き体験を行い、香ばしくて美味いカツオたたきを皆で食べました。例年、初夏の関東地方に出回る生鮮カツオは千葉県産(房州勝浦水揚げ)が主体となるのですが、この時のカツオは高知県産でした。今年は4月から5月初旬にかけて勝浦漁港でのカツオ水揚げが極端に少なく5月中旬になって水揚げが上向いてきたものの、品薄感もあったために豊洲市場でも他県産カツオの入荷に力を入れていたのでしょう。

 しかし、これからはグラフにあるように、漁場も沿岸寄りになり条件は良くなりますし、データ的にも6月~7月が価格的にも安くなり、お買い求めやすくなります。

 台風1号明けには、カツオラッシュで街は賑わうのでは!

カツオイラスト
イラスト:N.HIKARI
旬のお魚かわら版

旬のお魚かわら版

「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!