旬のお魚かわら版
No.31 エゾイソアイナメ
2022.04.7旬のお魚かわら版 No.31(2021年12月15日)
今回は、北海道や三陸では「ドンコ」と呼ばれている「エゾイソアイナメ」についてです。
この魚の呼び名については、北海道や東北地方の人のみならず市場関係者の間でも普通に「ドンコ」と呼ばれています。分類は、タラ目チゴダラ科チゴダラ属で、そっくりの魚でチゴダラがいます。チゴダラも分類上はエゾイソアイナメと同じでチゴダラ属ですが、形態上の差がなく、前者が関東以南の深い海に棲息しているのに対し、後者は数10mと浅い海に棲息しているのが特徴。今ではこの2種は同種という学説が有力で、標準和名はチゴダラに統一されたという話も聞きます。
実物を見たことがない方が多いと思いますが、下の写真のように市場等で並べられるときにはかなり見た目がグロテスクです。深いところから急に引き上げられたことで、胃袋が口の中から飛び出しています。
昔(昭和年代後期)の話ですが、筆者は仕事で八戸に出張した際、陸奥湊駅前の市営魚菜小売市場に立ち寄ったことがあります(※現在、工事のため令和4年3月末まで閉鎖中)。その時に「イサバのカッチャ」に「東京の人はこんなきたない(グロテスク?)魚は食べないべ」と言われたのを憶えています。
下図は岩手県のドンコの漁獲量推移です。全国のデータが公開されていないので全体を表しているかどうかは言えませんが、1990年代の終わりごろから漁獲が4年位の周期で増減を繰り返し、徐々に減少しています。
漁獲方法は底曳網が最もポピュラーですが、釣りのドンコは非常に高い値段が付きます。その他に籠網漁(籠網にエサのサンマやサバを入れて海底に仕掛ける)などもあります。
普段東京ではあまり見ることができないのでなじみが無い方も多いと思いますが、ドンコには地方色豊かな料理があり、冬には欠かすことのできない魚でもあります。ですから東北地方の人々にとっては身近な魚が減少しているのを骨身に感じているかもしれません。そうした、三陸地方での珍しいドンコ料理を紹介しましょう!
岩手県:みそ田楽、なます、おろし汁
宮城県:きもみそ煮、みそたたき、ドンコ汁、どぶ煮
福島県:肝いり、肝ごと煮
個性的な料理が多いですが、特に肝(肝臓)が重要なようです。筆者のドンコ料理体験は、東日本大震災の前に仕事で岩手県に出張した時のことです。宮古市内の田老町漁協のすぐそばにあった「ドンコ民宿」T民宿に1晩お世話になった時、夕食で皿から飛び出るくらい大きいドンコの煮つけが出され、強烈な印象として記憶に残っています。
因みに今は確認出来ませんが、房総にあった「ゴンズイ民宿」にも泊ったことがあります。ゴンズイは海に生息するナマズの仲間で、ひれの一部に毒のある棘を持つため、海の危険生物としても知られています。何れもどちらかというとマイナーな魚ですが、食べると非常に美味しいということが共通点として挙げられます!
機会があったら現地に足を運び、そこでしか食べられない魚を食してみてください。
旬のお魚かわら版
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