旬のお魚かわら版

No.78 クルマエビ

2023.12.1

旬のお魚かわら版 No.78(2023年11月30日)


 今年ももうすぐ師走!今回はエビ類の中でもイセエビと並び最高峰の「クルマエビ」です。

 エビ・カニとくれば甲殻類、その先は十脚目クルマエビ科に属しています。このクルマエビ科には、よく知られている食用エビの多くが属しています。思いつくままに挙げれば、一世を風靡したウシエビ=ブラックタイガー、オーストラリアタイガー、 シバエビ、コウライエビ=タイショウエビ、そして今や剥きえびとして全国の小売りの 現場を席巻しているバナメイも同じクルマエビ科です。

 名前の由来は、丸まった状態での体の縞(しま)模様が車輪のようにみえるからだといわれています。

クルマエビ
出典:生鮮の素+さかなや魚介類図鑑(無断転載不可)

 クルマエビは暖流系の内湾域を中心に生息し、我が国での分布の北限は太平洋側では宮城県、日本海側では秋田県と言われています。特に、伊勢・三河湾、瀬戸内海、有明海など内湾で干潟域を持つ温暖な地域が主産地で、日本海沿岸は少ないようです。海外では韓国、台湾、中国の沿岸、そして東南アジア、オーストラリア北部、フィジー等にも生息しています。

 ですが、下のグラフのとおり我が国の天然のクルマエビの漁獲は僅かで、現在では養殖物が大半です。主なクルマエビの漁法は小型底びきと刺し網ですが、下記のとおり天然物の主産地はかなり限定的となっています。寿命は1年、夜行性で日中は砂に潜って過ごします。

クルマエビ生産量
出典:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」

 上のグラフはクルマエビ(天然・養殖)の国内生産量の推移(1956~2022年)です。グラフのとおり、天然物が養殖物を上回ったのは1998年の2,069トンが最後で、それ以降は養殖物が上回っており、その差も広がっています。そして今や天然物の漁獲量は、200トン程度まで落ちています。この要因として、クルマエビの生息域である沿岸環境が開発による干潟の減少、汚染の拡大等により大きく変化したことなどが言われています。

 クルマエビ養殖は、明治38年熊本県天草の地で天然稚エビを畜養したのを嚆矢(こうし)とし、その後、藤永元作博士らによって生態・繁殖・発生の研究が進み、同時に配合飼料の開発も進展し昭和38年に山口県秋穂(あいお)町にて養殖会社を設立し世界で初めて事業化に成功したのです。養殖クルマエビの生産量は、昭和年代を通じて1988年の3,020トンのピークを迎えるまで 右肩上がりで推移しました。

 エビ養殖の条件は、病気に強いこと、成長が速いことなどが以前から言われており、 今やブラックタイガーを抜いて世界の養殖エビ市場で伸び続けているバナメイは、この条件に 合致しているということを意味しています。 特に「病気に強い」ということは、エビ養殖の歴史が「病気との戦い」の歴史でもあることを 考えれば、最大の優位性とも言えます。

天然養殖別県別クルマエビ
出典:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」

 さて上の4つのグラフは、天然・養殖別県別の生産量割合(2021年と2006年(15年前))です。まず天然クルマエビについては、2021年では愛知・愛媛の2県で半分以上を占めています。他県は限りなくゼロに近いか、多くても10トン台です。2006年のデータでは上位4県は2021年と同じですが、総量では4倍以上あり、上位以外の県でも相応の生産量があったことが分かります。それだけ、生息域が現在では狭められていると想定されます。

 一方養殖クルマエビは、2021年と2006年の両方とも沖縄・鹿児島・熊本がトップ3で、3県の占める割合も7割台と変わりありません。総量ではやや落ちているとは言え、生産は西日本に集中しています。 心配なのは消費が落ちていることです。

クルマエビ市場入荷
出典:東京都中央卸売市場・市場統計情報(年報)

 上の表は東京都中央卸売市場での国産クルマエビの取扱状況を10年刻みで表したものです。20年前に比べ東京中央卸売市場での今の取扱いは約6割にとどまっています。天然クルマエビの産地での極端な減少が反映されていると思われますが、しかもここ数年卸売価格の上昇も顕著で、元々エビ類の中でも高級魚の部類でもあり、こうした高値も消費減退につながっている一因かも知れません。

 ともあれ、もうすぐ師走(年間で最も入荷が多い月)、クルマエビ業者にとって最大の稼ぎ時でもあります。年に1回位は触手を伸ばしてみるのも良いのでは!

 さて、クルマエビはイセエビほど大きくなるエビではありませんが、出世魚の一面も持っています。サイズによって呼び名が変わり、さいまき(5~6cm)→まき(10cm未満)→くるまえび(10cm以上)と呼ばれていますが、重さで分ける場合もあるようです。最近でこそ見かけませんが、築地市場があった頃は、おが屑に入って運ばれてくる活きたクルマエビやガザミが よく目に付いたものです。

 私のクルマエビ体験は、浅草裏通りの天ぷら屋でクルマエビ(さいまきと呼んでいた)の天ぷらでした。プロが作るとこのように美味しくできる、と改めて感心しました。クルマエビの美味しさとともに。

クルマエビイラスト
イラスト:N.HIKARI
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「豊海おさかなミュージアム」は、海・魚・水産・食をテーマとして、それに関連する様々な情報を発信することを目的としています。 このブログでは、名誉館長の石井が、旬のおさかな情報を月2回発信していきます!

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