旬のお魚かわら版

No.35 スケトウダラ

2022.04.7

旬のお魚かわら版 No.35(2022年2月15日)


 今回は、まだまだ寒い日々が続いている北国の魚「スケトウダラ」を取りあげました。スケトウダラといっても、普通は「すけそ」、「すけそう」と呼ぶことが多いと思います。
 もちろん鮮魚でも流通しますが、底曳網で漁獲される多くはすり身の原料になります。ですから、皆さんの目に触れるのは冬の一時期で鍋商材としてスーパーなどで見ることができます。スケトウダラの寿命ははっきりしたことが不明ですが10歳以上といわれています。メスの卵は、御存知「塩たらこ」や「辛子明太子」として皆さんの食卓を賑わせています。

スケトウダラ
出典:生鮮の素+プラス「さかなや魚介類図鑑」 無断転載不可
スケトウダラの国内生産量の推移
出典:農水省 漁業・養殖業生産統計年報

 この魚は多くは底曳網で漁獲されますが、一部は刺し網や延縄漁法でも漁獲されます。上のグラフはスケトウダラの国内生産量を表したものです。1970~1980年代にかけては年間100万トン以上の漁獲があり、マイワシやサバ類と同様国内生産量の多くを占めていました。その後は本格的な200カイリ時代に入るとともに、主な操業海域であったロシア水域での操業が年々制約・禁止されるようになり、北洋水域での操業が現在では全面禁止となり、今ではかつてのソビエト=ロシア水域での北洋トロール漁業は、失われました。ですから、この20年位は図のように10~20万トン台の漁獲にとどまっています。


 ところで、スケトウダラは底曳網で漁獲されたものと刺し網や釣り(延縄含む)で漁獲されたものでは、価値観が違います。鮮魚に向けられるもの(刺し網など)と、ガラと呼ばれ大方すり身向けに回る底曳きものでは産地価格でも大きな差があります。キロ単価で例示すると羅臼(刺し網)では100-130円、釧路(底曳き)40円台、三陸(底曳き)の各港でも50円台での取引です。
 40-50年前ほどの漁獲がなくなって以来、鮮魚はともかくすり身や塩蔵たらこや辛子明太子の原料の大半は輸入物に置き換わっています。たらこ等国内原料を使用しているものは、今やレアものや贈答品の中でも高級品扱いになっています。

フィレー加工(3枚卸)
出典:マルハニチロ(株)ウェブマガジンumito.

 上の写真はスケトウダラをフィレー加工(3枚卸)したものです。海外(特に欧米諸国)では昔から白身の魚に対する需要は強いものがあります。従来からのすり身の他に写真のようなフィレー加工マーケットも伸びているそうです。
 元々日本向けには品質基準が高いため、余り輸出されていなかったようですが、それでも徐々に増えているようです。輸入された一部は白身魚フライとして模様替えされ皆さんの口に入っているかもしれません。国内産の鮮魚は、鍋用としてぶつ切りでパック詰めで提供されることが多いのですが、輸入物を使った肉厚のフライも想像するだけでも美味しそうですね!

 随分昔(スケトウダラが200-300万トン漁獲されていた時代)の話ですが、真冬に釧路の市場に行く途中で、トラックの荷台から道路脇の凍った歩道に落ちたままのスケトウダラをよく見かけました。当時はそれ程沢山水揚げされていたことと、まだのんびりした時代で回りも余りうるさく言わなかったことも思い出されます。

 因みに釧路は風が強いものの雪はそれほど積もらなかったと記憶しています。まだまだ寒い2月。タラ(マダラ、スケトウダラ)を使った美味しい鍋を味わってみてはいかがでしょうか!

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